88話
物語の展開変更によりしばらく週2回ほどの登校となります。
申し訳ありません。
清洲城内の諸将は皆、イライラしていた。
というのも家康が全く軍勢を送らず、井伊直政と本多忠勝が目付けとして残っているだけだった。
「ええい!いつになったら内府様は来られるのだ!」
「左様!よもや我らを見捨てたのではあるまいな!?」
福島正則と加藤清正は本多忠勝に迫る。
「そのような事はござらぬ!必ずや内府様は起こしになられます!」
流石の忠勝も豊臣家でトップクラスに武勇に優れる2人に迫られると少し押されている。
そんな風に3人が揉めていると井伊直政が飛び込んできた。
「大変じゃ!尾張の各地が放火されておる!更に連中が清須を囲んでおるぞ」
「なにぃ!?」
正則らが天守から乗り出すと大軍が清須に陣形を構築し始めていた。
「むむっ!あの旗は治部の旗ではないか!彼奴にワシの城は落とさせぬぞ!」
正則からも石田三成の軍勢はしっかりと見えた。
どうも軍勢の指揮は三成のようだった。
「殿、土佐様からのご命令をお忘れなく」
「うむ」
島左近に言われ三成はコクリと頷き立ち上がる。
「全軍、このまま吉田へ東進開始!」
そう言って三成が軍配を振ると五万の軍勢は方向を転換し東へと進み始めた。
これには清洲城は大騒ぎである。
「吉田に向かうだと!?我が所領が戦場になるなど聞いておらぬ!」
「吉田が抜かれれば次は岡崎ではないか!」
「浜松とていつ攻められるか分からぬ!」
東海道の領主である池田輝政らが次々と立ち上がり喚く。
だが1番怒っているのは福島正則だ。
「ええぃ!ワシを放って吉田を目指すなど許せぬ!打って出て治部めの首を取ってくれるわ!」
「それが相手の策にござる。惑わされてはならぬ」
「左様。素通りさせれば慌てて戻って来ましょう」
黒田長政と藤堂高虎が正則達を止めようとしたが彼らは聞く耳を持たない。
「お主らは東海道に所領が無いから言えるのじゃ!ワシらは行かせてもらうぞ!」
「ワシは治部が目の前に現れたのにそれを逃すことは出来ぬ!」
そう言うと正則と清正は広間を出ていった。
それに続くように池田輝政、浅野幸長らも席を立つ。
残されたの藤堂高虎、黒田長政と本多・井伊両名だった。
「どうする……」
「どうするもこうするもござらぬ。我らはこの城に残り宇喜多中納言らの軍勢に備えると致す」
直政が言うと一同も頷いた。
こうして東軍は追撃軍四万と清須篭城軍一万に別れたのだった。




