祈祷舞
卒業式が近づくにつれ、校内がザワつき出す。
「今年の祈祷舞(御役目)は誰なのか?」と。
卒業式2か月前にはその話題はピークになり、根拠のない噂が飛び交う事も毎年の恒例である。
勿論学校側は把握しているのだが、重要な御役目であり、選ばれし代表生徒を守る観点から公表しない。
なので余計に話が盛り上がってしまうのだ。
「今回の祈祷舞はどなたなのでしょうね~?」
ルイスもその内の1人。
梨咲の前の席に座って声をかけてきた。
「梨咲さんだったら美しいだろうなぁ〜♡♡♡」
目をうっとりさせて呟く。
「梨咲さんとなら、歌い手で組んで、務めてみたいなぁ♡」
梨咲の手を取り、その甲にキスをしてくる。
「ふふっ。ルイスの歌声を聞いたら、聞き入っちゃいそう…!体がリラックスし過ぎちゃって、上手く舞えないかも(笑)」
ルイスの美声を想像し、梨咲は笑った。
ルイスは梨咲の言葉に喜んだ。
席を立ち、身を乗り出して梨咲にそっと耳打ちする。
「ええ…。身も心も… 癒やしてあげますよ? いつでも…。 梨咲さんが望むなら…」
ルイスはわざとリップ音を立てて、キスをする。
「…っ! ///」
梨咲はゾクッとして、耳を押さえてルイスから離れた。
『やっぱり、パートナーがルイスじゃなくて良かった…!』梨咲は心の底から思った。
「それにしても…最近ネファ先輩と仲良くし過ぎじゃないですか?」
ルイスの言葉にドキッとする。
「そう? まぁ、卒業まで残り僅かだし…。」
「…まぁ、良いですけど…」
と言いつつ、ルイスの顔は納得していない。
梨咲は苦笑する。
「また 不貞腐れてるの?」
ルイスはハッとして慌てる。
「いや…、そういう訳じゃ…」
ルイスは梨咲に釘を刺されて、これより先を詮索できなくなった。
卒業式当日
大勢の生徒、父兄、学校関係者が見守る中
よいよ皆が注目する祈祷舞の時間がやってきた。
ネファは裾の長いロングドレス
梨咲は動き易い、膝丈から斜めにカットされたデザインドレスで、お互いに白いドレスを身に纏う。
ネファはこの緊張感あるステージを前にしても堂々としていた。
「…流石ですね!」
梨咲が思わず声をかける。さすが、中央政府最高顧問のご令嬢。失敗の許されない舞台に慣れている。
「あら…何言ってるの。梨咲の方こそ、楽しみで仕方ないって顔をしているわよ?流石ね!」
ネファに笑われる。
「最高の時間の始まりよ!お互いに楽しみましょうね!」
そうしてネファが先にステージに上がっていく。
ネファの後ろ姿を見送ってから、梨咲もレースのベールを頭にかぶり、聖剣を腰に突き刺し、準備する。
ネファの登場に盛大な歓声と拍手が沸き起こった後、会場はピタリと静寂な空間に包まれた。
ネファの透き通るきれいな歌声が礼拝堂に響き渡る。
梨咲も目を瞑りその美声に酔いしれる。
ネファの歌声を感じながら、ベールを靡かせてステージに上がると、何とも言えない独特の空間が広がっていた。
「はぁ…」
さすがの梨咲も緊張する。
大きく深呼吸して、いつも通りに…!と自分に言い聞かせる。
その場にいる全員に一気に注目されていると感じる中、不思議と神様に見守られている様な安心感も感じ、段々と心が落ち着きを取り戻す。
前半はベールで姿を隠しつつ慎ましく舞い、途中でベールを脱ぎ去ると会場から歓声があがった。
ネファと視線を交わし、呼吸を合わせる。
詩の意味、伸びやかな高音。
梨咲はその音に身を委ねる。
後半はスラリと腰から聖剣を抜き、天に捧げる様なつもりで掲げ舞う。
聖剣を振り回しても軸のぶれなく、華麗で大ナミックな見事な舞を披露する。
会場は一気に高揚感に包まれた。
即興パートはこの会場の熱気を感じながら、柔軟な四肢を存分に可動させて舞う。
挑発的なネファの視線を感じながら梨咲も舞で答える。
歌と舞で2人はまるで会話する様だった。
会場の反応にネファも梨咲も手応えを感じつつ、最後まで集中力を途切れさせる事なく務めあげた。
終わった瞬間の会場は余韻に浸り、一瞬静寂を纏った後、盛大な拍手と歓声に包まれた。
梨咲はネファに跪き、拍手を捧げる。
ネファは梨咲の手を取って立ち上がらせると
「ふふっ!楽しかったわね!最高♪」と無邪気な笑顔を見せた。
「コレで心置きなく卒業出来るわ!梨咲のお陰よ!」会場を見渡しながらネファは涙目になった。
「ディラン先輩も惚れ直したでしょうね♡」
梨咲がからかうと、ネファは顔を赤くした。




