表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍と華  作者: 達磨
1/1

死刑

「なあ、おい」


煩い


「なあってば」


煩い


「おい、聞けよリン」


「何だよ煩せえな」


「俺達これからどうなると思う」


「お前はそんな下らねえこと聞くために俺を起こしたのか?」


「下らねえことねえだろ? 俺達の未来についてなんだから」


「死刑囚が未来とかほざくなよ」


そう、俺達は死刑囚、そして今護送中。

車内には同じ監獄にいた奴等が数十人、どいつも二桁は殺してる奴ばかり。


「どうせ別の監獄に移るか、死に場所に送られるかのどっちかだろ」


「それがな、オヤジの言うことには、違うらしいんだよ」


オヤジってのは俺達と同室の掘り師の爺さんのあだ名。

獄中長いし、面倒見もいい、大体の奴に慕われていて、その大体の奴等に墨を入れている。

ついでにこの白人は一番最近入った。


「は? 何が違うってんだ? マイケル君よお」


「俺はミカエルだってば、だからオヤジが言うにはな、護送車のスペックも人数もいつもと違うんだってよ。それに


「そりゃあ、オヤジだって死ぬのは初めてだろ? これが執行する場所への輸送なんじゃねえの?」


「まあ聞けよ。なあ、オヤジ、説明してやってくれよ」


白人君は隣に座っているオヤジに声をかける。


「主らも見たじゃろ? この車の側面に書いてたロゴを」


「え? 見てないけど」


「エボルヴ社だったか? 輸送の委託会社か何かだろ?」


「いや、エボルヴ社は軍事系の研究所じゃ」


「あー、何かCMで見たかもな」


「それで、その研究所が何だってんだよ?」


「おめえら聞いたことねえか、()()()()の噂」


これまた同室のドレッドヘアーのリッキーが話に入ってくる


「合法なのか? それ?」


「合法だったら死刑囚なんか使わねえよ。頭使えよマイケル」


リッキーに返される。


「ミカエルだってば、じゃあその非合法の実験ってのは?」


「それがな、人間を改造して兵器にしてるって話だ」


「それが本当なら、その会社の情報管理体制はお前の女ぐらいガバガバだな、リッキー」


「ハッ、面白い冗談だなリン、まったく面白い」


気に入ってくれて何より。


「話は終わりでいいか? お前らもそろそろ黙らねえと、周りの連中が黙ってねえぞ」


俺はこんな下らないゴシップに興味はないし、実際周りの連中は思春期の男子並みにデリケートでソワソワしてる。


「終わりでいいな? じゃあ、おやすみ」


「なんだよつれねーな」


で、俺はまた寝に入ったわけだが、

この数時間後、例の会社に到着したときはマイケルを黙らせるのに時間がかかった。


そんでもってそこで俺達は手錠を外され、服を脱がされ、全方位からシャワーを浴び、真っ白な服を配られ、だだっ広い空間に通された。

一万人は軽くいるだろうな。


「なあ、何が起きんだろうな」


「知るかっての、いい加減黙れ」


「あれじゃね、バトロワ」


「リッキー、実験材料に戦わせてどうするってんだ?」


「そりゃあ、あれだ、強いやつを素材にするのさ」


「成る程、じゃあマイケルやオヤジみてえのはどうすんだ?」


「確かに、ワシ喧嘩は微妙じゃ」


「ミカエルだって、でも俺も銃ねえとなー、っておい、向こうに女がいる」


「マジで? あれも死刑囚か?」


「じゃろうな、何人か客がおる」


オヤジの客の内、生きているのは人殺しだけだ。


「だよな、全員美人だしな」


「どういう基準だ?それ」


「人殺す女ってのは、大体美人なのさ」


リッキーが謎の持論を展開したその時、壁に作り物みたいな顔の胡散臭い女が写し出された。

