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シン 長宗我部転生記   作者: 三p
夏草の章
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9話

「何故そこまで暴れておられるのですか……兄上」


キレ散らかす信親を見て心配そうに弟の香川五郎二郎親和が聞く。


「あの福島という男!気前の良いやつかと思うたら訳の分からん下品な言葉で賤ヶ岳の話を延々と聞かしてきおる!30回だぞ!?一夜にして30回も同じ話をしてくるのだぞ!」


皆さんご存知の通り福島正則の酒癖の悪さは有名である。

それが信親に直撃してしまったのだ。


「土佐の奴らも酒癖は悪いが同じ話を延々とする奴はおらぬ!あれとはもう二度と酒は飲みとうない!」


「とは言え御相手は殿下の御一門格……今は親しくしておいた方が……」


「その後も厄介なのだ!後から来た加藤嘉明も蜂須賀家政も脇坂安治も皆酒癖が終わっとる!まだ大名家出身の細川忠興と池田輝政はマシだが彼奴らは彼奴らで信長公の話ばかりして気まずい!」


「やはり本能寺ですか……」


「そうじゃ、まさか目の前で共に酒を飲んでいる男が信長公を殺したとは誰も思うまい!」


そう、明智光秀が織田信長を殺害した本能寺の変は信親が伯父の斎藤利三と共に仕組んだ事であった。

結局目論見は失敗し明智家は滅び利三は処刑されたが……。


「ああ、これでは増田殿をお招きして政のいろはに付いてご教示願えばよかった……」


5千石から90万石までを切り開いた元親ならともかく信親はお坊ちゃまかつ戦国大名としてのプライドが少なからずあり、初対面の人間の前で酔い潰れるのは辞めろと教育されてきた。

だが武断派の大半はそれがない(細川忠興の場合は性格が……)

その点、増田長盛やら長束正家らの文治派はやはり品があるのだ。


「増田様も宜しいとは思いまするがもう少し格式の高い……蒲生侍従様などは如何でございますか?」


「蒲生侍従の妻の父は信長公……やはり気まずいぞ。もう格式が高くて殿下子飼いでも信長公恩顧の大名でも無い将などは……」


「そのようなお方……お一人しか」


「小早川隆景(様)!!」


「やはり一致したか」


「ええ、小早川様は歴戦の勇士にてどの派閥にも属されず……」


「ただし厄介なのは以前敵対して家臣を何人も殺めた事だ」


かつて伊予攻略のおり長宗我部家と小早川隆景の毛利家は激戦を繰り広げその過程で信親は何人もの隆景の家臣を惨殺してきた。

なので向こうの心証は良くないしこちらとしても毛利家とは因縁がある。


「やはり増田殿が一番良いような……」


「うーむ、やはりそれしかないのう。というかわざわざ大名家と酒を飲まなくても良いか」


「どうせこれからは大平の世ですからな。別に何かに向けて付き合う必要などは……」


しかし奉行衆とばかり親しくしていれば関ヶ原の折に立ち回りにくくなるのは必然。

やはり嫌でも武断派諸侯と付き合うしか徳川家との表立った交流を禁止された長宗我部家に道は無かった。


そんな四面楚歌の信親に更に恐ろしい命令が増田長盛より与えられた。


「殿下よりのお達しでござる。長宗我部宮内少輔は浅野弾正と共に忍城を攻める石田治部少輔の援軍に向かうこと!」


(なっ、なんですとーーーー!?????)


信親は心のうちで発狂するのだった。

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