41話
「進め進めェッ!人質を助けるのじゃッ!!」
そう言って突撃した仙石勢はかなりの勢いで島津軍を抜いて行った。
ここはさすが仙石秀久と言ったところであったが案の定、島津の大軍に逆に包囲された。
「豊臣の者は皆討ちとれぃ!九州に足を踏み入ればどうなるか教えてやれ!」
島津家久の号令で島津軍はどんどんと仙石の軍勢を殺していく。
あっという間に仙石軍は千人ほどまでに減ってしまった。
「くっ!逃げてはならぬ!人質を見捨てはっ!!」
「申し上げます!香宗我部安芸守様の軍勢、接近しております!」
仙石勢を包囲する島津軍の脇腹に親泰の軍勢が突っ込んだ。
しかし島津軍はこれを予想しており親泰の背後に新納忠元の軍勢が迫る。
しかし少しの隙間を親泰は見逃さなかった。
「逃げるのじゃ仙石殿!貴殿が死ねば豊臣家は小牧・長久手の折の汚名をまた着せられる!逃げるのじゃッ!!」
「くっ!!すまぬ、香宗我部殿!!」
秀久は少数の家臣に守られて府内へと撤退する。
「逃がすな!奴を討とれぃ!」
「お主の相手は私だ!!」
仙石を追いかける新納忠元の軍勢に親泰が立ちはだかる。
「兄上……殿……。楽しゅうございましたぞっっ!」
こうして香宗我部親泰以下、香宗我部勢はその殆どが全滅した。
幸い親泰の子の親氏や家老達は府内や土佐に残っていたため、香宗我部家は無事だったが府内城の豊臣軍に与えたダメージは相当なものだった。
間もなく広間に仙石秀久がやって来た。
ボロボロになり平伏している姿はなんとも情けなかった。
「きっ……貴様っっ!」
今にも斬りかからんとする親通以下、長宗我部の重臣を親茂と久武親信が必死に抑える。
「そなたの処分は殿下にお任せする。今は自分の役目を果たされよ」
「はっ、申し訳ございませぬ!!」
平服する仙石を横目に信親は教会に入る。
「はぁ、父上に見せる顔が無いわ」
「とはいえ香宗我部殿のお陰で我が方の損害は思いのほか大きくありません。島津としては全軍で突っ込んできて欲しかったでしょうな」
「お主は冷静だな、将監」
「それが役目なので」
「とにかく味方の士気を立て直す必要がある。何か良い策は無いかね」
「夜襲を仕掛けましょう。今なら島津も少したるんでおるかと」
「同じことを考えていた。隼人にやらせよう」
その日の夜、島津軍を福留儀重率いる軍勢が襲撃。
親泰らの遺体を取り返した上で島津軍の1部に損害を与え豊臣軍の士気は多少なりとも回復するのだった。