この場のほぼ全員が発情期みたいにその女に注目してるのは少し面白かった。


『皆様おはようございます。まず、皆様は我々エボルヴ社が買い取らせていただきました。』


ざわめく、そりゃそうだ、商品になった覚えはない。


『質問は受け付けませんのであしからず。』


『ズボンのポケットをご確認ください。』


ズボンの中には自分の名前とA-00890と書かれた紙が入っていた。


『お名前をご確認の上、アルファベットが表示されたエリアに移動してください』


地面にアルファベットが四つ、部屋を分けるように浮かび上がる。


「何だった? 俺C」


「俺はA、リン、お前は?」


「俺もAだな」


「ワシはDじゃ」


「じゃあ、俺とオヤジは一人ずつか」


「まあ、そっちのがいいかもよ? バトロワだったら殺し合わずに済むだろ?」


そんな会話をしつつ、移動を開始する。


数分後、全員の移動がつつがなく完了する。

途中文句を喚いてた奴が天井から生えてきたガトリングで周りのやつごと蜂の巣にされたことはまあ、些細なことだ。

AとDは比較的少なく、BとCはかなりの人数がいた。


『移動は完了しましたね? では部屋にお入りください』


音もなく壁の一部が上昇し、中にぞろぞろと入っていく。

中で何度か別れ、その内リッキーとも別れた。


「殺し合わなくて済むな」


「そうだなリン、お前とはごめんだぜ」


百人ぐらいの男女が誘導に従って歩き、また広い空間に出る。


『自身の番号が表示された入ったポットにお入りください』


さっきの女の声に従い、コールドスリープでもするみたいな筒に入る。

これが棺桶じゃないといいが。


中は変な感触のクッション材が入っており、扉が閉まった後に勝手にマスクが当てられ、筒がクッションで満たされる。


『では、これから皆様の選抜を行うため、市街地を想定した空間で戦闘を行って頂きます。』


まあ、お約束だな。

あいつらの言ってた通り。


『選抜の条件は生存、上限は五名とさせていただきます。また何を行っても構いません。このポットは60秒後に射出されます。到着の際に軽い衝撃が走りますが、ご了承下さい。』


残り五人まで生き残れと。


『ポットはランダムに配置されます。また、上部に各種道具が用意されていますので、お役立てください。』


道具有りか、多分ナイフとかだろうな。

となるとAは素手または道具、Cは銃って所か。

B、Dはわからん。オヤジ大丈夫か?

リッキーはそうそう死なんし、マイケルは、まあいいか。


『射出まで10秒』


カウントダウンの後、微かな浮遊感があり、数分間移動している間隔を身動きがとれないまま感じとる。

あまりいい心地はしないな。


そして、着いたときの第一印象は「軽い衝撃」が中々ハードだったことだ。

何年か前に見た都会の景色を懐かしみ、まったく人の気配を感じない静けさを楽しみながらポットを漁る。

見える範囲にポットはない。


中には思っていた通りナイフが数種類、ロープ、金槌などの道具が「どれか一つ取ってね!」と頭の悪そうなな丸文字で表示されたモニターの下に収納されていた。

それとは別に入っていたワイヤレスイヤホンとスマホ、起動すると地図と赤い点と青い点が表示された。

赤い点が99個、つまりは青い点が自分で赤い点が他の奴達か。


ポットからロープを取り出し、歩き出す。

想定していると言っていた市街地は日本ではないらしく、荒廃した町だ。

鉄筋が剥き出しになっている建物も多い。


遠くから悲鳴が聞こえるが気のせいだろう。

悲鳴が近づいてきたが気のせいだろう。

そこの角の先から悲鳴が聞こえるが気のせいだろう。

角から日本人が飛び出てきたが気のせいだろう。


「すいません、そこの方! 助けてください!」


正気か?


