16話
今ハンバーグ食っててふと思ったんですけど今の時代劇はリアリティがないとか重厚感がないって言う人いるじゃないですか。
でも昔の時代劇もそんなにリアルじゃないですよね。
こないだYouTubeで20年くらい前の正月特番の伊達政宗の時代劇が配信されてたんですけど、例えば1580年の時点で蘆名義広が蘆名の当主になっていてしかも60歳くらいの役者が演じてるみたいな事があったんですよ。
リアリティの欠けらも無いし重厚感はあるかもしれないけど、じゃあ重厚感を出すためなら当時10代20代の武将たちを老人にするってそれは違うくないですか?
長宗我部の話なんてしますと1983年の徳川家康だと長宗我部盛親は完全に老人でしたし……。
そもそも歴史学なんて日々説はアップデートされるわけで自分が信じてる旧来の説と違うからこれはおかしい!ってのはただの老害でしかないと僕は思うんですよ。
実際、今の大河ドラマに文句言ってる奴のTwitter見てみたら山岡荘八の小説や司馬遼太郎の小説を史実と勘違いしてましたし。
文句言ってる暇あるなら論文のひとつでも読めばいいのにね
年明けに元親より新たに与えられた浦戸城への引越しも落ち着いた頃、久武親直が信親の元にやって来た。
「よう来た。何か分かったか」
「ククク、驚きなさるな。一条内政は波川玄蕃の遺族、北之川親安と共に土佐を乗っ取る計画を立てておりまする。密書も手に入れました」
「宛先は?」
「豊後の大友にござる。織田への仲介を求めておりますぞ」
「ええい、親父殿の寛大な処置を仇で返すとは許せぬ!直ぐに兵を出すぞ」
早速信親は岡豊付近にいた長宗我部の重臣を呼び寄せた。
これに応えたのは桑名吉成、吉田定重、森孝頼、吉良親正である。
「皆の者、よう集まってくれた。此度、一条内政の謀反計画が判明した」
大方の人間がやはりという顔をしている。
以前より内政は元親に対して不審な行動が多かったからだ。
「単独ではございませぬな。連座している者は?」
「流石だ、弥次兵衛(桑名)。連座しているのは波川玄蕃の子の弥次郎、弟の次郎兵衛、娘婿の北之川親安。おそらく西園寺攻めで玄蕃が討死したのを憎んでおる」
「あれは若君を侮って勝手に突出した故。逆恨みにも程がある」
森孝頼が呆れたように言う。
「それが分かるような相手なら謀反は起こさぬ。この次郎左衛門にお任せくだされ」
吉田貞重が前のめりに言う。
「よし、お主は波川一族を攻めよ。叔母上以外は皆殺しにしてくれて構わぬ。播磨守(吉良)は黒瀬の左京進に北之川を攻めるように伝えよ。岡豊に居る北之川の子は弥兵衛に任せる」
「大津には私が?」
「そうだ。近江守(森)と俺で大津を攻める。謀反を企めばどうなるか国衆共に知らせてやれ!」
大津城にて一条内政は四国各地の豪族に書状を飛ばしていた。
しかし三次、武田、香川、金子、大西ら有力な豪族からは相手にされず内政は焦っていた。
「ええい!なにゆえ誰も麿の味方をせぬ!腹立たしい!」
そんな内政の元に家臣が駆け込んできた。
「申し上げます!長宗我部信親様率いる軍勢三千がこちらに向かってきております!」
「まっ、まさか!謀反が露見したのか?とにかく出迎えせねば」
直ぐに内政は家臣達と共に城門まで信親を出迎えた。
「おう、中将殿。久しぶりであるな」
「そうじゃのう。そちは達者であったか?」
官位は内政の方が遥かに上であったが今や内政には何の力もない。
「おう、何せ面白い事が起きたからのう。謀反人が現れたのよ」
「なっ、なんと!長宗我部に弓引くとは我ら一条にも弓を引くことと同義。許せぬのう」
「ああ……そいつはいつまでも土佐の主であるつもりらしい。困った男よな」
カマをかける信親、冷や汗が止まらない内政。
不気味な空気が2人を包み込む。
「その前に貴殿にも挨拶をしておこうと思ったのよ。別れの挨拶をな」
そう言って信親は右手を刀にかけ即座に内政の首に叩きつける。
「謀反人、一条内政。この信親が討ち取った!郎党も皆討ちとれ!」
信親が首を掲げると共に森孝頼と武田信定の軍勢が攻めかかる。
一条勢は突然の攻撃に慌てふためき悉く討ち取られた。
内政の妻で信親の妹だった大津殿は一旦岡豊へと連行された。
1週間のうちに波川一族、北之川一族も悉く討ち取られ信親はそれらの首を抱えて元親の元へと向かうのだった。