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孤高

「どうやら梨咲様は婚約者のルイスとケンカ中らしい。」

それはあっという間に学年中に広まり、注意事項として

「梨咲様は不機嫌極まりないので、以前の白猫が居た時と同様に刺激をしないように…」と通達が出る程、梨咲は殺伐とした雰囲気を纏っていた。 


「どうしちゃったの…。梨咲…!」

親しくしていた友人達もそのオーラに圧倒され、近づけない。


梨咲はただただ警戒を強めているに過ぎなかったのだが…。

何せ自分の身を守れるのは自分だけ。

気を許せばネファとディランにつけ込まれる。

それは、自分のこの先に関わる大事な事。

高校卒業を果たした幽閉の先…

ネファによる、愛玩具の様に振り回さる生活か、

ディランによる、能力を利用される奴隷の様な生活か。


私はただ、静かに暮らしたい…

あの2人に囚われるくらいなら、まだこの学生生活の方が…幽閉の方がマシに思えてくる。

遠い過去、愛されたいと願った自分はもういない。

そんなモノは幻想だ。


誰かの元に愛もなく嫁ぐ。

それは母国の為。自分の気持ちは無いに等しい。


それでも…この国にはもう居たくない。

ここでの生活は… 辛い事が多すぎた…。


心の拠所にしていた凛も居ない…

でも、泣いても何も変わらない。

凛の教えの通り、強く、気高く、何者にも捕らわれずに生きていく…。


梨咲は今日も冷え切った冷たい眼をして、感情を殺し、登校する。




ディランは今日も梨咲の拘束に失敗し、頭を抱える。


誤算だった…!

婚約者を片付ければ単体になった梨咲を容易に捕らえられると思ったのに…!

弱るどころか… 魔力がどんどん強くなる!


賭けの時にルイスさえ乱入して来なければ、そのまま拘束したのに…!


邪魔な白猫も居ない今、捕らえるには絶好のチャンス。

寧ろ、コレがラストチャンスかもしれない…。


ディランは焦る。


梨咲が手に入れば…

強大なあの魔力が手に入れば…

誰も何も口出し出来ない。

どうやって手懐けるかは、最早後回しとして…

拘束だけでも…


ディランは中央政府メンバーである父の権力を使い、協力者を要請する。


それから、梨咲から預かった「ルイスの記憶」を一瞥する。

こんなモノでは何も役にたたん…!


手に魔力を込め、梨咲の「記憶」を破壊する。

が、壊れない。


何?! 

驚いて梨咲の「記憶」を確認する。

「…っ!いつの間に…!」

梨咲の「記憶」に防御魔法がかけられている。

「梨咲め…!こんな、「記憶」にまで防御魔法をかけられるのか!こんなに薄く、強力に…!」

ディランは愕然とした。


「へ〜♪流石は梨咲ね♡ ディランの卑怯さに先手を打って… その能力の高さ♡益々欲しくなっちゃうな〜♡」

壁に寄りかかり、一部始終を高み見物していたネファはディランのその愕然とした様を楽しく見ていた。


「ふふっ♡ 本当に梨咲はルイスが好きなのね…♡

可愛い…♡」

指を唇に押し当ててネファは妖艶に笑った。

「本当に…私の梨咲をあそこまで手懐けるなんて悔しいナ…! ルイス…要らない…!」

ガーネットレッドアイが不気味に光った。



ディランはよろよろと立ち上がり、梨咲の「記憶」を封術箱に閉じ込めようとするが、封術箱と反発しあって収まらなかった。

「くそぅ! 鍵付きにも入れられないのか…!」

ディランは梨咲の「記憶」を持て余す。


「捨てちゃえば?」

ネファが興味なさそうにディランに言う。


「珍しくマトモな事を言うな。そうするか…。」


ネファに同意したディランはレスカーデンの東の深い森の谷間に梨咲の「記憶」を捨てた。



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