5日目
ルイスの周りにはクラスメイト達が集まる。
「ねぇルイス君。梨咲とケンカ中なの?」
「ここの処の梨咲様はどうしたんだ?白猫が居た時みたいだぞ?」
溜まりに溜まったみんなの疑問がルイスに集中する。
「梨咲さんは…今俺の記憶だけ無くて…」
その言葉にみんなが一気にザワつく。
「ディラン先輩と賭けの最中なんです。
まぁだから、俺が頑張らないといけないんですが…。見守って貰えたら、有難いですかね!」
ルイスの言葉にみんなが思い思いを口にする。
ディランへの避難、ルイスへの同情、梨咲の心配…
「でもさ、梨咲ちゃん…ルイス君が心の拠所だったんだね…。ルイス君の記憶を無くして、あんなに気持ちを張り詰めさせちゃうくらい…。」
1人の女生徒がそんな事を言い出した。
「梨咲、ルイス君に安心しきってたよね!ここ最近は特に。」
「なんか…微笑ましかったんだよね〜!」
「梨咲ちゃんにはさ、ルイス君が婚約者で正解だったよね!」
そんな事を言った後にルイスに向き直る。
「だから、ルイス君頑張って!!協力出来る事はするから!!」
ルイスはみんなの熱の籠もった応援に苦笑した。
それから孤高のオーラを纏った梨咲を見る。
勇ましくて 美しいけど… アレは怯えてる。
足元を救われない様に。
なるほど 梨咲さんはああやって過ごしてきたのか。
まぁ、無理もない か…。
放課後
帰ろうとした梨咲はふとした気配に気がついて、
宙返りしてその場から飛び退く。
3人潜んでる…
空中から3人を確認し、氷の魔法で瞬時に3人の身を拘束する。
「ディラン先輩の刺客の方々でしょうか…?」
床に軽やかに着地すると梨咲は直様そのうちの1人に詰め寄る。
口を割らないその刺客に睨みを利かせて冷却を強める。
「口を割らないと、命の保証がないですよ?
申し訳ありませんが、こちらも命懸けですので…。」
梨咲の眼はどこまでも冷たい。
「…梨咲さん。やりすぎです。それだとディラン先輩と変わりません…。」
梨咲が振り返るとルイスがいた。
「…! いつの間に ?! 」
驚く梨咲の手をルイスが掴んで抑え込み、唇を重ねてくる。
「!!!」
梨咲は藻掻いて抵抗するが、力が敵わない。
壁に押しつけられて逃げ道がない。
梨咲は状況の把握が出来ずに混乱する。
その内にキスが深くなって、梨咲はよいよパニックになった。
段々力が入らなくなってきて、梨咲はそのまま立っていられずに座り込む。
拘束されていた3人も、同時に梨咲の魔法から解き放たれ、気を失っていた。
「梨咲さん…」
梨咲は苦しくて荒い呼吸を繰り返すが、ルイスに呼ばれて顔をあげた。
それからルイスの優しい眼に気がついた。
「怖がらなくていいよ?ちゃんと俺が、守ってあげる。」
ルイスが梨咲の髪をそっと撫でる。
梨咲はルイスを警戒するが、
ルイスは優しい眼で、優しい手付きで梨咲を包み込む。
「今は…俺を信じて…?」
ぎゅっと優しく、力強く包み込む。
梨咲はその温かさに訳もわからずに涙する。
凍てついた心まで溶かされていく様…
何だろ…? 何か、ホッとする…
さっきまでの恐怖心も、孤独感も
不思議と今は 感じない…
「? ル…イス…?」
梨咲は名前を呼んでみる。
ルイスは微笑む。
梨咲の眼から冷たさが無くなっている。
「貴方…本当に婚約者…なの?」
梨咲が訪ねる。
「はい。梨咲さんを助ける為に…。
いつも傍にいます。」
ルイスは梨咲の手を取って恭しく口づけた。