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シン 長宗我部転生記   作者: 三p
夏草の章
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25話

信親が家康の元に出向くとそこには井伊直政、大久保忠隣、そして徳川秀忠が皆々重い顔をしてこちらを見ていた。


「長宗我部殿……疑いたくは無いがひとつお聞きしたいことがございます」


井伊直政はそう言うと書状を広げた。


「先の石田治部らの挙兵に貴殿の弟君の長宗我部右衛門大夫殿が加わっているとの知らせにござる。まさかとは思うが貴殿も……」


と大久保が詰める。


「其は拙者の預かり知らぬところにござる。弟とはいえ既に別家を起こし一大名たる千熊……いや右衛門殿がどのような行動を取られようが拙者が口出すことではござらぬ。それに右衛門殿の烏帽子親であり舅の増田右少尉殿が治部殿らと行動を共にしているのなら大坂側に着くのは至極当然の事にござる」


「ちっ!小癪な!」


信親の言い訳に徳川秀忠が舌打ちする。


「内府殿と2人にして頂きたいのだが……」


その秀忠の嫌味を無視して信親が言う。


「よもや内府様と刺し違える気ではなかろうな!?」


「何を言う大久保殿!長宗我部殿に至って左様な事をされるはずが無かろう!」


と信親の側に立つ井伊直政。

やはり親しくしておいて正解だったようだ。


「内府殿と二人で話したいのだが?」


揉めている2人を尻目に信親が言うと家康が首を縦に振り他の者は全員退出した。

それを確認すると信親が話し始める。


「内府殿……我ら長宗我部と貴殿の縁は小牧の戦役の頃よりあるのはお分かりかな?そしてその折に我らが内府殿に裏切られたのも……」


「なるほど。それで貴殿のお父上はワシを避けられてきたのじゃな」


「左様、俺はともかく家中には父上亡き後も貴殿を快く思わない者は数多といた。しかし俺はその全てを貴殿のために粛清した……ッ!なのに俺を裏切り者と疑うなどここまでふざけた話が何処にあろうか!俺は小早川と吉川の内応も京極が裏切るのも全て知っているのですぞッ!」


この時点でトップシークレットの情報を信親が口に出したことにより家康に動揺が走る。


「はは……流石は元親公のご嫡男。何もかもお見通しという訳でござるか」


「それではお伺い致す。家族を追い父の意志を裏切ってまで内府殿に味方した男を内通者として未だ疑いますか?」


信親の鋭い眼光が家康を突き刺す。

タヌキと鯨の睨み合いはしばらく続いた。

しかし家康が折れた。


「はっはっはっ。ワシの負けじゃ!直政、忠吉を連れて参れ!」


家康が指示するとまもなく井伊直政が家康四男の松平忠吉を連れて入ってきた。


「忠吉、ただいま参りました」


「よう来た忠吉。こちらに居られる長宗我部殿はそなたの率いる軍勢の中で藤堂高虎に並ぶ知略を持ち最も信用できる方じゃ。このお方を父とも兄とも思い常に長宗我部殿の忠告には従うこと!良いな!?」


「心得ました!」


忠吉はすんなりと受け入れて威勢よく答える。


「長宗我部殿!貴殿は忠吉の参謀……副将としてどうか御指南して頂けるか?」


「心得た!必ずや内府殿がご到着される前に敵を一掃してご覧に入れよう!」


「頼もしきお言葉!必ずやッ、必ずや小牧の戦の詫びは致す!共にまた生きて会おうぞ!」


家康が信親の肩を掴み目を見て言う。


「応!」


信親も家康の肩を掴むと2人は暫し笑い声を上げたあと別れた。

こうして家康と和解した信親は松平忠吉、井伊直政と共に尾張へと向かうのだった。

しかしこれを面白く思わない男がいるのは未だ信親の知るところでは無かった。


大久保忠隣 徳川秀忠の側近

松平忠吉 徳川家康の4男、井伊直政の娘婿

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