消去した後
ディランと3人の刺客の記憶を消し、4人を寝かせる。
拘束を解くとルイスは無言で生徒会室を後にした。
「? ルイス ?」
梨咲は慌ててルイスの後を追った。
「ルイス! …大丈夫? …ごめんね?」
梨咲が謝るとルイスがピタリと足を止めて振り返る。
「何で謝るんですか?」
「気分良くないでしょ?」
人の記憶を消すことは決して気持ちの良い事ではない。それをさせてしまった、と梨咲は反省する。
「確かに…気分は良くないですね。先輩が梨咲さんに好きだなんて言うから、最高にムカついてます。
でも梨咲さんに後味悪い思いをさせるのは嫌でしたから、満足してますよ?」
この子… 本当に怒ると 表情が消えるのね…
梨咲は淡々と話す表情の無いルイスを初めて見てた。
「ルイス…ありがとう。これでディラン先輩との事は落ち着けるわ。」
国際魔法局の裁判所に掛け合ってくれた事、ディランと刺客達の記憶を消してくれた事を感謝する。
それから安堵する。
本当に…あの人からの呪縛はこれで終わったんだ…。
梨咲は唇に手を当て、それから今更ながらに震える全身を抱きしめた。
ルイスは梨咲が震えていることに気がつくと、近づいて、優しく抱きしめる。
「…梨咲さんの中で、先輩が残らなくて良かったです。俺の記憶を消した時も、相当引き摺ってたでしょう?」
ルイスに言われてドキッとした。
今でも消えない、罪悪感。
凛が猫ではなく、本当は人間であるという事を勘づいたルイスが凛に向かって喋りだした時…凛の仕打ちが怖くなって、ルイスをそのまま喋らせまいと、一瞬とはいえ記憶を消した。
本人の許可なくしたことに罪悪感を抱える。
確かにディランの記憶を梨咲が消したら、ずっと罪悪感を抱えたかもしれない…。
梨咲は黙って俯く。
ごめんね… は前に言った。
ルイスに返す言葉が見つからなくなった。
「そういう罪悪感を抱えるのは…俺の時だけでいいでしょう?」
ルイスに頭を撫でられると、梨咲は泣きそうになった。何も言えずに、ただルイスの肩に頭を預ける。
梨咲の心に仕舞ったルイスへの罪悪感が完全に落ち着くまで、ルイスはずっと梨咲を抱きしめた。
ルイスはふと視線を感じて、ネファが何処からか見ていると勘付く。
注意深く辺りを見回すが、ネファは発見出来なかった。
「 … 。 」
梨咲の髪をそっと撫でながらルイスが話し出す。
「こんな、記憶1つ消すだけに罪悪感を抱える様な人が、よく『死なない程度に回復出来るギリギリまで傷めつける…』とか言えましたね。」
「…!!」
梨咲は勢いで言った言葉をルイスに取り上げられて、恥ずかしさのあまり顔を赤くした。
「梨咲さんらしくない言葉で驚きましたよ。でも、実はそういう趣味があるのかな~?なんて思いながら聞いてました♪ 肩とか足蹴にしちゃって♡凄い迫力で格好良かったですよ?」
ルイスがニヤニヤ笑いながら話す。
「どうせ、凛がそう言っていたのをどこかで覚えていて、使ってみたんでしょう?」
「 ! …/// !! 」
「あ、図星なんだ〜☆ やっぱりね♪」
梨咲の表情を読んでルイスは納得する。
「あぁ、でも…梨咲さんに踏みつけられるのとか、良いかもしれない♡ 今度軍服とか着てやってみて?
/// 軍服ワンピース、用意しておくから〜♡」
梨咲はうっとりと話すルイスにうんざりする。
ルイスの腕の中から逃げようと藻掻くがルイスは逆にぎゅっと抱きついてくる。
「ばか…! 変態!! ///」
「うん。梨咲さんの『ばか…』可愛い♡ 最高♡
ね〜、今日のご褒美に今度コスプレして〜♡
梨咲さんなら可愛いから絶対、何でも似合う〜♡」
ルイスは自分の冴えた思いつきに満足し、その時を楽しみに思った。