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16-7


僕が革命軍を客人だと言ったため、誰も革命軍に疑いの目を向けることはなかった。前もって城に申請を出していたこともあり、彼らをスムーズに迎え入れることに成功した。

何の問題もなく王の間まで革命軍を案内すると、王はいつも通りの人をバカにしたような態度でわらっている。まさか自分が殺されるなど思いもよらなかっただろう。カルバルに首を斬られても尚、あの笑顔が張り付いたままだったのだから。

それからは、まるで地獄を見てるかのような悲惨な現場だった。名を縛れない王族たちは為す術もなく殺されていき、王を守ろうと戦う騎士達も念密に訓練された革命軍の前では無力で悲鳴をあげながら殺されていく。


「人の命を犠牲にしてまで、お前はその欲を満たしたかったのか?」


皇太子は最期にそう尋ねた。

僕がコクりと頷くと皇太子は、顔を歪めて笑った。それは恐怖からなのか呆れからなのかは、もう今となってはわからない。


「この気違いが。」


カルバルによって首を斬られる瞬間、そう告げた。


「終わったぞ。後はお前の出番だ。」


スイ達がサルジアに向かって、7ヶ月はたっていた。魔導師様から聞いていたシヴァ神を閉じ込めている地下への隠し通路へと向かう。

僕が勇者になる時が来た。

シャーペンを握りしめて地下へと一歩踏み出そうとした時、後ろからどうしてと悲痛な声がした。

魔導師様だった。


「予定よりもお早いお帰りで。」


「そんな事今はどうでもいい。何故、王を…。」


「申し訳ありません。一刻も争うので行きます。詳しいことは革命軍に聞いてください。」


魔導師様の顔を見ずに僕は進む。ヤマトと何度も呼ぶ声がしたが、停まることはできない。僕はもう後戻りできないのだから。

後悔をしている暇などない。スイがこの世界を立ち去るまでがタイムリミットなのだ。二ゲラが少しは足止めに使えるはずだ。

地下に降り始めてから3日程は何もなかった。念のため持ってきた食料と水がまさか役に立つとは思ってもいなかった。

食料もそろそろ底を着いてきた頃、やっとシヴァ神に会えた。異形としか言えないその姿は、まさに勇者に倒されるべき敵としてふさわしい。

僕はこの為に武術を学び、体力を付けてきた。返り討ちにならないように慎重に攻撃していく。危なくなれば、身を隠し、隙を見て攻撃をする。シヴァ神は僕を殺す意思がないのか、僕が身を隠すとゆっくりと地上へと進み始める。そんな事を何日も続けていき、そろそろ僕自身に限界がきた。

いくら攻撃してもシヴァ神にはまったく効いていなかった。何度もシャーペンで目を狙っていったが、なかなか目を刺すには至らなかった。

僕によって死んでいった者達の顔が頭をよぎった。

僕が彼らを殺した。彼らの死を無駄にさせた。僕は許されないことをした。

後悔などしている暇などないと思ってたし、後悔などしないと思っていたが、疲労感からか、僕は罪悪感と虚しさでいっぱいだった。

この世界は僕によって滅びる。

その事実が頭を支配する。


ごめんなさい。すみません。許してください。


シヴァ神の首が目の前から飛んでいく。赤いしぶきが僕の視界を征した。


僕はやはり勇者になれなかった。


僕を救った二ゲラが勇ましく、神々しく、特別に見えた。



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