13話
284年早い鳥羽・伏見と言ったものの今回は史実の鳥羽・伏見とは違う。
起こるべくして起こる鳥羽・伏見なのだ。
鳥羽を守るは羽柴軍最強の蒲生氏郷の三千、それを攻めるは生涯無敗の吉川元春率いる五千。
伏見を守るは秀長の腹心藤堂高虎の三千。
これを攻めるは信親の軍勢五千。
数では羽柴軍五万、毛利・長宗我部連合軍八万と羽柴軍が圧倒的に不利であったが連合軍は京に土地勘が無く(信親の元の人即ち作者は京都生まれ京都在住だが伏見にほとんど行かないので)、史実では3倍の幕府軍が新政府軍に敗北しているため勝機は普通にあった。
「かかれぇぇ!」
吉川元春が采を振ると共に毛利軍先鋒が一気に蒲生勢に襲いかかった。
しかし流石は蒲生氏郷。
自ら陣頭に立ち敵の首を捕り奮戦した。
これに負けじと伏見方面では藤堂高虎が明智光秀みたいな戦術(某仙石秀久漫画であったアレ)で信親を苦しめていた。
「蜘蛛の巣見てえに絡まって鬱陶しい!何が困るかと言えば藤堂高虎も蒲生氏郷も家来にしたいからだ!」
しかし突っ込んでくれる家臣はいない。
親茂も隼人も死んだのだ。
左右の喪失感を覚える信親の肩にふと手の感触が乗っかった。
「ならば生け捕りにすればよろしいでしょう。どうせ一国くらい与えるのでしょう?」
「おお、孝頼!」
ついに本作初登場。
私の作品では毎度おなじみ森孝頼である。
「大殿から話は伺っています。これよりは僕が若の右腕なります」
「それは頼もしい。俺のボケについて来れるかね」
「もちろん、藤堂勢は森に隠れて火を放って参ります。あ、僕じゃなくて地形の森ですよ。そこに火を放ち炙り出してやりましょう」
「なるほど、それは妙案。一気に焼きましょう、燃やしましょう」
孝頼が指示すると一領具足が森に火をかけた。
するとまもなく悲鳴をあげながら藤堂兵がダラダラと出てきた。
「鉄砲隊、放て!」
ソレを一つ一つ孝頼は正確に撃破していった。
さながら害虫駆除業者である。
「ほら簡単でしょう。さて、進みましょう」
孝頼の活躍を見た若い足軽大将が百人ほどを纏めて突っ込んだ。
しかし彼らは瞬く間に粉砕された。
「我こそは羽柴家家臣、藤堂与右衛門高虎ッ!命が惜しくない者からかかって参れェェッッ!」
薙刀の先に突き刺さっていた誰かの首を投げ飛ばすと高虎が薙刀を突き立てた。
まずい、ここで一騎打ちになると高虎を採用できないと察した信親は手を挙げた。
「待たれよ。貴殿の噂はたまに耳にしておる。ここで朽ち果てる必要も無かろう。我が家臣となれ」
「何を申す!問答無用ッッ!」
「仕方あるまい」
突っ込んでくる高虎を信親はサッと交わすと首筋に一撃を与えた。
高虎はよろめきながら崩れ落ちる。
「安心せい。峰打ちじゃ」
「若、何故です?」
「ああ、なら戦いながら俺の目指す国を話そうか」
信親は馬に跨ると話し始めた。