誕生日
M月Te日 年度切替の休み中。
この日は梨咲の誕生日だった。
だからと言って誕生日に特別な思い入れは梨咲には無い。
誰かから祝って貰った事はほとんどないし、ただ1つ歳をとるだけの、何でもない1日…だったのだが…。
「梨咲さん♡お誕生日、おめでとうございます♡」
ルイスが笑顔で誕生日を祝う。
「 … 。 えっと… ? 」
梨咲の戸惑った様子にルイスの方が戸惑う。
あ…あれ? 誕生日、間違ってないよね???
「今日…誕生日ですよね…?」
恐る恐る確認する。
「ああ!そうね、うん。」
終了!
ええ?! 何、その反応…!!!
ルイスは驚愕した。
「もしかして…お祝いされたこと… 無い?」
「… お祝い? 別にお祝いする様な事じゃないだろ…?」
ルイスは卒倒しそうになる。
NO〜!!! なんて事だ!!!
去年は忙し過ぎて梨咲さんの誕生日の確認が遅れ、気がついたらだいぶ過ぎてしまっていたから、今年こそは!と気合いを入れていたのに…!
ルイスの計画はガラガラと音を立てて崩れ始める。
「いえいえ!お祝いする事なんですよ!! 梨咲さんがこの世に生まれ、無事に16歳を迎えられたという、実に素晴らしい日ですよ?!!」
ルイスの熱弁を梨咲は若干引き気味に聞く。
「…ルイスの国では、そういうものなの?」
ルイスは梨咲の反応に悲しむが、もうそれでいいや…と思った。
「そうです!すごく特別な日です!お祝いさせて下さい!!」
そう言うとルイスは花束を差し出した。
梨咲はその花に見覚えがあった。
「これ…っ! /// 」
梨咲は興奮した。それはかつてルイスが梨咲に幻影魔法で見せてくれた、梨咲の心を癒やした花だった。
本物を見るのは初めてだ。
梨咲の興奮具合にルイスは安堵し微笑んだ。
「おめでとうございます。受け取って下さい。」
「え…っ?本当に…?いいの?」
梨咲は恐る恐る花束を受け取る。
梨咲が花束を受け取ると、花の香りがふわ…っと香った。
「良い香り…!可愛いお花ね!どうもありがとう…!」
梨咲はすっかりこの花が気に入った。
「この花はチューリップ。花言葉があって…このピンク色は… 『誠実な愛』」
ルイスのまっすぐな視線にドキッとして、梨咲はポンッと顔を赤くした。
それから梨咲は言い辛そうにして、たどたどしく話す。
「あ…あのっ、ルイス…。…いつもありがとう。こうやって気にかけて貰って…。でも…、私は…ルイスに何か出来てたかな…?」
梨咲はずっと気にしていた胸の内を話し出す。
ルイスは…優しい。
いつも私の心を癒やしてくれる。
こんな私を愛してくれる。
可愛いピンク色のチューリップの花束を抱きしめると、とても良い香りがして、幸福感に包まれる。
梨咲は涙目になった。
「そばにいてくれる事が最大の喜びです。梨咲さんだって、俺の為に美味しいご飯を作ってくれたり、コスプレしてくれたり(笑)俺の為にやってくれるじゃないですか。愛しくて…たまりません。」
「キスして?梨咲さん…」
ルイスがお願いすると梨咲は素直に従う。
梨咲を見つめてルイスはふふっと笑った。
「…政略結婚だと思ってましたから、まさかこんなに婚約者を好きになるなんて…最初は思っていませんでした。」
ルイスの言葉に梨咲も笑う。
「私を愛してくれる婚約者なんてありえないと思っていたけど…ルイスが婚約者で良かった…。」
素直な気持ちをルイスに伝えられて、梨咲は安心した。それからふと思う。
「あれ…?ルイスって誕生日はいつ?」
「A月T日ですよ♡5日後ですね♡」
「5日後?!何だ… 学年は下だったけど、誕生日は全然近いのね…。」
梨咲は新事実に驚いた。
「今日はお祝いだから、後で一緒にケーキを食べましょうね♡今日は1日中一緒だよ♡」
「ここ最近は…いつも一緒じゃない…」
梨咲はルイスの言葉に呆れながらも、嬉しさを感じていた。
「誕生日をこんなに祝って貰うなんて初めて。何だか恥ずかしいけど…嬉しい… かも…」
感動で胸がいっぱいの梨咲をルイスは微笑ましく思う。
「これからはずーっとお誕生日をお祝いしてあげる。
ずーっと 一緒だよ… 」




