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真っ向勝負のしかけかた!  作者: 美濃由乃
意気地なし
5/12

ラブレター大作戦


 自分でもびっくりするくらい度胸がなかった僕は、恋をして大胆になった程度では、好きな人に声をかけることもできませんでした。


「はぁ……」


 自分の情けなさに打ちひしがれた僕は、ふらふらとした足取りで図書室をあとにした。葉山さんは僕に気が付くこともなく、今でも読書をしているはずだ。


「はぁ」


 僕は自分が情けなかった。


 まる一日かけてチャンスを伺っていたのに、チャンスが来るたびに僕は、人目が気になるだの、風景を壊したくないだのと、何かと理由をつけては、葉山さんに声をかけるのを止めてきた。これではただのストーカーだ。


 散々、御託を並べたけれど、声をかけれなかった理由は単純で、いざ、葉山さんと話をするとなると、身体中が緊張で震えて動かなくなった。



 怖かった。


 告白して、葉山さんから何て言われるのか、それを考えただけで、僕は一歩も踏み出せなくなる。


 単に振られるだけならまだいい、それだけじゃなく、いろいろと罵詈雑言を言われたらどうしよう。例えば「話しかけないで、臭いわ」とか「気持ち悪い、それ以上近寄らないで」なんて葉山さんに言われたら、僕は、間違いなく自分の手で人生を終わらせることになるだろう。


 要は僕のメンタルがチキンすぎてヤバいってこと。

 こんな調子じゃ、好きな人に想いを伝えるなんて、夢のまた夢。大人しく諦める方が身のためかもしれない。


 うわぁぁあああ、でもそれも嫌だぁあ!

 振られてもいいから、葉山さんに想いだけは伝えたい……嘘だ。本当は葉山さんと仲良く、というかお付き合いしたい。そのためには、自分から告白しないと何も始まらない。


 あぁ~あ、何かいい案はないだろうか……



「……はっ⁉」その時、僕に電流が走る!


 直接告白する勇気がないなら、手紙を渡せばいいじゃない。


 そうだ! ラブレターだ!



*******



 教室に戻った僕は、さっそく葉山さんあてのラブレターを書くために、ノートのページを綺麗に切り取った。可愛らしい便箋とかを使うことも考えたけど、僕が可愛らしい便箋を出すなんて、ちょっと気持ち悪い気がして止めた。


 放課後になってしばらく経つ、今の教室には僕しかいなかった。

 これなら誰も気にすることなくラブレターを書くことができる。

 僕は一生懸命に、自分の気持ちを言葉にすることに集中した。



『 葉山さんへ

 突然のお手紙失礼いたします。クラスメイトの戦野 千歳です。

 この間は、掃除当番を手伝ってくれてありがとうございます。

 僕はその時、葉山さんの優しさに触れて、あなたのことが好きになってしまいました。

 いきなりこのようなことを言われても困ってしまうと思います。すみません。

 それでもこの想いを伝えたくて、手紙に書きました。

 もし、僕の想いを受け入れてくれるなら、お返事が欲しいです。

 よろしくお願いします。』



「ふぅ、できた」


 気が付けば、外が暗くなり始めていた。

 ラブレターを書くのに夢中になりすぎて気が付かなかった。放課後の教室は誰もいなかったから、それだけ集中して書くことができた。「ぅう」とか「いや、ここはもっと情熱的に」とか「あぁ~」とか、書きながら独り言を言っていたけれど、それも一人だったから問題はないし、短い文章ではあるけれど、しっかりと気持ちをかけた……と思う。


 たぶん、変ではない……はずだ。 きっと……。


 ぁあああああ、やっぱり不安になってきた。


 あとは、できたラブレターを誰にも見られることがないこの時間に、葉山さんの下駄箱に入れて帰るだけなのに、一度できてしまった不安の種は、僕の中でどんどんと大きくなってしまっている。


 これじゃあ、自信がなくて、せっかく書いたラブレターも渡せなくなっちゃいそうで、せめて――


「せめて、誰かに誤字とかがないか確認してもらえたらなぁ」


「んじゃ、あーしがチェックするけど」


「ほんとうですか? いやぁ~助かります。ありがとう、ございま……す?」



 いつの間にか、僕の前の席にはクラスメイトのギャルが座っていた。

次回ギャル登場!

明日6、7話投稿します!

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