128話
信親の許可を得た長宗我部秀親は全軍に攻撃を命令。しかし大坂側の反撃に会い戦線は停滞していた。
「ええぃ!なぜ落ちぬ!」
岡山に陣を移した秀親が床机を蹴り飛ばす。
「香宗我部や久武が見事にあの出丸に引っかかりましたな。守るのは真田信繁だとか」
河野親通が扇で真田信繁の守る真田丸の方を指す。
内心で通親は本来の自分のいる場所はあそこなのでは?という気がしてならなかったが、感情を押し殺していた。
「鴫野では上杉景勝が佐竹義宣相手に善戦しているようですが他はまちまちですな。やはり堀秀政が全軍の指揮を取っていると見て間違いありませぬ」
本山内記の報告を聞いて秀親は舌打ちする。
「孫から家を追い出された老いぼれの癖に!こうなれば余が自ら指揮を執る!」
「おやめなされ。それよりも調略など如何でございますか。伊藤長実なる者、既に私と通じておりまする」
「親高……余はそのような命を出した記憶はないぞ?」
「まあ良いではありませぬか。それで長実は何と?」
親通が秀親を抑えて親高に聞く。
「はっ。城内の火薬庫を爆破させその混乱に乗じて総攻撃をかけて欲しいとの事にござる」
「なるほど、火薬が無くなれば鉄砲は使い物になりませぬ。良き策かと」
吉良秀貞が言うと他の諸将も頷く。
「良し、任せたぞ」
と、伊藤長実と接触を始めた親高だったが……。
大坂城のある一室。
「中納言様、伊藤長実が敵形と繋がっているようにございます」
真田信繁の報告を受けて坊主頭の老人が腰を上げる。
「はぁ……豊臣譜代も信用出来ぬのう」
「如何なさいますか?」
「大野に申して討ち取るが良かろう。いや待て……捕らえて敵をおびきだすか」
「ではそのお役目、この信繁にお任せあれ」
信繁が去るとその老人はニヤリと笑う。
「乱世の生き残りの戦……とくと味あわせてやる」
そう言うと堀秀政は秀頼の元へと向かうのだった。




