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シン 長宗我部転生記   作者: 三p
天下人の章
169/199

101話

そういえばこの間、岡崎の大河ドラマ館に行ってきました。

後で知った話なのですが時代考証の柴先生もその日に来館されていたようです。

展示は普通に面白かったですね。

複製ですが結構有名な史料も沢山ありましたし、オススメです。

唯一の悔いは名古屋の方に展示されてる森長可の遺言状を見に行く時間が無かった事か?

堀勢は戦場最北端の小高い丘の頂上に布陣していた。

麓では宇喜多秀家と徳川秀忠がしのぎを削っており、秀政はそれをボーッと眺めていた。


「父上!目下の敵は池田三左衛門の手勢四千!一気に全軍で山を駆け下りてこれを飲み込みましょうぞ!」


と、息子の堀秀治が熱弁するが秀政は耳をほじり聞こえないふりをする。


「何故動かぬのですか!天下分け目の戦いで我らは……!」


「若、殿は状況を見極めておられるのです。どちらに御味方すべきか」


見かねた堀直政がそう言うと秀治の目の色がスっと変わる。


「何を申される!私は土佐守様の娘を妻とし父上は土佐守様とはご入魂の間柄では……!」


「たわけ、徳川殿の方が付き合いは長いわ。それに対岸の古新なんぞ赤子の頃から知っとる」


「ですが既に相手方と交戦した以上、後戻りは出来ませぬ!私だけでも出陣致しますぞ!」


「若、お止めくだされ。殿のお下知があるまではそこで大人しく」


本陣を飛び出そうとした秀治だが直政に睨まれ子犬のように縮こまってしまった。


説明しよう。

何を隠そうこの堀秀政という男、徳川家康より密書を受け取っておりそこに書かれていた条件に揺らいでいたのだ。


その条件は越前・若狭・北近江の三カ国であり石高に直せば120万石にもなるとかならないとか。

信親は秀政に対して宿老に推挙するとしか言っていないので秀政からすれば家康の条件の方が魅力的なのだ。


そして似たような話は最南端に布陣する毛利輝元の陣でも起きていた。

吉川広家は死んでいたのだが、一門の天野元政、広家の兄の繁沢元氏、宿老の福原広俊・二宮就辰らが井伊直政・黒田長政らと内通していた。

対して主戦派の末次元康、小早川秀包、安国寺恵瓊らと熾烈な口論を繰り広げていた。


そのせいで本多忠勝、榊原康政の軍勢を一手に引き受ける羽目になったのは立花宗茂である。


「ええぃ!毛利勢は何故動かぬか!」


采配を握りながら宗茂は南側で動かない二万の軍勢を見て愚痴をこぼす。


そしてこの状況から見て分かるとおり、勢は東軍にあった。

それは家康自身もわかっており戦場を見てほくそ笑んでいた。

対する信親の方は……。


「ああ、毛利も堀も動かんのか……。こりゃあ終わったかもしれん」


史実を知る人間からすれば最も起きて欲しくない日和見する軍勢が出てしまったのだ。

しかも自分が親友と思っていた男ですら動かないのだ。


「そのような事でへこたれるな。お主の戦振りを見れば堀殿も動くじゃろうて」


「父上、そうは申しても見てくだされ。右衛門は井伊直政に押されております。初めは調子の良かった孫次郎もいつの間にか押し寄せてきた徳川の援軍に崩されました。五郎次郎に至ってはどこにおるか分かりませぬ」


「ならばワシが采配を採る!お前には任せられぬ!」


そう言って采配を奪い合う長宗我部親子を見て如水がニヤリと笑う。


「お2人とも御安心なさいませ。この戦、ただゆーっくりと戦って居れば良いのです。お互いに適度に消耗し明日まで待てばご武運が開かれましょうぞ」


「何を言うておるか!もう終わりじゃァァァ!」


ここに来て長宗我部信親、機能不全!!

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