奪還
魔法陣を使い、瞬間移動した梨咲とルイスは、梨咲の寮の自室に移動していた。
梨咲は呼び寄せたルイスと指輪をしっかりと握りしめていた。
顔を上げ、自分の部屋に無事に戻った事を確認すると、梨咲は気が緩んでそのまま倒れた。
ルイスは梨咲を抱きとめる。
それから左手に握りしめられた指輪を取って、梨咲の左手の薬指に嵌めた。
「おかえり。梨咲さん…」
寝息を立てる梨咲をそっと抱きしめた。
それから梨咲の部屋を見渡す。
この部屋は、強力な結界で守られている…。
ルイスはフッと笑う。「マリーか…。」
かわいい妹が施した結界だとわかる。
この場所は…安心していい。
ルイスは梨咲をベッドに移動させる。
梨咲の左手薬指の婚約指輪に触れてから指を絡める。
梨咲の頬を撫でて指が唇に触れると、
「…っ ! /// 」
襲いたい!!!
衝動に駆られて 急いで手を離す。
梨咲に背を向けると、梨咲の部屋全体が目に入る。
ソファー、小さなテーブル、本棚に…机。
パステルピンクと白で統一されたすっきりとした部屋。ローチェストに置かれたアクリルビーズのアンティークのスタンドライト。
古の魔術5本勝負の時に見た、梨咲の部屋の再現のままだった。
いつか、来てみたいと思ってた…!!
なんて女の子っぽい部屋…!!!
ルイスのテンションが上がる。
本棚に並べられた書物を見る。
分厚く使い古した薬草大辞典、召喚魔術関連の本が並び、古の魔術書…。
ファッション雑誌や娯楽関連の書物は一切なく、真面目な本棚は梨咲の性格そのものだった。
でも、1冊だけ雑誌が…?
手に取ると、ルイスが梨咲の代打で務めたモデルをした時の雑誌だった。
んもぉ、梨咲さん♡ちゃんと取って置いてくれているんですね♡
ルイスは嬉しくて堪らなくなった。
ダメだ…。やっぱり…早く起こしたい!
このままでは寝込みを襲ってしまいそう…。
ルイスは梨咲の机のイスをベッドの横に寄せて、座る。
梨咲さん…早く起きて…
ちゃんと記憶は戻った?
早く俺を安心させて…?
寝ている梨咲のおでこにそっとキスをしてから
ルイスはそのまま回復魔法をかける。
俺の愛しいお姫様… 早く 目を覚まして…
そうして暫くすると
「ん…。」
梨咲の寝言が聞こえた。
寝返りをうって、ごろんとルイスの胸に転がり込んでくる。
梨咲はすやすや眠りながらもその胸の温もりを感じ取ると、きゅっとルイスのシャツを握って擦りついてくる。
「…っ!/// 」
可愛い!!! ルイスは悶絶する。
梨咲の髪を撫でると、梨咲はにっこりと笑う。
「ルイス…」
寝言で呼ばれて嬉しくなる。が…
「胸、触らないで…!」
眉間にシワを寄せて怒っている。
…まだ怒ってるの…(笑)
ルイスは苦笑する。
さて、お目覚めの時間ですよ。お姫様…
ルイスが唇にキスをする。
肩と頬に優しく置かれた温かい手
唇に感じる柔らかい感触…
その感触が離れていくと同時に、目を開ける。
私の顔を覗き込んでいるのは 私の婚約者…
「ルイス…」
梨咲は両手を広げてルイスを求める。
ぎゅっと抱きしめられると、涙が溢れた。