「どうしたってんだ?」


「今追われてまして」


「だろうな、放送聞いてたか?」


「いえ、聞いてませんでした!」


どこかマイケル味を感じる。


「私アキと申します、よろしくお願いします」


「よろしくする気は無いんだが」


「そこを何とかお願いします」


アキはお手本のような土下座を繰り出した。


「面倒だ、追われてんならさっさと逃げろよ」


「そうでした、というかそろそろ、、、」


角から大男が、出てきたが、気のせいだと思いたい。


「よう、見つけたぜ。って、何か余計なのがいるな」


「余計だってよアキくん、俺退いてていい?」


「ダメです! 助けてください!」


厚かましいなこいつ。


「お? 邪魔すんなら潰すぞ、てめえ」


安い脅し文句だこと、欠伸が出てしまうね。

こう見るとこの二人は強姦魔と被害者って感じだが、多分間違ってないんだろうな。


「一応聞くけどよ、コイツが男なのは知ってるよな?」


「は?」


大男は呆気にとられている。

マジかよ、キモい。


「よく分かりましたね、私結構間違われるんですよ」


こいつもこいつで呑気だな。


「節穴のデブくんや、呆れてこれ以上話す気も失せたから、どっか行ってくれねえか?」


「で、デブだと? てめえぶっ潰す」


こんなに丁寧に言ってやってるのに、難儀な奴だ。


見た目の通り鈍い動きで拳を突き出してきたので、手首を握り潰し、腕を捻って肘に蹴りを入れる。

腕が反対側に曲がる。


デブが豚の鳴き声みたいな悲鳴を上げる。

流石に不快なので首を捻り脛椎を外す。


「うわあ」


「死刑囚が何驚いてんだ? お前も何人か殺ってんだろ?」


「えっと、私というか私じゃないというか」


「なんだそれ、てか何で二人とも武器持ってねえんだよ」


「え? 武器あるんですか?」


こいつ放送聞いてなかったんだった、ハラショー。


「はあ、お前のポット何処だ?」


「あ、こっちです」


数分も掛からない内にポットが二つ見つかった。


「いやあ、さっきの人が隣のポットから出てきたときどうしようかと思いました」


「ああそうかい、よかったね」


「あ、聞いてませんね? というか何してるんですか?」


「お前が乗ってたのどっちだ?」


「今弄ってるそれです」


スマホとイヤホンを投げる。


「うわっ、何ですかこれ?」


「つけりゃ分かる」


間抜けな少年はイヤホンを着けて棒立ちしている。


「何も起きませんけど」


「電源を、つけろ」


「ああ成る程、スマホの方ですか」


「分かったか?」


「、、、多分」


「今残り幾つだ?」


「えっと、79、いえ77に減りました」


大体ファーストエンカウントが終わったか。


「簡単に言うと、100人でバトルロワイアル、五人だけ生き残れる、武器はここから一つ選べる、終了」


「なるほど、そういう感じですか。ゲームみたいですね」


本当に呑気だな。


「ほら、選べよ」


「何があるんですか?」


「自分で見ろ」


「すいません!」


アキが選んでいる間にデブのポットを漁る。

スマホにはゲームオーバーの文字。

思った通り武器は他人も取れるらしい、サバイバルナイフを取っておく。

出てすぐ男の尻追っかけて死ぬとか可哀想だな、名も知らぬデブ。


『残り、75人です』


「うわっ」


「煩え」


イヤホンからあの女の声がする。


『ただいまの最高スコアは10人です』


化け物だな。

そいつが全員殺ってくんねえかな。


「これからどうしましょう?」


何故一緒に行動する前提なんだ?


