24話
「殿、申し上げたき儀がございます」
光秀同様に斎藤利三も深刻そうな顔をしていた。
「なんじゃ、申してみよ」
「はっ。長宗我部が羽柴筑前の指揮下に入り毛利攻めに参加しているようです。はっきり申し上げますが殿は既に四国方面での立場を失いました」
「くっ……。何故弥三郎殿と筑前は親しいのか……」
「それはわかりませぬ。しかし此度の饗応役解任と言い四国の件と言い上様は殿を邪険に扱っているとしか思えませぬ」
「お主もそう思うか……。家老達を集めてくれ……」
歴史が大きく動いたその時であった。
数日後、備中高松城。
援軍として向かっていた織田信重、蜂屋頼隆及び軍監の堀秀政が到着した。
信親含め4人は秀吉の陣に集まる。
「ふう、これでひとまず毛利軍並みの軍勢にはなったか」
「間もなく伯父上率いる五万も到着されます。それまでの辛抱ですな」
信重の言葉にどこか秀吉はほっとしている。
今毛利軍に攻め込まれたら一溜りもなかったからだ。
「ワシらは問題ないが兵達は疲労しております。少々休ませますぞ」
「ああ、構わんぞ兵庫殿。ウチの仙石勢の後方に布陣なされれば良い。それで神戸殿と五郎左殿は?」
「ああ、丹波丹後の兵の集まりが悪いらしく未だに大坂に滞在しておられる。しかし勝手に義父上の所領の国衆に出陣を命じるなど……」
「え、明智様の所領の国衆に神戸殿が動員をかけたのですか?」
知らない情報に信親が驚く。
そんなことをすれば光秀が激怒するのは容易に想像できる。
「まあ神戸殿の兵だけでは足りんからなぁ。上様の許可は得ているのか?」
珍しく大人しくしている秀政に秀吉が聞く。
「上様の許可がないとそんな事出来ませんよ。上様は明智殿に丹波から転封を命じたらしいので」
「ってことは丹波は神戸殿に与えられるのか。つまらんのう」
「まあまあ七兵衛殿。ワシもいずれは中国九州辺りに転封されるじゃろうしそうなれば播磨の国主かもしれんな。ハッハッハっ」
そんなふうに談笑していると黒田官兵衛が深刻そうな顔をしながら入ってきた。
「殿、お人払いを」
「なにか我らに不都合な事でも?」
不愉快そうに秀政が官兵衛を睨みつける。
「いや……実は……」
「良い、申せ」
「はっ……実は」
秀吉に許されたものの未だに戸惑っている官兵衛。
信親はもちろん何が起きたか知っている。
「上様、及び岐阜中将様。京にて明智日向守の謀反に合いお討死!」
「なっ、なにーーー!!!」
一同が驚き信親も驚いたフリをする。
世にいう本能寺の変である。