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シン 長宗我部転生記   作者: 三p
夏草の章
28/199

27話

使者の名は村越直吉と言い信親は初めて見る顔だった。

彼の顔からは汗がダラダラと流れており緊張しているのがすぐにわかった。

村越は上座に恐る恐る腰を下ろすと書状を広げた。


「内府様はお風邪を召しておられ当地への出陣の日程は未だにお決まりに非ず」


まあそうだろうと信親は思っていたが諸侯はそう納得するわけも無く


「なんのための使者かっ!」

「話にならぬわ!」


などと浅野幸長、福島正則、京極高知ら諸将は立ち上がり怒りを顕にし罵詈雑言を浴びせた。


「然らば……然らば申し上げる!先陣の諸侯の出陣未だなさらず、意志を鮮明にせざれば家康公の出陣はならず!こぞりて合戦の火蓋を切られませ!」


「まだ疑うのか!」

「いい加減になされよ!」


などと山内一豊、加藤嘉明も声を荒らげる。


「静まれ!なれば我らが美濃に攻めいらば内府殿は出陣されるということであるな?」


ここで黙っていた信親が立ち上がり村越を睨みつけて聞く。


「いかにも!直ちに美濃に攻め入りこれを落とすべし!」


「承知した!総大将代理として命ずる!池田侍従殿を大将とし細川、山内、京極、堀尾の軍勢はこれに従い岐阜城へ向かうべし!また福島殿を大将とし黒田、加藤、藤堂らの軍勢は竹ヶ鼻城へと向かわれよ!」


「あいやしばらく!何故ワシが支城を攻め輝政が岐阜城なのじゃ!」


と正則が文句を言う。

輝政の方はしてやったりとニヤニヤしている。


「池田殿は岐阜にて育ち岐阜城主、織田中納言殿はかつてより主従の関係にありご昵懇にしておられると聞く。ならば池田殿の方が適任かと考えた迄である!」


反論する信親に一瞬凄むもののここで収まる正則では無い。


「何を申すか!清洲から岐阜への道はここの領主のワシこそ詳しく、ワシが岐阜攻めに適任では無いのか!?」


「ふん!そなたは子供の頃は卑しい農民ゆえ地理に詳しいと思っているかも知れぬがワシは信長公より直に岐阜の落とし方を学んでおるのじゃ」


と嫌味を言う輝政。


「ほざいたな輝政!大恩ある信長公が築いた城を落とすのは恩を仇で返すようなものでは無いか!」


「何を申す!だからこそ、そなたのような余所者ではなくワシが落とす方が信長公もお喜びじゃろうが!」


「黙らっしゃい!ワシは内府殿と忠吉殿より大将の代理を任されておる!ワシの決定は内府殿の決定と心得、揉めている暇があればさっさと出陣致せ!」


と信親が福島も池田も大人しくなった所でやっと東軍先鋒五万は美濃になだれ込んだ。


岐阜城主織田秀信は信長の孫に恥じぬ戦をしてみせたが多勢に無勢、遂に降伏し自身の命と引き換えに城兵の助命を願い出たものの信親と池田輝政の取り成しにより出家し高野山へと蟄居した。

しかしこの信親の裁定は福島正則との間に確執を生じらせることになるのだった。

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