72話
とりあえず1600年まで書き終えたのでそろそろ新作も書き進めて参ります。
「兵と武装は如何程!」
「徳川様御一人にございます。刀も門番に預けると申されております」
「何を考えておるつもりだ……」
中島重勝が言うと他の家老たちも頷く。
「ここで我らに内府を斬らせて戦の大義名分を得るのが狙いじゃ」
「ならば乗ってやるわ!」
桑名勝光、福留儀重らが次々と主戦論を唱える。
「殿、ご沙汰を」
「分かった将監。いつでも雪崩込めるように広間の外に待機しておれ。俺と内府、2人で話す」
それを聞いて家臣達は何か言いたそうだったが信親の覚悟を汲み取り引き下がった。
そしてまもなく丸腰の家康が通される。
「徳川殿、身軽な格好で参られるとは我らも随分と信用されたものだな」
「貴殿らは闇討ちなどせぬと信じておりますからなぁ。それよりも此度の戦、どうか某に力を貸して頂けぬでしょうか」
「もはや俺の言う事を聞く西国大名など1人もおらぬ。それに貴殿は俺を討伐するのだろう」
「面目次第もござらぬ。年を取ると少しの事で頭に血が上るのじゃ。だからこそ、会津征伐の後は宿老の席を辞し関東は倅達に分け与えようと思うておる」
「なっ!?」
隠居宣言に戸惑う信親。
こんな事は史実で聞いていない。
「さすれば宿老筆頭は貴殿になる。紀州を加増し加藤清正の隈本は弟殿に与えよう。加藤や藤堂、蜂須賀、青木らを会津へ移封させその分は堀殿や丹羽殿、その他貴殿の一派が分け得られよ」
「……ッッ!」
次々と出てくる厚遇に言葉を失う信親。だが家康は手を緩めない。
「官位も大納言……いや内大臣の席をワシが辞し貴殿を推挙致そう。西国とは言わず若き秀頼君に変わって天下を差配されよ」
そこまで言われると信親もnoとはいえなかった。
「はっはっはっ、徳川殿は誠に太っ腹ですなぁ。承知致しました。西国大名を引き連れて会津征伐に参加致しましょう」
「長宗我部殿ならそう申されると思うておりました。会津でお待ちしておりますぞ」
普段通りに戻った家康は信親の肩を叩くとさっさと出ていった。
いつの間にか信親はただ頭を下げているだけだった。
「殿、如何なさいますか」
「将監、直ぐに四国勢と西国諸大名に動員をかけよ。徳川様と共に上杉を討つぞ」




