122話
信親・親高の予想通りに突っ込んできた宇喜多・織田勢は撤退する本山勢ら長宗我部先鋒隊を追撃しながら黒田勢が並ぶ第一次防衛ラインへと到達した。
「秀家よ、これが戦というものぞ!」
そう言って信親が刀を振るう。
それを見て親高が怒号を上げる。
「放てぃ!!」
柵から並んだ大量の鉄砲が織田の軍勢に向けて火を吹く。
長宗我部勢の一斉射撃に織田の先鋒隊は一瞬にして屍とかした。
「ええい!設楽原の真似事か小賢しい!数の差で押し切るのじゃ!!」
織田秀信が怒りや驚きが入り交じった声を裏返らせながら吠える。
しかし経験も殆ど無い秀信がどうこうできるほど、状況は甘くなかった。
「進め、進めぃ!秀信に遅れを取るな!」
そう言って大老復帰を目指す織田秀雄が突っ込んできたせいで退路を織田勢は完全に絶たれたのである。
さらにその尾張織田勢も後ろから来た宇喜多勢で完全に退路を立たれてしまった。
「暫し遊んでやれ。あとは河野勢が佐竹を崩すだけよ」
信親がそう言って松尾山の方を見る。
その松尾山の麓を駆け下りた河野勢は毛利勢の後詰もあり息を吹き返し、佐竹義宣弟の佐竹義弘を討ち取り結城秀康の軍勢は長谷川勢に捉えられ動けずにいた。
「殿、我が方が優勢にございますぞ!」
「よし、休息させていた金子勢も動かせ!全軍でこのまま押し切るぞ!!」
一気に勝負にかかった親通に遂に佐竹義宣は耐えられず敗走。
こうなると結城秀康は長谷川・河野に挟まれる形となり壮絶な討死を遂げた。
「よーし、佐竹が潰れたならこのまま勝負に出る。柵を倒しこちらに呼び込んでやれ」
「ははっ!」
信親の命で鉄砲による迎撃を行っていた吉良、三好、吉田らの軍勢が柵を破壊するとじわじわと後退。それを追いかけるように織田勢が進む。
が……。
「進め、進め!可児才蔵、ここにあり!!」
福島正則の戦死後に織田家に仕えていた可児才蔵が先陣を切って進む。
しかし……。
「長宗我部の者どもよ!首置いてけ……っ!?」
ふと才蔵の体が中に浮き地面に吸い込まれる。
それに続く騎馬隊も地面に飲み込まれていく。
「なっ、なぜ消えるのじゃ!怯むな!!」
と、声を荒らげる秀信だが織田兵はどんどんと地面に消えていく。
「はははは、そろそろ頃合か!火をつけよ!!」
そう言って長宗我部盛親(右近大夫)が兵に指示を出すと兵士たちが織田兵を吸い込んだ穴に向けて火を投げ入れる。
瞬く間に火は穴中に広がり兵士たちの悲鳴が聞こえてくる。
「こっ、これが……戦……?」
「そうじゃ。ワシに逆ろうた者がどうなるかしかと見せ付けておかねばならぬ。しかしその業を担うのはわしじゃ。お前では無い」
火がついてしまうと織田勢は動けない。しかし後ろの兵士たちも詰まっているので後ろに戻ることも出来ない。
「よし、次じゃ。大筒放てぃ!」
続いてウィリアム・アダムスの手によって輸入されたカルバリン砲が織田勢を無慈悲に吹き飛ばす。
「これで暫くは宇喜多は動けぬ。さぁ……どうする秀家!」




