100話
まさかの100話が決戦とは
9月15日、惜しくも史実の関ヶ原の戦いと同じ日に天竜川を挟んで宇喜多秀家・長宗我部信親率いる西軍と徳川家康率いる東軍は対陣した。
「此度の先陣は長宗我部の者でなければならぬ。そなたらもそう思うであろう」
そう言うのは河野親通。
前哨戦では手痛い反撃を受けたものの未だに多くの兵力を温存していた。
「先陣は既に宇喜多勢と決まっておりますが……何もしていない連中に花道を譲るのは大殿も良しとはされぬでしょうな」
「うむ、行くとしよう」
久武親直の了承も得た親通は鉄砲隊を率いて対岸に構える井伊直政の軍勢に狙いをつけた。
「今ぞ放てい!」
親通が采配を振るうと同時に鉄砲隊の鉄砲が火を噴く。
「あれは長宗我部の子伜か!こちらも撃ち返せ!」
直ぐに攻撃を察知した井伊直政が命じると井伊勢も銃撃をお返しする。
「ははは!長宗我部土佐中納言が弟、河野親通が一番槍は頂いた!引くぞ!」
そう言い残すとさっさと河野勢は後方へと戻って行った。
これに激怒したのは宇喜多秀家だ。
「おのれ、河野め!抜け駆けとは許すまじ!今すぐにでもあの小童を……!」
「もっ、申しあげます!敵勢が迫ってきております、旗印からして大久保勢かと!」
「大久保というと江戸中納言の側近か。仕方あるまい、全軍迎え撃て!」
こうして親通の銃撃により一瞬にして天竜川中央で戦いが始まったのだった。
「申しあげます。一番槍は河野勢とのこと。右衛門様にござる」
「おお!見事なり右衛門!先の汚名を晴らしたか!」
「しかし宇喜多様は大層お怒りのようですぞ」
喜ぶ信親とは反対に親茂は少し呆れている。
「そんな事をして宇喜多様が戦後になんと申されるか……」
「ふん!国衆上がりの宇喜多などに先を越されてたまるか!全軍進めい!」
信親の命令と共に井伊隊の横をくっついて離れない松平忠吉隊に津野親忠隊が襲いかかった。
兵力は松平隊が四千、津野隊が五千とほぼ互角だ。
が、今回が初陣の忠吉に対して親忠は九州・小田原・朝鮮と各地を転戦している。
今年で29と年齢的にも脂が乗り始める時期であり、忠吉の軍勢を上手くあしらっていた。
さて長宗我部軍の南側では小西行長率いる九州の奉行系大名と黒田長政が激突していた。
彼らの中でも特に奮戦していたのが石田勢を引き継いだ福原長堯である。
「兄上の仇を何としても取るぞ!徳川方は根絶やしじゃぁァ!」
福原隊と石田隊の残党を合わせて六千ほど。
その中には島左近を始めとした石田三成の旧臣たちも居る。
それぞれの思惑が入り乱れ、各隊が激戦を繰り広げる中、堀秀政はと言うと呑気に茶を飲んでいた。




