8話
河内方面より大坂を目指す長宗我部・紀州連合軍の四万五千は軍を二手に分け、八尾及び若江方面より侵攻する事になった。
八尾方面は長宗我部信親を総大将に長宗我部親吉、香川親和、香宗我部親泰らの二万五千。
若江方面は長宗我部元親・紀州勢の二万がそれぞれ進軍した。
対する官兵衛はと言うと自分と蜂須賀小六は尾張へと向かい、丹羽長秀は病気で参陣出来ずそれぞれ指揮を執るのは息子達だと虚報を流した上で着陣した。
そしてこれにまんまと引っかかったのは先鋒の親和である。
「官兵衛も丹羽長秀も居らぬとなれば数の差で有利な我らに分がありまする!一気に叩き潰しましょうぞ!」
親和が言うと讃岐衆も同意する。
ちょっと最近快進撃で調子に乗ってるね。
だが調子に乗っていたのは信親もそうだった。
この時期の黒田長政も丹羽長重ものちの世界ほど成長していないので大した事ないと確信していた。
「よし、親和は香西勢と共に敵の先鋒を崩して参れ」
待ってましたと言わんばかりに親和は頷くと香西ら与力と共に陣を出て行った。
「構わぬのですか?どうも嫌な予感が致しますが」
「何を言う親茂。官兵衛が居らぬとなれば赤子の手をひねる様なもの。この勢いに乗じて一気に大坂を攻め落としてくれようぞ」
早速、親和率いる先鋒五千は防衛の準備を始める羽柴軍先鋒の戸田勝成の二千に襲いかかった。
戸田勢は防戦するものの二倍の兵力を支えきれずに潰走しそれを親和が追撃。
信親も親泰ら五千を後詰とし親茂、大西頼包らの一万五千を率いてそれに続いた。
親和の攻撃は凄まじいもので戸田勢は為す術なく討ち取られ副将の桑山重晴は討死。
戸田勝成も必死に逃げるものの遂に追い詰められた。
「はっはっはっ!大恩ある織田家を裏切った報いであるな。覚悟いたせ!」
親和はわざわざ前に出ると鉄砲隊に備えさせた。
「なんとでも申すが良い!我は殿のご意志に従うのみじゃ!」
「ほざけ!今のザマを見よ!柴田修理や滝川左近こそ誠の忠義の武士であったでは無いか!それに比べてお主らは!」
「黙れ黙れ!武士の死に様見るが良いわっっ!」
そう言うと戸田勝成は親和に斬りかかった。
親和はニヤリと笑うと刀を振り下ろす。
それと共に鉄砲隊が……。
グサッ!
鉄砲隊長の兜に矢が突き刺さる。
「……!!」
親和が気づいた時にはもう遅かった。
「我こそは丹羽家家臣、長束新三郎正家!その方ども、覚悟致せ!」
弓を構えた男がそう言うと側面から一斉に羽柴勢が現れたのだった。