47話
小田原に到着した豊臣軍の数は20万を超えた。
秀吉はそこに一夜にして城を築き女房衆を集めて毎日のように宴会を行った。
更に北条にとって1番ダメージを与えたのは伊達政宗が秀吉の元に参陣し服属を表明した事だった。
これに北条側は完全に戦意喪失し遂に降伏。
ここに関東も秀吉の支配下に置かれたのだった。
「そういや堀久って元気にしてるの?」
撤収作業も一段落付いた頃、信親は長谷川秀一にそう聞く。
事実なら流行病にて堀秀政は病死しているからだ。
「ええ。京にて諸大名の奥方の我儘に振り回されていると怒りの文が。何かあったのですか?」
「いや、最近この辺りで病が流行ってるから京の事がふと気になっただけよ」
とにかくこれで堀秀政が生存していることが確定した。
その後1年、秀吉と不仲になっていた弟の豊臣秀長が病死、更に秀吉の嫡子の鶴松も亡くなり豊臣政権は大いに揺らぎ始めた。
「申し上げます。千利休殿が切腹させられた由にございます」
「ほう、あの爺さんが……」
近頃、父の跡を継いで信親の側近となっていた福留半右衛門政親からの報告を信親は茶をすすりながら聞く。
「鶴松様も亡くなられて豊臣家も一悶着あるやもしれんな」
「戦にございますか?」
「ああ。ただし内戦ではなく外征かね。殿下なら悲しみを紛らわす為とか理由をつけてどこぞに戦を仕掛ける気がする」
「武者震いがしますな。戦は無くなったものと思うておりました」
「いやー。戦は金がかかるからもうあんまりしたくないんだけどなぁ」
お家の規模が大きくなり動員兵力も多くなれば成程に戦の際の出費も増える。
元々豊かな土地ならともかく四国は現在も開拓中でありその土地から毎回毎回三万人もの大軍勢を送り出すのはなかなかに厳しい。
大名になってから信親はそれをつくづく痛感していた。
「戦は面倒じゃなぁ」
自分でも絶対に言わないと思っていた言葉を呟いた信親であった。




