16話
「では親父殿、分国法の制定はお任せしましたぞ」
「うむ、お主も六番隊の大将としてしかと役目を果たせ」
渡海軍六番隊の総大将として四国の諸大名を率いることになった信親は隠居している元親に分国法を制定し国内の整備を任せた。
これが後の長宗我部百ヶ条である。
さて、信親は長宗我部盛親、藤堂高虎、池田秀氏、加藤嘉明、来島通総らの一万三千を率いて出陣した。
まず信親は藤堂高虎、加藤嘉明に厄介だった朝鮮水軍への夜襲を命じ見事これを成功させた。
制海権を獲得した六番隊のうち、信親は藤堂らを残し池田秀氏と共に毛利秀元の率いる右軍と合流し朝鮮に上陸した。
そして信親らは朝鮮を北上すると先に進軍していた加藤清正と合流した。
ここで大将の毛利秀元が信親の陣にやってきた。
卵かけご飯を貪っていた信親は立ち上がって一礼する。
「御大将、如何なさいました?」
「長宗我部殿、行厨の最中に申し訳ない……ってそれは……」
「飯に生卵と醤油をかけた飯でございます。宰相殿も如何かな?」
「拙者は遠慮いたそう……ところで相談がありまして参りました」
「相談……?田舎者に出来ることなどありますかな」
「はっ。加藤主計(清正)との事です」
「ああ……」
信親は福島正則とはそれなりに交流を持っていたし毛利勢に従軍している黒田長政とも食事を共にしたことがあったが加藤清正はどうも苦手であった。
冗談が通じずプライドが高く短気で将としては優れていても人としての器量に問題があった。
「先の戦では補給を考えず無理に突出し殿下のお叱りを受けているとか……。どうも嫌な予感がするのです」
「うーむ、目付の早川長政、垣見一直、熊谷直盛には相談したのですか?」
「あの者ら主計は自分勝手な男ゆえ勝手に潰されたら自己責任だとしか。譜代衆同士の対立には勘弁して欲しいものです……」
「うーむ、まあ流石に殿下に先に処分された事ですし主計も自重するのでは無いでしょうか?一応私も監視しておきます」
「忝ない、くれぐれもこの事は主計殿には御内密に」
さて、信親は加藤清正をずっと監視していたが前回の事で反省したのか加藤は大人しくしていた。
その後攻撃してきた朝鮮軍を打ち破った右軍は左軍と合流。
そこで信親は泗川に攻撃拠点を作る命を受けたのだった。