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シン 長宗我部転生記   作者: 三p
夏草の章
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3話

各大名が呼び出された理由は北条家にあった。

先年秀吉は天下惣無事令を出し諸大名が私的に戦を行うことを禁じていた。

これに従わなかった島津家が討伐されたのだが残るは北条・伊達家のみであった。

その北条家が真田家の名胡桃城を攻めこれに秀吉は激怒、対して北条家が弁明の使者を送りその謁見に列席するために諸大名が招集されたのだった。

列席するは秀吉を始め織田信雄、豊臣秀長、宇喜多秀家、上杉景勝、毛利輝元、織田信包、細川忠興、長谷川秀一、毛利秀頼、筒井定次、大友義統、島津義弘、蜂谷頼隆、小早川隆景、吉川広家、奉行衆ら、そして長宗我部親子である。

対して北条家は当主氏直の叔父の氏規を派遣してきた。


「さて、美濃守(氏規)殿。何か申し開く事はあられるか?」


石田三成が末席で平伏する氏規を睨みつけて聞く。


「はっ。それは名胡桃城主鈴木重則が家臣、中山九兵衛が勝手に寝返った次第。なれば我が方は一切関知せざることにございます」


「そのような言い分が通るとお思いか!寝返ったということは裏で手を引いていた者が有るという事であろう!」


毛利秀頼が怒鳴る。


「左様!」

「そうである!」


と諸大名が立て続けに非難する


「はっ、それは我らが関知せざる事と申しております……」


「しかしその鈴木重則は切腹しておる。それにそなたの兄の藤田氏邦が宇都宮領に侵攻した事は如何説明する?家臣が勝手にした事と申して許されるべきことではなかろう」


毛利輝元が非難する。


「殿下、お下知の程を……」


空気が悪くなってきたのを察した三成が秀吉に耳打ちする。


「再度当主氏直並びに先代の氏政が上洛し謝罪せよ。さもなくば20万の軍勢を以て小田原を攻める。良いな?」


「はっ、ははぁ……」


ボロクソに言われてかなり萎えて居るであろう氏規は苦しげに頭を下げると早々と帰って行った。


その後、長宗我部親子に話しかける男がいた。


「おお、長宗我部殿。先の弥三郎殿の宮内少輔任官、祝着至極にござる」


「これは大納言殿に井伊殿。過分な配慮、忝のうございます」


2人が頭を下げる。

その相手たる大納言……徳川家康、そして家臣の井伊直政である。

元親の方が歳上とは言え家康は石高でも官位でも元親より雲の上の存在であり元親は下手に出た。


「これで宮内少輔殿も晴れてご立派な大名の御世継ぎにござる。何か祝いの品を送ろうかと考えておりますが何か望みのお品はありますかな?」


「はっ。大納言殿は薬を調合されるのが御趣味と聞き及んでおります。なれば疲労に効く薬など頂きとうございます」


「おお、なれば明日にでもお送り致しましょう。直政、そなたがお届けせい」


「はっ、必ずや」


「愚息に対する格別のご配慮、痛み入ります。我らはこれにて失礼致しまする」


「うむ、土佐侍従殿にも薬をお届け致しましょう。それでは我らもこれにて」


再度2人が頭を下げ家康は去っていった。

だが頭を下げる元親の腕が震えていた。


「あの、父上?」


「むっ……ああ。まあ色々とな」


どうも不思議に思った信親は井伊直政から薬を受け取り土佐に戻ると叔父の香宗我部親泰に聞くことにした。


「ふむ、兄上が大納言殿と話してのう……。まあお気持ちは分からなくもないが……」


「いやしかし父上と大納言殿はかつて共に殿下に刃を向けし仲であろう。何故あのように怒りを見せておられる?」


「うむ、共に戦った仲だからこそ兄上は不快感を示されるのだ。徳川大納言120万石、我らは24万石。元の石高に大差は無くあの時徳川殿が和睦しておらなんだら我らは今頃、西国一の大大名にて大坂も我らの物。さっさと和睦して今もあのような立場にいる大納言を恨まずして何とする?」


ここで信親は全てを理解した。

何故、長宗我部盛親は元親存命時の前田利家と徳川家康の騒乱で前田利家に付き最後まで反徳川を貫いたのか。

全ては小牧・長久手の家康の去就が原因であったのだ。


「なるほど……俺が浅はかでした。やはり大納言とは余り関わらぬ方が?」


「うむ、そもそも殿下より徳川との同盟は禁止されておるからのう。要らぬ疑いをかけられたくなくばそれよりも増田殿や蜂須賀殿と関わった方が良い」


「承知致しました。ご助言感謝致します」


「うむ、まあ兄上はお主を目に入れても痛くない程に大事に思われておる。とにかくそなたは増田殿はともかく石田治部や大谷形部など奉行衆からは目をつけられておる。気をつけろよ」


「はっ、叔父上もお体にお気をつけくだされ」


真実を知ったは良いが信親にとってこれは非常に厄介な事になった。

元親が反徳川となれば家臣もまた反徳川の可能性が高い。

これは関ヶ原前には衝突は避けられないかもしれない。


「ああ、めんどくせぇ」


大高坂への帰路で信親はそうボヤくのだった。

ちなみに史実で釈明しに来たのは確か別の人です。

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