将来の事
終業式も終わり、年度切替の休みに入る。
生徒達はそれぞれ実家に帰るので、寮もとても静かになる。
去年は凛が居なくなって、梨咲は初めて長い休みを1人で過ごした。
寂しくて泣くか、魔術の練習をするかという日々を過ごし、お陰で魔法陣もいとも簡単に操れる様になった。
さて、今年は何をしようかな…?
と、思っていたのだが…
「え?ルイス、帰らないの?!」
「はい。それより梨咲さんと色々と話をしないといけません。」
話?改まって言われると警戒しちゃうな…
梨咲が身構えている事がわかるとルイスは笑いかけた。
「そんな、怖い話ではありません。俺達は夫婦になる訳ですから将来の話をちゃんとしないといけないと思いまして。」
ルイスの言葉に梨咲は顔を赤くして後退った。
夫婦! 将来! ちゃんとした話! ///
私、本当にルイスと夫婦になるんだ…。
「…っ///」
ルイスは梨咲の反応をくすっと笑って、更に梨咲をからかう。
「例えば…子供が何人欲しいとか…」
梨咲は顔から湯気を出して固まった。
「大事な話ですよ?」
話し続けるルイスに、梨咲は真っ赤な顔をして睨む。
「でも、もう少し近い話もしましょう!結婚式の話とか…。俺はここを卒業したらすぐにでも梨咲さんと結婚したい!」
急に真面目になった青い瞳に梨咲はドキッとさせられる。
「それは…いいでしょう?」
梨咲は目を反らせなくなった。金縛りにあうみたい…
「… はい。」
「良かった〜///」
ルイスは心底ホッとしてその場に崩れた。
そんなに思い詰めてた?
梨咲はルイスの反応を大げさな…と苦笑いした。
「あと、梨咲さんはここを出た後、何かやりたい事はないですか?」
にこにことルイスに聞かれて、梨咲は考える。
今まで考えた事もなかった。
「見てみたいもの、やってみたい事…とか。」
ルイスにアドバイスを貰うがよくわからなくて首を傾げる。
「じゃあ…この先に極めてみたい事とか?
例えば…水魔法を極めてみたいとか、薬草について、もっと勉強してみたい、とか。」
ルイスに羅列されて梨咲の頭はキャパシティオーバーになった。
「何か…今まで先の事とか考えた事が無くて…目がチカチカしちゃう!」
梨咲が混乱しているのを見て、ルイスは優しく梨咲を抱きしめる。
「急ぎ過ぎましたね!ごめんなさい。
焦らなくていいですから…
梨咲さんには、ゆっくり何でも考えて貰いたいと思っています。大丈夫!ずっとそばに居ますから!」
ルイスに抱きしめられると、梨咲は落ち着きを取り戻した。
それからルイスは重要な事を思い出した。
「ああ!そうだ、梨咲さん!
難易度A指定の水魔法、母の手によって極秘に登録されていますからね?
卒業したら認定証を受け取って下さい。
本人にしか渡さない決まりになっていますから。
最年少記録ですよ!」
難易度A指定の水魔法
世界でも数人しか成功した事のない、極めて難易度の高い水魔法。梨咲は中学3年で成功し、全世界の注目を浴びかけたが、『非人道的な扱いを受ける娘の快挙』、と大事件になる事を恐れ、父や各国のお偉方に闇に消し去られた、と思っていた。
それが極秘に認定登録されている!?!
ルイスの話に梨咲は驚きを隠せない。
「…お母様…?」
ルイスの母の話は初耳だった。
「俺の母は裁判所で働いています。この前のディラン先輩の記憶消去の判断を下してくれたのは母なんです。」
「え…!そうなの?お母様も立派な方なのね…!」
梨咲の言葉にルイスは苦笑いする。
「まぁ、強くて強くて…強い母です(笑)」
「お会いしたらお礼を申し上げないと…。ルイスもいつの間に…!本当に…ありがとうね!」
「どういたしまして。偉大な功績ですからね。ちゃんと認められるべきだと思います。」
ちゃんと、認めてくれる人がいる。
梨咲は胸がいっぱいになった。
「母は、困っている人を助けたいと仕事をしています。それはまぁ、父も同じですが…方法が違いますね。俺も…半分以上は予め決められている事ですが、父のサポートから入って、父の様な仕事をするつもりです。ここを卒業したら母国の大学に入って勉強です。」
梨咲はルイスの言葉に感心する。
ちゃんと先の事を考えているんだな。
何だかすごく頼もしく思えた。
「でも〜♡1年くらいは〜、梨咲さんとゆっくり、新婚ラブラブ生活を送りたいな♪って思ってますけどね♡」
ルイスは梨咲の顔を覗き込んで、ニヤッと笑った。
「梨咲さんが安心して生活出来る事を見届けてから大学に入ろうと思ってます。だから、ここ(レスカーデン)を出ても安心して下さいね?」
ルイスの言葉に梨咲は胸を打たれた。
胸から込み上げてくる感情を抑えられない。
ほろ…っと頬に涙が伝う。
ここ(レスカーデン)を出た後… 不安だったの…
梨咲は手を伸ばして、ルイスの袖をきゅっと掴む。
「あ… ありがとう。」
ルイスの気持ちが…嬉しい…。
梨咲の反応にルイスは大げさに溜息をついた。
「もぉ!梨咲さん!素直じゃないなぁ!ちゃんと教えたでしょう?!」
両手を広げてルイスが梨咲を迎える。
優しい眼をして『おいで 』って訴えてくる。
「まだ恥ずかしいの?」
ルイスの言葉に俯きながら、梨咲は我慢出来ずにルイスの腕に飛び込んだ。




