31話
しばらく江戸の方にいたので更新できませんでした。
渋谷はいつになっても好きになれませんね。
あの裏通りに行った瞬間に治安が悪くなる感じが見せかけの街って感じがします。
信親の足元に血が垂れる。
彼の首元には薙刀があった。
しかし信親は無傷である。
「ガァッッ!!!」
そしてその薙刀の持ち主である斎藤利三は悲鳴を上げながら後ろへと崩れ落ちた。
彼の胴体には一本の槍が刺さっている。
「殿、間一髪ですな」
そう言って福留儀重は動かなくなった利三の体から槍を抜く。
「ちょっと調子に乗りすぎたか。しかし本当に晴れるとはなぁ……」
「それ以前にあそこまで追い詰められてよく平気ですな。まあ三十人程度にすり減った軍勢など恐るに足らずといったところですか」
利三の兵は足がすくんで動けないまま長宗我部軍に討ち取られている。
「伯父上の首はお前にやるよ。このまま全軍で残党を討ち果たすぞ!」
主を失った斎藤勢は壊滅しその多くが討ち取られた。
明智光秀の軍勢も堀秀政、織田信重によって壊滅し山崎の戦いは羽柴軍の勝利で終わった。
戦後処理をするために諸将が本陣に集まると信孝はそれぞれの諸将の手を取って彼らの功績を労った。
なお堀秀政と織田信重はそのまま近江方面へと向かったので列席していない。
「長宗我部殿、四国よりわざわざのご参陣。誠に忝ない。今後とも織田家の良き盟友としてよろしくお頼み申し上げる」
既に当主のような振る舞いだが信親としても同盟国に格上げされたので悪い気はしない。
「これで少しは上様のお役に立てたならこれ程の喜びはございませぬ。こちらこそ今後ともよしなに」
かなり腰の低い信孝だが秀吉の態度は真逆である。
「皆々、骨折りご苦労」
そう言って馬上から言っていくだけであった。
「ふん、筑前め。天下を取った気でおるわ」
秀吉と親しい中川清秀などはこう言って笑っていたがそれを見た信孝は不満そうであった。
さて、一端の休息を終えると秀吉に従って信親も京に入った。
というのも石谷頼辰とその一族を保護するためであった。
既に秀吉から許可は得ており福留、桑名らに捜索させ自身は疲れを癒すために秀吉と寺で茶を飲んでいた。
「しかしこれで羽柴殿は天下人ですな。北畠も神戸も織田家を纏められませぬ」
「うむ、三法師様が元服されるまでの間にワシが彼奴らの手綱を握っておかねばならぬ。柴田のオヤジには無理よ」
「九州と毛利の監視は我らにお任せあれ」
そう言って信親は軽く頭を下げる。
「うむ、任せたぞ。長宗我部と宇喜多はワシにとって大切な盟友じゃ。五郎次郎も我が子と思うて養育する」
「忝ない。それと1つ、お願いがあるのですが……」
「ん、申してみよ」
「はっ。四国に新たなる城を建てとうございます。場所は決まっておりませぬが南海道の中心となる……南府城とでも名付けましょうか」
「ほう、南海道の府中ということか。必要な資材があればなんでも申せ」
「ははっ。有り難き幸せ」
完全に信親は秀吉の家来のような振る舞いをしている。
しかし秀吉も大名が頭を下げて気分が良いのかそれを不自然と思わない。
すると堀尾吉晴が困った顔で入ってきた。
「殿、殿に会いたいと申す町娘が……。言うても聞かんので」
「あ、名前はなんと言う?」
「まこと申しております。殿の顔見知りと……」
「ああ、おっかあの通っとる医者の娘か。まあ通せ」
どうも秀吉は不愉快そうな顔をしている。
「あ、私は退席した方が?」
「いや、良い。あの女子面倒なのじゃ。お主が論破してやってくれ」
こうして信親vs町娘の口戦が始まるのだった。