57話
再来年の大河ドラマが発表されましたね。
正直2年連続で文化人なのは何とも。
良くこういうのを擁護するのにドロドロの政治劇がどうたらって言う人がいますが、あれはその結果合戦となったってところまでが面白いと思うのでその擁護は厳しい。
ただ田沼意次や松平定信など葵の後半みたいなノリにはなりそうなので来年よりは期待できそうです。
三河吉田13万石を治める池田輝政は聚楽第に呼び出されていた。
その呼び出した主は輝政が最も親しくしていた男であり、なおかつ最も関わりたくない相手であった。
「吉田侍従、参りました」
「義兄上、よう来てくれた」
輝政を呼んだ男は豊臣秀次。
現関白であり輝政の妹婿である。
昔は義兄弟の契りを結び親しくしていたのだが、この男の誤った采配によって輝政は父と2人の兄を失った。
元は農民の子のせいで織田家の未来を守ろうと誓った仲間を輝政は一度に失ったのだ。
「何かございましたか?田中や山内に申せぬ事でも?」
「そうじゃ。彼奴らでは話にならぬ。この所、殿下の周りの大名共の動きが良くない」
「はて、考えすぎでは?」
「否、宇喜多中納言がこの頃は長宗我部中納言とよくつるんでおる。この意味が分かるか?」
「はぁ、前田派閥と親しい宇喜多様が西国派閥の筆頭格の長宗我部様と関わりを持つことでその両派閥が繋がることを関白様は憂いて居られるのですな」
義弟の心配性は輝政もよく分かっていた。
そのせいで家族を失った事も。
「左様じゃ。伯父上は拾殿に日ノ本を継がせたいに違いない。もしワシを討伐せよと申せば前田、宇喜多、長宗我部がこれに同意するのじゃ。さすれば徳川も蒲生も従うに決まっておる。どうすれば良い!?」
「考えすぎです。殿下がそのような事を……」
「考えすぎたくもなるのだ!お主にはわかるまい!!」
秀次が輝政の肩を掴み大声をあげる。
「ワシの伯父は天下人なのだ!その跡を継ぐワシがどれほど苦労しているかお主にはわかるまい!」
必死で訴える秀次。
しかし輝政の中で何かが切れた。
「ええ、分かりませぬ。ですが関白様にも父と兄を一度に失う悔しさは分かりますまい。それでは御免」
そう言うと輝政は呆然とする秀次を残して聚楽第を出ていった。
そしてその足で大坂城の堀秀政の屋敷へと入ったのだった。
「という事がございまして……」
「ははは。関白様も遂に頭がおかしくなられたか。否、元から頭はおかしいか」
秀政も秀次の事は大して評価していなかった。
やはり秀吉の血縁だけで引っ張ってきただけで農民上がりの小僧を織田家の次世代を担うべき存在のエリート達は軽く見ていた。
「もう勘弁してください!あれの愚痴をいつも聞かされてその度に父と兄上の無念が……!」
「まあ勝入殿と元助、あと勝蔵(森長可)の事は私も無念だと思っておる。そろそろ敵討ちと行くか?」
「はぁ……そのような事が出来るのですか?」
「出来るさ。又左殿や忠三郎の手も借りたくないが借りるとしよう。元より皆アレの乱暴狼藉には苦労していた事よ」
こうして堀秀政による秀次失脚計画が始まった。




