12話
「お待ちしておりましたぞ、毛利殿」
元親と信親は毛利輝元らを出迎えた。
「いやいや、長宗我部殿のお陰で旧領を取り戻すことが出来ました。それよりも直ぐにご相談したき案件がございます」
「将軍ですか……」
2人ともなんとなく察していたがやはりそうであった。
どういう事かと言うと毛利輝元の元に足利義昭が居るように長宗我部家の元には14代将軍足利義栄の弟の足利義助、そして土佐一条家の一条内政が庇護されているのだ。
その一条内政を建てる際に元親が頼ったのが現関白の一条内基である。
そして都合のいいことに彼には子がいない。
元親・信親が考えている事は輝元も分かっていた。
「仮に羽柴を討ち、我らが天下を制したとて公方様は必ずや将軍に就任すると仰せられるでしょう。我ら毛利は中国のみで良いのですが長宗我部殿は天下を狙われると聞きました。ならば中将(内政)殿を関白殿下のご養子とされる方が宜しいのではと……」
「流石は毛利殿。我らとしてはやはり中将様に関白の養子となって頂きいずれは我が甥を関白に立てとうござる」
「今はその時ではありませぬ。聞くところによれば伊勢方面の美濃守秀長以下二万が既に瀬田を超えたとの事」
丹羽長秀は瞬殺されたがその瞬の間に防衛ラインを構築するのが官兵衛の恐ろしいところなのだ。
信親の進言を聞いた輝元は感心したように頷いた。
「左様ですな。細川殿、羽柴家征伐の勅命はまだかね」
輝元は脇に控える細川忠興に聞いた。
ちなめにこの男、信親配下で父のかつての同僚の石谷頼辰の調略で若江の戦いでは秀吉に属しながらも何もしなかった。
「はっ、父が近衛内府様に文を送っております。しかし……」
「我らも従兄の蜷川親長を通して関白殿下を説得しておるが……」
「一度戦にて勝利すれば公家共も態度を変えようぞ。先鋒はワシにお任せあれ」
「おお、吉川殿のその心意気頼もしい。さすれば吉川殿に先鋒をおまかせ致そう」
元親が言うと輝元と信親も頷いた。
「では始めましょうぞ!」
信親が言うと諸将が陣を後にした。
対する羽柴勢は鳥羽と伏見に防衛ラインを構築。
こうして284年早い鳥羽・伏見の戦いが始まったのであった。