14話
悲しい事もあれば嬉しい事もある。
朝鮮出兵のうちに香宗我部親泰、親氏親子が病でこの世を去った。
そして年が明け信親念願の嫡男が生まれた。
生まれた子は祖父元親同様に弥三郎と呼ばれた。
弥三郎の為にも長宗我部家を必ず残そうとする信親であった。
かと言ってこの年に何か起きたかと言われたら何も起きていない。
ただ倭刀術を捕虜の明の人間から学んでいただけだった。
大名になった盛親は増田長盛らのサポートもあり大きな反乱などもなくスムーズに領国経営を進めていた。
その縁もあってかなり奉行衆と親しくなっていった信親であった。
そして翌年文禄4年、豊臣秀次が謀反の疑いで切腹しその近臣や一族など尽く処刑された。
そして秀吉の独裁制から徳川家康、前田利家、毛利輝元、宇喜多秀家、小早川隆景らの年寄衆の所謂大老と浅野長吉、前田玄以、増田長盛、石田三成、長束正家ら奉行衆との合議制に移行した。
かと言ってやはり田舎大名の信親には関係ない……という訳でもなく豊臣政権の後継者となった拾(秀吉嫡男)に生きた虎をプレゼントした縁から大層気に入られやはりこの年も奉行衆と親しくなったのだった。
ついでに言うとその甲斐あって石田三成らの口利きにより従四位下左近衛少将に任じられ高知少将と呼ばれるようになった。
翌年、これにはマズいと気づいた信親は黒田長政や池田輝政ら武断派の中でもまだ育ちがいい将と関わりを持ち彼らとも親しくなった。
そんなある日のこと。
「兄上!浦戸沖に!」
香川親和が信親の部屋に駆け込んできた。
「なんだ!またクジラか!?あれはもうやらんぞ!」
「ちっ、違います!南蛮船です!南蛮船が座礁した義にございます!」
「なっ、なにーーー!???」
浦戸に信親が到着した頃には多くの兵や家臣達が集まっていた。
皆、信親が来たのを見て頭を下げる。
「こら、ガレオン船だ。でっけぇなあ」
「兄上、ガレオン船とは?」
「南蛮……スペインとかの船だよ。船長を連れてこい」
間もなく家臣達によって船長らしき人間が連行されてきた。
「あー、ボンジュール。マイネームイズノブチカ、ドゥーユーネーム?」
と、ゴミみたいな英語(相手はスペイン人なのに)がもちろん通じるわけもなく間もなく日本語がわかるらしい船員が連れられてきた。
「ともかく、土佐に座礁した以上積荷は引き取らせてもらう。お前達は船が治るまで我々の監視下に置く」
これは日本の海事法に乗っ取ったものではあるが信親はそれよりも荷物をパクってあわよくば儲けようと考えていたのだ。
もちろん荷物を没収された船員達は抗議の嵐だ。
「黙れ!ご命令に文句があるのか!」
親和が刀に手をかけて船員たちを怒鳴る。
「待て、斬るのはやめろ。不味いことになる」
「何が始まるんです?」
「第一次大戦だ」
下手に家臣達が暴発してスペインとの戦争になっても困るので信親は渋々増田長盛を土佐に呼び寄せることになった。
この信親の嫌らしい行動が日本の宗教政策を変えることになるとはまだ誰も知らない。(本来信親は知っているはずだが転生して30年が経ったため記憶が薄れてきているらしい)