28話
ただいま関ヶ原に来ています。
本編で信親が着陣している場所にも行ってきたよ。
岐阜城が落城してまもなく徳川家康が重い腰を上げ出陣、自ら3万の軍勢を率いて9月14日に石田三成らの籠る大垣城にほど近い赤坂に着陣。
信親は手勢七千に与力の藤堂高虎の三千を右翼、加藤嘉明の三千を左翼とし松尾山麓に着陣し忍城攻めの際に共に戦った大谷吉継と睨み合った。
ちなみに盛親は史実通り伊勢方面の攻略を任された後、南宮山麓に着陣している。
そして9月15日早朝、開戦の火蓋は井伊直政隊の宇喜多秀家隊に対する銃撃により始まった。
「申し上げます、福島殿が宇喜多勢と交戦開始。藤堂殿より攻撃の許可を求める使者が参っております」
と桑名吉成の報告を受けた信親は采配を握る。
「藤堂殿に攻撃の許可を出せ!宇喜多勢は2万近いであろう、加藤殿は福島の援軍に差し向けよ」
「よろしいのですか……?福島殿のご不興を買うやもしれませぬ……」
「どうせいずれ自滅するなら今は助けてやった方が良いだろうが!先鋒の福留、吉田隊にはいつでも藤堂殿の後詰に回れるように備えておけと命じよ!」
「ははっ!」
的確に指示を飛ばす信親だが本当の懸念は松尾山にあった。
ここに布陣する小早川秀秋らは史実では西軍を裏切っているものの仮に信親の延命が歴史に影響を与えたとするなら史実通りにいかない可能性があるからだ。
それに備えて信親は三千程度は松尾山への備えとして兵を配した。
とはいえこちらはそれでも1万、向こうは五千程度、大したことは無いと信親は大谷吉継を過小評価していたがこれがとんだ間違いで藤堂勢は押しに押されてジリジリと後退し始めていた。
「ええい!高虎殿は何をしておるのだ!相手は小勢だろうが!」
「とはいえ藤堂殿の手勢は三千、向こうは五千。後詰を出しますか?」
「俺に言われなくても後詰くらい出せ吉成!それから直ぐに加藤勢をこちらに連れ戻せ!」
「しかし、今ここで加藤勢を撤退させれば福島殿からのご不興を……」
「だから何故福島の気をいちいち使わねばならぬ!ワシは高知24万石の太守にて羽柴土佐少将豊臣信親であるぞ!」
「もっ、申し訳ございませぬ!」
「親茂がいれば……」
桑名吉成が去った後、信親はボヤいた。
今回の戦に本山親茂は土佐に幽閉中の香川親和を見張るために高知城にいた。
改めて彼の重要性を痛感すると共に論功行賞によっては10万石を与えようと決めた。
「申し上げます!井伊直政様より伝令!松尾山の小早川勢へ大筒を撃てと!」
「おっ、大筒!?」
伝令の言葉を聞いた信親の家臣たちはどよめいた。
そのような事をすれば小早川勢を刺激させ今は動いていないものの一気に山を駆け下りて来るかもしれない。
「承知した、撃て」
「はっ?」
「小早川勢に向けて大筒を撃てぃ!さすれば勝ちはこちらの者よ!」
こうして松尾山に向けて大筒が放たれた。




