108話
宇喜多秀家から受け取った書状を上杉景勝は怪しげに開ける。
そして一通り目を通したあと、みるみるうちに顔が赤くなる。
「なんと!直江山城の持つ権限を制限せよじゃと!?これは内政干渉では無いか!」
「あれが越後侍従に要らぬことをするから会津征伐を招いたのじゃ。越後侍従は本来なら首を欲しいところだがこれで良いと申しておるのだ。しかも代わりに伊達政宗の所領の内、27万石を与えると書いておるではないか」
「豊家一の大大名になれるのだ。もっと喜ばれよ。それと、直江山城の処遇については追って我らに相談するように」
信親と秀家が冷たい目で景勝を睨む。
彼の周りに味方はおらず、景勝は黙って頭を下げることしか出来なかった。
「さて、上杉殿が片付いたところで奥州は先の通り伊達のみ減封にしてあとは手を付けず、次は徳川と前田よ。まずは前田だが利長は隠居させ能登22万石に減封、家督は利政に継がせる事でよろしいな?」
信親が言うと諸将も頷く。
この辺りの調整は既に秀家と信親の間で終わっている。
「で、徳川家だが家康は処刑するとして江戸中納言に関しては淀殿から助命嘆願が来ておる。某としては江戸中納言に家督を継がせ宿老の権利は剥奪、所領は240万石から相模・伊豆の25万石まで減封、結城宰相も減封と行きたいところだが……」
「流石にここまで減らすと徳川家臣の反乱も起きよう。結城宰相はひとまず本領安堵で良いのではないか?」
秀家が言うと信親も頷く。
もはや奉行衆や上杉景勝が付け入る隙は無い。
「では徳川家はそのような処遇で決定ですな。では次に新宿老の決定と参ります。徳川と前田を落とすということでここは東国と北国から1名づつ選びたいところですが……」
前田玄以がまとめようとすると信親が再度口を開く。
「せっかくじゃし宇喜多殿は関東に行かれてはどうかね?所領も今の倍にして東国の要となられよ。あそこは太閤殿下の身内でなければ務まらぬゆえに」
「むっ……ワシに関東に行けと申すか」
想定していなかった信親の提案に秀家が少し戸惑う。
しかし物心着いた頃には秀吉の養子として上方に居た秀家はあまり備前に思い入れは無く悪い話ではない。
「宇喜多様の功績を考えれば石高は130万石ほどがよろしいでしょう。所領は武蔵・上総・下総の3カ国でいかがですか?」
増田長盛が付け足す。
この3カ国のうちで結城秀康の所領を差し引けば丁度130万石で長盛はそこら辺の計算が全て頭に入っている。
「良かろう、ワシが東国を取りまとめてやるわ」
秀家が了承すると直ぐに長束正家がそれを地図に書き込む。
そして会議は本題の宿老を誰にするかへと移っていくのだった。




