74話
西ノ丸には続々と大名やその名代が集結した。
宇喜多秀家らは信親以下西国大名の到着に歓喜の声を上げた。
「土佐殿、お待ちしておった!貴殿は副将として私に御指南頂きたい」
「承った。それでこの戦の主導は治部殿かね」
「ええ、それにしても珍しい御方が居られるようで」
秀家の隣にいた三成が末席に座る如水を睨みつけた。
「安心致せ。クロカン殿は俺に仕えると言っておる。西国大名に関して文句を言うなら俺は降りるぞ」
「そういう事だ治部。申し訳ない、そちらの指揮権は貴殿に任せる。目付は増田にやらせよう」
「承知致した。当分の目標は伏見城か?」
「ああ。伏見城を攻めつつ残りの西国勢の到着を待つ。大谷刑部が北陸の抑えとして越前に向かってくれる」
「なるほど、こちらの方で小松宰相にも連絡しておこう。で、御方様と中納言様には?」
「既にお伝えした。公儀としては好きにしろとの事だ。まあ内府に上杉討伐の許可を出してしまったからな」
情けないと言いそうになったが直前で言葉を飲み込んだ。
そんなことを三成が聞いたらまたゴチャゴチャ言ってくるだろう。
「では早速諸将を集めて軍議を開くとしよう。色々とやらねがならぬ事もあるだろうな」
「うむ。この戦、日ノ本の歴史の中で最大の戦となろうぞ」
「ああ。そして勝つのは俺だ」
信親は関ヶ原のその先の事を想像しニヤリと笑うのだった。




