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真っ向勝負のしかけかた!  作者: 美濃由乃
意気地なし
7/12

見せろよ漢気


「ぁ、あの、よ、よければ、どこがダメなのか、教えて頂けると」


 一生懸命書き上げたラブレターに、圧倒的なダメ出しをされ、満身創痍になりながらもなんとか一命をとりとめた僕は、最後の力を振り絞って、改善案をお聞きすることにした。


「ん~内容云々より、アンタ葉山さんのこと、どれだけ知ってるの?」


「え? 葉山さんのこと、ですか?」


「葉山さんの趣味は?はまってる事とか、よく聴いてる曲とか、好みの食べ物とか、とりあえずなんでもいいけど、何か知ってんの?」






 ……し、知らない!


 僕、葉山さんのこと全然知らない!


「……その感じだとほとんど知らないんでしょ。そんなんで告白しようなんて、アンタ恋を舐めすぎなのよ!」


 ビシッと指を刺される。流石はギャル!恋愛マスターだ!確かに、相手のことをなにも知らないのに、好きだと言っても説得力に欠ける。なら、これから僕がすべきことは一つ!


「僕、今から葉山さんを影ながら観察してきます!」


「アンタばか!やめなさい、ストーカーで捕まるわよ!そうじゃなくて、このくらい少し話しをすれば分かることでしょ、それが分からないってことはアンタ、恥ずかしがってほとんど話しもしたことないんじゃないの?」


 まさしくその通りで、僕が葉山さんと話しをしたのは、掃除を手伝ってもらった時の一回きり。それ以外は恥ずかしくて挨拶すらできた試しがない。


「そんな相手からいきなり手紙が来たところでさ、怖って思われて終わりよ。よっぽどイケメンでもない限りキモがられて即終了、ご愁傷様って流れが目に見えてるわけ、アンタ自分がイケメンに見える?つまり、手紙の出来の前から勝負になってないってこと、おわかり?」


「ぉ、ぉお、ぉ……」


 目の前が真っ暗になった。セーブポイントから、やり直し、ます。


「言っとくけど、別にバカにしてるわけじゃないわよ。無謀だって教えてあげてるだけ、本当に付き合いたいなら、もっとなりふり構わず本気になりなさい」


 宮永さんの歯に衣着せぬ言葉は厳しい現実を僕に突きつけてきた。今だけで何度泣きそうになったかわからない。


 けれど、真剣に相談にのってくれていることはわかっていた。


 今日初めて話しをした僕のために、真面目にアドバイスをしてくれている。揶揄われているわけではない、それがわかったから、僕は逃げ出さずに宮永さんの話しを聞いていた。もし、恋愛経験豊富そうな宮永さんが協力してくれたら、僕も立派な告白が出来そうな気がする。僕は意を決して宮永さんに相談してみることにした。


「あの、宮永さん。よければ僕に、これからも恋愛のアドバイスをしてくれませんか?」













「やだ。めんどい」


 見事に断られました。


「じゃ、あーし帰るから」颯爽と立ち上がる宮永さん。引き止めようとしたけれど、あんなに見事に断られては僕にはもう、なすすべがなかった。


 あ~あ、どうしよっかな~告白やめよっかなぁ。どうせ告白してもフラれるのは目に見えてるし、僕はどうせ、教室の隅で密かに生きていくのがお似合いなんだ。ウジウジうじ虫みたいにしていたら、とっくに帰ったっ思っていた宮永さんは、まだ教室から出て行っていなかった。



「アンタさ、今情けないよ。男なら逃げ道作らず真っ向勝負してみなさい」



 今度こそ宮永さんは帰っていった。


 最後に宮永さんに言われた言葉が僕の頭の中を駆け巡る。


 情けない、男なら、なんて言われても、僕は今までの人生ずっとこうだったんだ。なよなよしていて、内気で根暗なのが僕。


 そんなんだから、友達も少ないし、学校でも寂しい生活を送っている。


 休み時間に話しをする相手もいないし、お昼休みに一緒にご飯を食べる人もいない、部活にもはいってないし、一緒に帰る友達もいない、休日はお出かけする相手がいないからいつも家で過ごしてる。


 けど、僕にはそれが普通のことで、今までずっとそうだった。


 そんな僕がクラスの美少女に告白なんて、大それたことを考えたのが間違いなんだ。


 僕は今まで通り、教室の端で静かに目立たない生活を送っていればいい。


 みんないい人たちだ。誰も話しかけてはくれないけど、それでも虐められることはなかった。なら、それでいいじゃないか、陰キャにしてはじゅうぶん幸せだ。多くを望みすぎると罰が当たる。


 そうだ。これまで通りで、いいんだ。

 僕は、根暗らしく、目立たない学校生活を送ればいい。


 葉山さんのことも、諦めて、分相応に……



「……」





――――――――




「お、おはよう!ございます!!!」


「「「!?」」」


 翌朝、僕は今までの人生で一番大きな声で挨拶をして教室に入った。


 教室にいたクラスメイトたちが、いきなりのバカでかい声に驚いて僕を見る。その中には席で読書をしていた葉山さんもいた。


 みんなの視線が突き刺さる。いつもは目立たない根暗の僕が大声を出したことで余計に注目を浴びている。


 心臓の音が五月蠅い。脈が速すぎて破裂しそうな気がする。

 それでも僕は一歩を踏み出す。


 足がガクガク震えて膝が笑っている。


 手と足が一緒になっているけれど、うまく治せない。


 恥ずかしい。きっとみんなに笑われてる。


 今すぐ教室から飛び出して逃げ出したい。



 でも――


 


 ――今日は逃げない!


 僕は自分を変えたかった。


 今までのまま、仕方ないと諦めたくなかった。


 けれど、何もしないで挑むのは無謀だってこともわかった。


 だから僕は、もう一度お願いしようと決めた。


 男らしく、逃げ道なんて作らずに、真っ向から!


 ようやく目的地までたどり着いた僕は、相手の目を真っすぐに見つめて真っ向からお願いした。



「宮永さん!僕に恋愛の仕方を教えてください!!!」



 一瞬の静寂の後にざわめく教室。周りから「は⁉ 何言ってんだ?」「え?今のって告白?」「いや、朝から何言って、ていうか誰だっけ?」等々、たくさんの声が聞こえてくる。それは全部僕に向けられたもので、遠慮のない視線と言葉が僕の身体を突き抜けていく、その度に僕は怖くなって、膝から崩れ落ちそうになるけれど、歯を食いしばって、宮永さんの目を見続けた。


 宮永さんは何も言わない。座ったまま、真剣な目で僕を見返してくる。まるで、僕の本気を確かめるみたいで、僕は意地でも目をそらすもんかと目を見開き、乾燥して涙が出てきても目をそらさなかった。


 どのくらいそうしていたかは分からない。


 僕には、何時間にも感じた長い時間だったけど、実際には数秒程度だったのかもしれない。とにかく僕にとって長い時間が過ぎた頃――




「……ちゃんと漢気あんじゃん。ビシバシ指導するから覚悟しなさいよね」


 そう言って笑った宮永さんは、世界が浄化されるくらい可愛かった。


 つい見惚れてしまったのは内緒だ。



 こうして、宮永さんによる恋愛指導が始まった。僕は、憧れの葉山さんに告白するため、一生懸命自分を磨いて、もっと男らしくなろうと決意したのだった。

ここまでが序章という感じです。

このあとは徐々に熱血展開にしたい!という意気込み。

次は明日の20時頃投稿します。

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― 新着の感想 ―
[一言] 1話の冒頭かと思ってしまった( ̄▽ ̄;)
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