20話
信親が三好を滅ぼした頃、織田家は武田勝頼を滅ぼすために本格的に動き始めた。
武田から織田へ寝返った木曾義昌救援の為に嫡男の信忠を総大将に滝川一益、河尻秀隆、森長可、団忠正、毛利秀頼ら三万の軍勢で信濃へ侵攻。
これに呼応するように徳川家康も遠江から駿河へと侵攻した。
織田の大軍に武田家は家臣や国衆の離反が続出。
一部の城は残ったものの天目山にて武田勝頼は自害して果てた。
ここに東国での反織田勢力は越後の上杉景勝のみとなった。
また中国では羽柴秀吉率いる二万の軍勢が備中へと乱入していた。
防長からは大友家の軍勢が上陸する構えを見せておりこの二家が信長に下れば織田家の天下統一は果たされるところまで来ていた。
5月になると信親の元に秀吉の使者がやって来た。
「羽柴筑前が家臣、増田仁右衛門にございます。此度は我が主より長宗我部様へ言付けを伝えに参りました」
そう言って使者が頭を下げる。
この増田はもちろん史実で長宗我部家と豊臣家を繋いだ五奉行の増田長盛である。
「まずは遠方よりよう参った。大凡の予想は着くが援軍の要請だな?」
「はっ。ただいま筑前は備中高松城を攻めておりますがこの城がなかなか固く、毛利の援軍も迫りつつあり長宗我部様にも援軍を……」
「上様に援軍を求めれば良いでは無いか?それに制海権や河野の問題もある」
「ご安心くだされ。既に制海権を確保するために九鬼水軍が動いております。上様への援軍も既に求め織田七兵衛様、鉢屋兵庫様率いる軍勢が播磨に入られております。上様も岐阜中将様や神戸侍従様と共に援軍に向かわれるとのこと」
どうやら史実では四国方面を担当している軍勢は中国方面に回されたらしい。
これは歴史が少し変わりそうだと信親はニヤニヤした。
「私が行かずとも兵は揃っているでは無いか、さては長宗我部も完全に織田方と毛利に思わせたいためだな?」
「如何にも。毛利と足利義昭は長宗我部様との和睦を模索しているとの事。この辺りで毛利の望みを打ち砕きたいのが我が主の願いです」
「ほう……ならば仕方あるまい。但し大軍は出せぬ。六千程を率いて備中へと向かおう」
かくして信親は阿讃の兵六千を率いて備中へと向かうのだった。