怒り そして…
「では♪ 私は帰りますよ?」
ルイスは一刻も早く梨咲を抱きしめたくてウズウズしていた。
心配しているかな?
早く安心させてあげなくちゃあ♡
足取りも軽く、美花の部屋のドアを開けると、
外には梨咲と凛がいた。
「…っ♡ 梨咲さん…!!」
とルイスが、梨咲に抱きつくよりも早く、凛が素早く幻影魔法を発動させ、外の現実世界と美花の部屋を引き離した。
梨咲は抱きつこうとするルイスを鋭い目で睨み牽制する。
え…? ルイスは固まった。
同時に梨咲は駆け出し、あっという間に父親の懐に入り込んだ。
護身用の短剣を父親の首元に宛てがい、足元を氷で固めて拘束する。
「今度は…何が目的なの?」
光のない目で父親を睨むが、父は動じない。
「今回は美花の希望だ。梨咲と手合わせしたいと言ってな。」
その言葉に梨咲は床に座り込んでいる美花を見下ろす。
「私と勝負したいの?良いわよ?勝った方のご褒美はルイスでいいのかしら?」
「 … 。」
美花は梨咲の威圧に青ざめていた。
「… 梨咲さん…!」
見兼ねたルイスが止めに入ろうと近づくと、梨咲はルイスの手を取って、背負い投げした。
きれいに投げ飛ばされたルイスを含め、その場の全員が呆気に取られ、凛は無言でダラダラと汗を流した。
「ふざけるな!私は1番お前に怒っている…!」
ルイスのシャツの襟を掴み、首を締め上げる。
父と凛が慌てる。
「梨咲!止めなさい!!」「梨咲様…!」
「煩い…!」
2人を睨み、2人は動けなくなった。
「…わざとキスされただろう?私の嫉妬を煽りたいのか?」
ルイスは久しぶりに梨咲の冷たい目を見る。
ああ♡ゾクゾクする…♡
そうやって感情に蓋をしないと、心が乱されちゃうんですね…♡
本当は俺が無事でホッとしている癖に。
泣いて甘えたい癖に…
ルイスは梨咲の後頭部を押さえてキスをする。
「そうですよ♡ バレちゃいました?」
「…お前、最低だな…!」
「梨咲さんの乱れた所が見たくて♡」
梨咲は思いっきり怒りを床にぶつける。
梨咲の拳によって床には亀裂が入った。
「嫉妬した? ♪ 」
ルイスは尚も意地悪く笑いかける。
梨咲は無言で立ち上がると静かに部屋を出て行った。
「ルイス様…やり過ぎですよ。気丈に振舞っていますが、先程まで見ていられない程動揺していましたよ?」
凛が梨咲の後ろ姿を心配そうに見つめる。
「へぇ…。梨咲さんは相変わらず凛には素顔を見せるんだ。それはそれでムカつくな!」
ルイスは風の魔法を発動させる。
部屋の扉が開いて、廊下の先を歩く梨咲を包むと引き寄せた。
「?!」 梨咲は不意の事で抵抗もままならず、あっという間にルイスの放つ風の魔法に捕まり、引き寄せられる。
そうしてあっさりルイスの手元に収まった。
「ほら…、泣いてる。」
ルイスは背中から優しく抱きしめて梨咲を包み込む。
梨咲は両手を握って顔を覆う。顔を見られない様に俯いて縮こまった。
2人のキスを見て…最初は動揺して…。
だけどすぐに…「ルイスなら躱せた筈…」と思い当って…、ワザと私に見せつけたんだ…って頭に来て…。
美花も美花で…最初からルイス狙いだと言うなら私を巻き込むな!って頭に来て…、裏に父親も絡んでいると思ったら… 3人に対して怒りが込み上げてきた。
ルイスは開き直るし… お陰で私の心はぐちゃぐちゃだ…。
ルイスの意地悪に悲しくなって、ルイスの思う通りに嫉妬させられたのが悔しくて、そこまでさせられたのに素直になって甘えて来いだなんて、プライドが許さなくて…。
だから離れて…そっと自分の気持を…
こんなにされてまで、好きだなんて…!って敗北感を そっと1人で噛み締めていたのに…
こんな風に連れ戻すなんて…。
酷い… 本当に、酷いヤツ! 大嫌い!!
何でこんなヤツの事を私は…大好きになってしまったんだろう?一層の事、熨斗でも付ける勢いで、美花に譲れたらいいのに…!
梨咲は何も言えずに大人しくルイスに抱きしめられた。




