98話
さて、三河中入作戦部隊は勢いよく出陣し支城を落としつつ進撃したがやはり家康はこの動きを察知しており、まず襲われたのは羽柴信吉と長谷川秀一の軍勢であった。
瞬く間に壊滅した両軍は撤退、その報は堀秀政の元にも届けられた。
「殿、池田・森両軍から援軍要請が来ておりますが」
「捨ておけ監物。初めからこうなる事は分かっておる。我らは向かってくる敵を蹴散らすのみよ」
こうして撤退を開始した堀勢は追撃してくる榊原康政の軍勢を蹴散らし犬山城まで撤退したのだった。
が、秀政が撤退したせいで池田勝入・元助・森長可は戦死し両軍は壊滅した。
どう考えても責任は秀政の撤退にあるが帰陣した彼を秀吉は咎めることが出来なかった。
この時点で秀政の立場は秀吉、丹羽長秀に続いて織田政権でNO.3、なおかつ三法師を再度当主に据えてしまったので守役の秀政の権威もさらに高まっていた。
さらに官位は秀吉と同じ従五位下であり、現状三法師の代弁者でしかない秀吉は一門の羽柴信吉に責任を負わせ叱責することしか出来なかった。
この一連の出来事を思い出した秀政は親通の陣へと向かった。
案の定、親通の陣には島津豊久と増田盛次も居た。
「おお、方々お揃いで。先程はしてやられたな」
「これは堀様、このようなむさ苦しい所になにゆえ」
「はは。お主らに名誉挽回の策があるので授けてやろうと思うてな」
「いや、実は私もひとつ良い策を思い付いたので河野殿に提案しに参ったのです」
そう言って豊久が前に出る。
「ほう、それを先に聞かせてもらいたいな」
「はっ。軍勢を二手に分け一隊は信濃から甲斐に入り江戸を目指すのです」
自分が言いたかった事をまるっきり豊久が言ってくれたので秀政はニヤリと笑う。
「おお、それは良い!」
「島津殿、見事な策じゃ」
そう言って沸き立つ親通と盛次。
しかし呆れた顔で久武親直が入ってきた事で状況は一変する。
「そのような阿呆な策がまかり通るとお思いか?中入というのは危険でまともに成功しないものです。長久手の戦を見てみなされ、池田勝入も森武蔵守も戦死したではありませぬか。ねえ、堀様」
久武に同意を求められ仕方なく頷く秀政。
どうも親直という男は人を丸め込むオーラがあるらしく秀政もそれに飲まれてしまった。
「そっ、そうじゃな。中入はやめておけ。ちと用事を思い出したので必勝の策はまた今度」
こうして秀政はさっさと逃亡し親通達は中入せずに済んだのであった。
オマケ
家康「真田も後藤も寝返らないのはなんでじゃ!」
井伊直孝「大御所様、私が大坂方を調略して参ります。代わりに四国に五万石だけ頂けぬでしょうか?」
家康「良し、やってこい」
1時間後
盛親「四国に五万石貰えると聞いてやって来ました。大坂側の策や編成はここに」
家康「なるほど、こいつは豊臣家への恩義より所領が大事だったか」
あったかもしれない未来




