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◆◆◆


地下へと降り始めて多分6時間は経った。

地上の光が恋しい。しかし、俺が再び地上の光を浴びることはずっと先の話で下手したらもう二度と訪れることはない未来かもしれない。

せめて最後はニゲラではなく、神楽陽一として死にたいが、そんな願いも虚しく16年という短く、悔いしかない人生の幕を閉じるのだろう。蓋をしていた元の世界への想いが俺を余計に苦しめた。

バタン、ガタンという物音が聞こえて、俺の最期が近付いて来ているのが分かった。

ひっそりと音のする方へと近付き、うわぁと何とも言えない感情が沸き上がる。

手が4本もある無表情の仏像顔からは想像できない速さで動いているなにかと、武道の組み手のように戦うヤマトの姿が見える。ヤマトの相手は十中八九シヴァ神だろう。その2人の戦闘シーンを見て、俺はやっぱりここは異世界だなと実感した。イメージはファンタジーというよりホラーの世界だが。

ところで、ヤマトの右手に握られている武器、短すぎないか?というか、おそらくそれは武器じゃないだろう。

元の世界で文字を書くときに使う道具。あの…てっぺんの、たしかノックだっけ…を押すと消ゴムで消すことが出来る黒い芯が出てくるやつ。ノックを外すと芯が補充されるやつ。そして、芯の先が尖っていれば文字が書きやすいやつ。………。名前は……。シャープペンシル。そう、シャーペンだ、シャーペン。

たしか、シャーペンって相手を傷つけることを目的に作られた物ではないよな?殺傷能力は極めて低いはずだよな?俺の知ってるシャーペンは紙に文字を書くことが主な目的とされているもののはずだ。

そんな疑問を抱きながら、暫しヤマトとシヴァ神の戦闘を観戦していた。

やはり殺傷能力が低すぎて、シヴァ神に与える攻撃はほぼNOダメージ。倒す気あるの?やる気あるの?ほら、だんだん押されてきてるじゃん。手が4本もあるから対人よりも対応難しいのね。あ、あー、、腹パン頂きました。咳き込んでる暇ないよ。早く防御して。攻撃して。殺されちゃうよ。こりゃあかん。だいぶあかん。あかん過ぎるよ。

俺は腰の刀を抜いてシヴァ神の首を狙った。その間、相手は神様だから、初めての殺傷だからとかそんな思考はどこかへ置き去りにしてしまっていた。ただ、ヤマトを死なせてはいけないというそんな使命で動き出したのだ。


スパン。


とても良い音とともに大量の血のしぶきが出た。


ガタン。


首を失ったシヴァ神の体は尻餅をつくように後ろへ倒れた。返り血を浴びながら、ヤマトの方を見るとヤマトはポカンとしていた。正直俺もびっくりしている。まさか生まれて初めて他人の首を斬ったというのに、こんなにあっさりしていて、呆気ないなんて思いもしなかった。終わった後の感情に罪悪感が含まれないのが自分でも意外で、自身の狂人ぷりを実感せざるをえなかった。


「か、神楽くん?どうしてここに?いや、それよりも何で君はその剣でシヴァ神を倒せたんだ?」


驚きなのか、恐怖なのか、どちらかは分からないが、ヤマトは震えていた。


「えっと、ヤマトのお陰で隙ができたから?と、とりあえず、シヴァ神、とったどー!!」


無理やりテンションをあげようと声を張ってみたが、ヤマトはノリが悪いのか乗っかって来ない。本来の俺のキャラじゃない対応をしたせいでめちゃくちゃ恥ずかしい。せめて乗っかってくれてたら、俺の心は救われたのに。


「立てるか?ほら、もう戻るぞ。再び地上の光を浴びることが出来るなんてお互いによかったな。」


俺は帰り血でぐじょぐじょの手を差し出し、ヤマトを立たせる。ヤマトは流されるままに立ち上がったがすぐに、そうではなくて!と否定した。


「その剣はこの世界の物だろ?どうしてその剣でシヴァ神を倒すことができたんだって問いだよ!」


「ちょっと何を言いたいのか分からないが、終わったんだから後で考ようぜ。今は地上の光が恋しいから、早く帰ろう。」


ヤマトは諦めたのかふーっとため息をつくと俺と共に歩きだした。いや、普通に考えてシャーペンよりも剣の方が倒せる見込みあるだろ?俺は何故、数ある武器の中でシャーペンをチョイスしたのかを知りたい。とにかくお互いにいろいろと質問はあるが、地上に出ることが先決だ。俺たちは無言で降りて来た道を歩いていった。



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