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みんなの気持ち

高校の入学式だというのに

梨咲は、感情を圧し殺す。冷たい目をして冷静に新入生の1列目に座る。


『新入生代表、挨拶。 あがた梨咲』

進行係の先生に呼ばれて席を立つ。


「わ〜、今回もあがたさんか〜」

「今回もトップだったのか!」

在校生の先輩達は毎度お馴染みの梨咲の登場を様々な感情で騒ぐ。


『在校生代表挨拶。生徒会長ディラン・アンドレア・カルサス』


出たな!

梨咲は目の前に現れたディランを無表情で迎え入れる。

挨拶が終わるとディランは大きな花束を新入生代表である梨咲に手渡す。

長身で、がっしりとした体格。栗色の髪にタレ目の甘いマスク。ディランのファンだってかなり多いものなのに…彼は欲深い。

花束を手渡すついでに梨咲の手に触れる。

「素敵な婚約指輪だね…。梨咲。」

手を触られてゾッとする。

梨咲は何も言わずに冷静さを装う。

頭を下げて挨拶をし、離れようとすると一瞬腕を掴まれた。

「この後、生徒会室においで。サボっちゃダメだよ?」

梨咲は尚も無表情で通し、壇上を降りる。


ディランに掴まれた腕が、気持ち悪い…


ルイスはイライラした気持ちで2人のやりとりを見ていた。

何だアイツ!!!ぶっとばしたい!!!

きーっと歯を食いしばりながら梨咲を見る。


しかし梨咲は冷静沈着。


さすが梨咲様だな…。 

ルイスは溜息をつく。


「ルイス君!」こそっとクラスメイトに呼ばれる。

以前梨咲と一緒に教室移動をしていた女生徒だ。

「ルイス君、梨咲の事を頼んだよ?」

「?」

「ディラン先輩に梨咲はいつも悩まされてて…」

その こそこそ話を皮切りに、周辺にいた生徒達も話し出す。

「梨咲ちゃんにセクハラし放題で〜」

「大体ディラン先輩は女たらしなんだよな。」

「権力にモノを言わせて誰も逆らえない。」

「横暴なのをいつも梨咲ちゃんが実力で勝ち取ってくれて…私達を守ってくれてた。」


ルイスは驚いた。

梨咲が同級生に、こんなに慕われていると思っていなかった。


「何かあったら協力するから!ルイス君、梨咲ちゃんの事を守ってあげて!」

「俺達の女神、梨咲様の事を頼んだぞ!」


ルイスは力強い味方が沢山いることを知った。


きっと今までは凛がその協力すらも拒んで遠ざけていたに違いない。

きっと梨咲さん自身もこんなにみんなが梨咲さんの事を想っていることを知らないだろう。


ルイスは力強く頷いた。



入学式が終わり、梨咲は憂鬱な気持ちで校舎の案内板を見る。

生徒会室… どこ?

と、そこへ

「梨咲さ〜ん♡帰りましょ?」とルイスが声をかけてくる。


…そういえば、1人で来いとは言われなかったな…。

梨咲はルイスを見て思った。


「? どうかしたんですか?」

梨咲の暗い表情を見てルイスが首を傾げる。


「…ディラン先輩に呼び出された。」

「え…っ!!!」ルイスは青ざめた。

同時に物凄い苛立ちを覚える。


「無視すればその後が大変になるし…。でも、1人で来いとは言われなかったな〜って。」

その言葉を聞いたルイスはニヤリと笑った。

「では、みんなで行きましょう♪」

「えっ? みんな…?」


梨咲は訳がわからないままだったが、ルイスの呼びかけで本当に新入生達が集まった。

そうしてぞろぞろと生徒会室へ向う。


「よく集まったね。」梨咲がルイスに声をかける。

「みんな梨咲さんに協力したいって集まってくれたんですよ?」

ルイスの言葉に驚く。

「えっ?何で?私?」


近くにいた生徒達が会話に入ってくる。

「梨咲ちゃんいつも私達の事を守ってくれるじゃん!」

「梨咲様が困っているのは放っておけない!」

「梨咲は何も言わないけど、いつも私達の事を考えて矢面に立ってくれてるのをみんな知ってるよ?」

「協力できて嬉しいんだよ!」

「そうそう!もっと頼ってよ!」

口々に言われる。


梨咲は胸がいっぱいになった。

「そんな…、私…っ ただ、みんなが困る顔が見たくないだけで…」

凛にはいつも余計な事を…って怒られてた。


「梨咲ちゃんが小学校から頑張ってるの、知ってるよ!」

「あの白猫ちゃんがいるとなかなか話せなかったけど〜(笑)」


同級生達の言葉に涙が出てくる。


私、みんなからそんな風に思われてたんだ…!

今まで、知らなかった!

「みんな…ありがとう…!」

梨咲が涙をこぼす。


「え…っ!ヤダ、梨咲ちゃん泣いてるの?」

「梨咲様って意外に涙脆いんだね!」

「大丈夫だよ!梨咲はそのままで、無理しなくていいんだよ!みんな、いつも心配してたんだよ?」


梨咲は涙が止まらなくなった。


同級生達に囲まれて泣く梨咲をルイスは温かな気持ちで見守った。

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