104話
多分合戦パートより論功行賞の方が長いです
翌日、徳川軍の猛攻撃が再開された。
西軍はこれを受け止めつつ、ジワジワと後退し始めた。
「ほれ見たことか!大坂側が押されておるわ。やはり我らも徳川家に加勢して一気にこの戦のケリを付けましょうぞ!」
繁沢元氏が嬉しそうに言うのを見て小早川秀包がギラりと彼を睨みつける。
「ふん!うつけには戦が分からぬようだな。あれはそういう策じゃ。左様なことも分からんとはな」
「何を申す!ええい、もう許せぬぞ!手打ちにしてくれるわ!」
そう言って元氏が秀包に詰め寄った瞬間、後ろにいた末次元康が脇差を抜き元氏の喉元を突く。
「奸臣、繁沢元氏討ち取った!お主らもこのようになりたくなくば言動には気をつけよ!」
崩れ落ちる元氏を横目に秀包が福原ら重臣を怒鳴りつける。
「ふぅ……そこまで致すか……。どうやら決断する時が来たようだな。どうせこれも如水殿の策なのだろう。ならば勝敗は決まったも同然よ」
「そ、それでは!」
安国寺恵瓊の目が一気に輝くのを見て輝元はコクリと頷く。
「立花殿の加勢に向かう。本多忠勝の軍勢を分散させつつ、我らも引き寄せるぞ!」
こうして毛利勢は立花宗茂に説得された小早川秀包の繁沢元氏誅殺を気に動き始めた。
その直後、徳川本陣。
「毛利輝元め!裏切りおったか!」
毛利勢進軍の知らせを受け安藤直次が床几を蹴り飛ばす。
「騒ぐな。まだ堀秀政は動いておらぬ。それに向こうは後退しておる」
「何かの罠でしょうか?」
どっしりと構える家康に恐る恐る成瀬正成が聞く。
「その可能性もあるだろう。故に本陣の守りを渡辺守綱と服部党に任せておる。それに本陣後方には平岩勢も布陣しておる。安心せい」
が、例え平岩親吉であろうと渡辺守綱であろうと越えられない相手というものはある。
「も、申し上げます!本陣が攻撃されております!」
村越直吉によりその凶報は家康に知らされた。
「なっ、相手は誰じゃ!長宗我部の別働隊か!?」
本多正純が聞いたこともないくらいの大声を張り上げる。
「て、敵の旗印は六文銭!真田勢にございます!」
「なっ……!服部党はどうした!仙石秀久や森忠政を抑えに残しておろうが!」
家康自身も困惑していた。
真田の襲来など誰が予想出来ようか。
たった、4万石の真田昌幸など……!
「真田……真田……真田ァァァ!彼奴はいつでもワシの邪魔をしおる!すぐに迎撃せよ!」
こうして真田勢迎撃に徳川本陣が動き始めた。
「殿!徳川勢迎撃の構えを取りました!これで源次郎様の手勢は真っ直ぐ進軍できますぞ!」
徳川勢の先鋒と既に激突した真田勢の高梨内記が真田昌幸に言う。
「見事に罠にハマってくれたのう、家康!昌相、服部党はどうなった?」
「全て討ち取った。もはや家康の元に入ってくる情報は我らが流した虚報しか無いわ」
昌幸の盟友の出浦昌相の素波により既に服部党は全滅していた。
さらに家康にとって想定外だった平岩勢の襲撃を行っていたのは真田勢と先に合流していた武田・依田勢らである。
最後の最後にして家康は武田家の面々に天下を阻まれたのである。
「ほほう!真田を動かすとは見事なり如水!全軍反撃に出よ!まず狙うは井伊直政と松平忠直よ!進めい!」
すぐに真田襲来の知らせを知った信親は総攻撃を命じる。
長宗我部勢が動くと宇喜多も小西も島津も毛利もそれに続く。
戦況は一気に西軍の流れとなった。
「あーあー、内府はもう終わりだな。こりゃあ決まったか」
さて、丘に構える堀秀政はまだ呑気に茶を飲んでいる。
「殿、我らもそろそろ……」
「分かっておるわ監物。池田に使いを送れ。友とは戦いたくない故に兵を引けとな。池田勢の撤退を確認次第、山内と堀尾に攻撃をかける。土佐守は山内一豊を嫌っておったからのう。あれの首を渡して許して頂くとしよう」
「ははっ!」
こうして堀勢も攻撃態勢を取り知らせを受けた池田輝政は撤退、それを確認すると堀勢は一気に丘下の山内勢に襲いかかった。




