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16-3


カルバルに連れられ、城下町から少し離れた森にある小屋に行くと僕よりも少し年下の少年がいた。少年はカルと名乗った。赤毛の癖っ毛でこの世界ではどこにでもいそうな容姿ではあったが、何となく皇太子に顔立ちが似ている。そのせいか、高貴な雰囲気がした。


「ヤマトタケヒト?変わった名前だね。」


カルはそういうと青い石を持ちながら、じーっと何かを念じるように僕を見つめてからいきなり、避けるなと声をあげて僕の頬目指して殴ってこようとした。僕は思わず、後ろに下がり、カルの攻撃を避けてしまった。いきなり何をするのだと怒ろうと思ったが、カルからは悪意を感じられず、ただ呆然としてしまう。そして、そんな僕の様子を見たカルは諦めたように首を横に振る。その一連の流れを見ていたカルバルが僕を睨み付けた。僕はそんな2人の行動の意味がまったく理解できず、うろたえてしまった。僕を睨み付けたままのカルバルが懐から刀を取り出すとカルが僕を庇うように違うよとカルバルに声をかけた。


「彼は嘘を言ってないと思う。ヤマトタケヒトは彼の本当の名前だよ。でも、名を縛ることは出来ないや。」


「どういうことだ?」


「確かに名を縛ろうとヤマトタケヒトに呼びかけても拒否反応は起きない。まるで二ゲラみたいだ。いや…二ゲラの時とは違う。二ゲラは僕の命じる声が届くけど、彼には一切届いていない様子だ。こんなこと、初めてだ。」


名を縛る?僕はその言葉にすぐに王族を思い浮かべた。


「カルは王族なのかい?」


僕の問いにカルは笑ってみせる。


「この石が奴隷石だから使ってみただけだよ。」


「それは奴隷石じゃないだろ。確かに奴隷石のように青くはあるが、奴隷石は製作時に奴隷とする相手の名を念じながら魔力を込める物であって、拒否反応の時は赤く光るし、正常に機能した場合は今よりも青く光る。まぁ、僕の場合は例外かも知れないけど。

カル、今さっき僕の名前を知ったばかりの君が奴隷石を前もって用意することは出来ないはずだよ。そもそも奴隷石を製作することが出来るのは、唯一名を縛ることが出来る魔法を持つ王族だけだしね。」


カルは僕の説明に何も反論せず、僕を警戒するように怪訝な顔をした。


「君はお城の人?カルバルさん、一体どういうつもりでこの人を連れてきたの?」


「協力者になりうると思ってな。だが、まさか名を縛ることが出来ないとは思いもしなかった。」


ここでようやく僕は彼らが革命軍であるのだと理解した。とんでもない所に来てしまったと、そう後悔したがもう遅い。僕はどうやってここを切り抜けるのか考えた。


「僕は確かに城の人間だ。魔導師様の保護の元、生活している。僕がいなくなると、間違いなく魔導師様が僕を探すはずだ。」


我ながら何という他人任せな脅し文句なんだろうと情けなくなった。カルバルとカルはお互いに顔を見合わせてから、ふんと鼻で笑った。その様子を見て、僕は情けないだけでなくあまり効果のない脅し文句だったのかとショックを受けてしまった。勇者どころかこれでは、まるで小物だ。


「魔導師に保護されている、それが名を縛れない理由か?」


カルバルの質問に僕は、間違いではないが正解ではないと答えた。

名を縛れない理由は、おそらく僕が異世界人であるからで、異世界人だから魔導師様が保護してくれている。そもそも異世界人を魔導師様が保護してくれるのは、罪悪感からであって名を縛れようが縛れなかろうが関係ない。

カルバルは何かを考え込んでいるのか黙ってしまった。カルは少し戸惑ったように僕を見ている。


「異世界人だから名を縛れない…?この世界の者じゃないから、この世界の常識が通用しないってこと?」


カルがそう僕に尋ねたので、僕はコクりと頷く。すると黙っていたカルバルが成る程と小さく呟いた。


「二ゲラもそういうことか。」


カルもハッとしたように目を見開いた。先程からこの二人の間にたまに登場する二ゲラとは何者なのか。僕は気にはなったが、とても聞ける雰囲気ではないので、何も尋ねないでおく。


「ヤマトよ、少し頼みがある。」


カルバルはにやりと笑い、そう僕に言った。



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