「待ってください、無言で進まないでください」


「、、、」


「お願いします、守ってください」


「厚かましい!」


「すいません! でもお願いします!」


「嫌だよ」


「分かりました、勝手に着いて行きます」


「分かってねえじゃねえか」


そこからはアキが何度も話しかけて来たが無視して進む。

最初にスマホで見た赤い点を周り、アキみたいな間抜けの取り残しを狙う。


「あの、ああいう人助けたりしないんですか?」


目を向けると、デブの思惑が成功した世界線の光景が見えた。


「何で?」


「いや、あの、何でもないです」


「やってみたら? どうせ助けた後に野垂れ死ぬだろうけど」


「何でもないですってば、進みましょう」


何度も振り替えるぐらいなら行って死ねばいいのに。

まあ流石に酷だと思わなくもない、いや、そうでもないな。


十ヵ所程周り、回収出来たのは二ヶ所、思っていたより間抜けはいた。


『残り、50人です』


『ただいまの最高スコアは22人です』


「うわっ、あ」


アキは慌てて口に手を当てる。


やはり化け物だな。

中央に人が集まって消えるのを何度か見た、おそらくそいつだろう。

他にも北にバラバラに六人、西に五人グループが二つ、東は激戦区らしく大量の点が動き回っている。

俺のいる南の区域は多くても三人のグループ、しかも他の場所よりはかなり少なく、九人しかいない。


「暇になってきたな、、、やるか」


「何をするんです?」


「退屈してきたから、人数減らそうと思っただけだ」


「えっ、やめてくださいね、私は」


アキが身構える。


「お前じゃねえよ、死にたくなかったらそこのポットに隠れて扉押さえてろ」


「分かりました! 頑張って下さいね!」


今まで発揮されなかった俊敏さを活かし、アキはポットの中に飛び込み扉を勢いよく閉めた。

さて、面倒だがやるか。


伸びをし、腕を回し、首の骨を鳴らす。

まずは、走る。

今歩いてきた方角に戻り、さっきの強姦魔を消しにいく。

見たところスマホを持っておらず、イヤホンもしていなかったし丁度いいだろう。


見つけた、のはいいが、まだやってんのかよ。

頭の出来のわりに運は良いようだ。

練習台にするか。


小さいナイフを持ち、等間隔に揺れる頭に狙いをつけ、投げる。

サク、という音と共に男が崩れ去る。

あんま鈍ってなかったな。


スマホで周囲を確認しつつ近づく、周りにはいないな。

死体の下の女は生きているようで、まだ点は消えていない。

男を引き剥がし頭からナイフを抜き、死体の服で拭う。


「よう、元気?」


女は唖然として動かない、顔は腫れ、歯が欠けている。

首にナイフを当てる。


「お前のポットは何処だ」


「あっ、あ」


「喋んなくていい、指させ」


女は東の方を指す。

ハズレだそこはもう漁った。


「そうか、じゃあな」


「待って、殺さないで」


「俺が殺さなくてもどうせ死ぬだろ、お前」


「で、でも」


「残り六人とかでお前を殺しに来んの面倒だし」


「お願いします、何でもするから」


何でもって言ったか?

下半身汚して腰の抜けた女が何でもだって?


「そうか、じゃあ中央に行け、いいな」


どうせその間に死ぬだろ。

女は涙ぐみながら必死に頷く。


「じゃあ、そういうことで」


立ち上がり別の点に向かう。

その後南側は俺とアキとまだ動いてないさっきの女だけになった。

俺のスコアは7人、現在二位だ。


『残り、20人です』


『ただいまの最高スコアは22人です』


一気に減ったな、東の区域が大体片付いたのか。

赤い点が四つ、多分グループだな。

西のグループは一つになっている。

北は三人残っていてこれもおそらくグループ。

纏めると、東4西5北3南3中央5。

東から反時計回りに行くか、一番近いし。


歩きながら近づいていく、点はさっきのアナウンスからほとんど動いてない。

建物に潜むぐらいには利口な奴達らしいが、隠れるのに慣れてないのか、窓からこちらの様子を伺う姿が見えた。

やはり間抜けは何処にでもいるらしいな。


そこからは特に面白味もなく終わった。

入り口から入り、奇襲を仕掛けてきた奴はデブと同じ要領で、一階はそれだけだったので階段を登り、これまた奇襲を仕掛けてきた奴に頭突きで応え、剥き出しになった鉄筋に刺す。

一人は腰を抜かし、もう一人は降参してきた。


「じゃあ、お前らのうち生き残った方は放っといてやる」


と嘘をついて手間を省き、東は終了。

激戦区だったし腕が立つのかと思えばそうでもなかった。

つまらん。

次に北だが、もっとつまらなかった。

数で勝るからと油断し、連携のれの字もない動きで襲いかかってきたので、特に何もなく終了。


西はまだ、少し楽しめた。顔見知りだったし。

同じ監獄にいたビリー・ノックと愉快な仲間達だ。

因みに囲まれている


「よう、リン、待ってたぜこの時を」


「何だビリー、カードで勝てないからって根にもってんのか?」


「うるせえ! いつも散々馬鹿にしやがって、てめえもリッキーも気に食わねえんだよ」


「そうやって童貞みたいに余裕ねえから女に好かれねえんだよ、分かってんのか? チェリー・ノック君」


「っんの野郎、殺す!」


「弱く見えるから殺すとか言わない方がいいぞ」


「うるせえ!」


ノック君はメリケン、愉快な仲間達はナイフを手に襲いかかってきた。

ノック君のパンチを避け、突き出された手下1のナイフを手下2に誘導、見事手下1はお仲間の胸を突いた。

手下2の取り落としかけたナイフを拾い、動揺した手下1のこめかみに刺し込む。

警棒を持った手下3の振りかぶった手をずらしノック君の腕に当て、ロープを腕に絡ませ肩を伝い手下3右腕を締め上げ、ナイフで喉笛を切り裂く。


『残り、10人です』


『ただいまの最高スコアは22人です』


残りは二人。

手下4は一番臆病そうだったので放っておいたが以外にもいきり立っている。

頭に血が上っているようなのでジャブで鼻先を曲げ、ぐらついたところを早々に血の気を抜いてやる。勿論ナイフで。


「ノック君、今なら同獄のよしみで見逃してあげよう。どうする?」


「けっ、ふざけろ」


まだやる気なんだ、凄いね。


その後彼の息が切れるまで攻撃を避け続け(煽り続け)、その苦しそうな息をロープで止めてやった。



ここまでがハイライト、中央の連中は群れてもいないし弱かった。

ほとんどかくれんぼで、見つけて即、という感じだ。

真ん中の奴は避けていたので少し時間がかかったが。


驚いたのはさっきの女があれから誰にも襲われずまた俺と会ったことだ。


そんなわけで


『終了です、生き残った皆さんは指定ポイントまで移動してください。』


『最高スコアは22人、トップが二人います。』


やったぜ。いや、つい楽しんでしまった。


スマホには真ん中の奴の隣辺りにポイントが設定されていた。

南からアキ、俺と女、残りの一人がそこに向かっている。


「ひっ」


指定ポイント、つまり中央の奴の周りには夥しい死体が散らばっていた。

素手のやつもいれば武器を手にしたまま死んでいるやつもいる。

見知った顔もちらほら。


「あっ、いた」


後ろからアキが近寄ってくる。


「うわっ凄いですね」


「、、お前足速いな」


「そうでしょう、数少ない取り柄です。それでこちらの女性は? 立てます?」


アキが腰の抜けた女に歩み寄る。


「拾った」


「あ、あのときの人ですか。結局助けたんですね」


「結果的にな」


「というか本当に凄いですね、あなたが?」


「違えよ」


「違うんですか。肩貸しますよ」


「あいつだろ」


俺が指した方には長髪の日本人が立っていた。

服の隙間から刺青が見える、広場で見たオヤジの客か。


「凄い綺麗な人ですね」


ちゃんと男の子なんだな、こいつも。


「ああ、そうだな」


指定ポイントには既に二人いた。

日本人と、距離をとって小柄な黒人が一人。


『おめでとうございます、ただいまエレベーターが起動しますので、円の内側にお入りください』


地面に円が表示され、土の地面が無機質な質感に変わり、その中にあった死体が押し出されていく。


『武器等は円の外側に捨ててください』


円の中に入った俺達はそれぞれ武器を捨てる。

俺はナイフ数本と警棒とロープ、アキと黒人はナイフ。


あの日本人はスマホで見た限り全く動いていなかった、素手で22人返り討ちにしたことになる。

見かけによらず、いや、リッキーに言わせれば当然か? 恐ろしい女だ。


『では、下降します。ご注意ください』


地面が音もなく滑らかに動きだし、ゆっくりと沈んでいく。


「水筒に沈むみたいじゃないですか?」


「何言ってんだお前は」


正直分からなくもない。

2分ぐらい待つと、足下から少しずつ周りが見えてきた。

まだわりと高い位置で全体が見渡せる。

広い、といっても広めの体育館位の空間で、下には数百人ほど人がいた。

マイケル達もどうやら残ったようで、こちらに気付いて手を振ってきた。

音なく着地し、合流する。


「よう、遅かったな」


「煩えぞマイケル」


「ミカエルだってば」


「どうせお前は銃有りだろ?」


「、、、なんで分かったんだよ」


「てかリン、市街地は羨ましいぜ、俺なんて山林だぞ?」


「そいつは災難だったなリッキー」


「しかも女連れだと?」


「片方男だぞ」


「「マジで」」


二人が声を合わせる。

お前らもかよ。


後ろにいた二人が近寄ってきた。


「どうも、アキと言います、よろしくお願いします」


「、、カスミです」


何故自己紹介し始めたんだ?


「おう、リッキーだ、よろしく」


「ミカエルだ、マイケルじゃないからな」


何故応じてるんだ?


「お前ら終わったんだからもうどっか行けよ」


「まあまあ連れねえこと言うなよ、リン」


「あ、リンさんって言うんですね」


マイケルは後で殴る。


「で、リン。お前何人殺った?」


「リンさんは22人ですよ! トップタイです」


「なんで、おまえが自慢すんだよ」


「うわ、負けた。俺9人」


「ハッ、俺は30人だ」


「やるなリッキー」


「お前もやる気出せばもっと行ったろ?」


「まあな、てかオヤジは何してたんだ?」


「ワシはほぼ何もしとらんぞ、工作みたいなもんじゃ」


「俺もそっちがよかったな」


「お主じゃと多分無理じゃぞミカエル」


「げっ、マジで?」


「すいません、あれなんてすか」


アキが口を挟む。


「ああ、あれは中継らしいぜ。右上の表示がグループだな」


壁にはいくつかのウィンドウが映し出されている。

表示によればAが五つBが一つだ。

今一つ終った。


「これ全部終わるまで暇なのか?」


「ぽいな」


「まじか、終わったら起こしてくれ」


「見ねえのか?」


「興味無え」


全員がスクリーンに釘付けになり、会話の必要がなくなったので寝ることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