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8.友情≠愛情

「これで一件落着かな」


そこで僕の友人と見るからに不良な青年がのされているが、まあ大丈夫だろう。どちらも呼吸が有るようだし。


「えっと、菊地原雫さんだったかな。僕は家棟詩音。新太から君のことは聞いてるよ」


「あなたが入部希望者?」


「あっはっは、そこまで聞いていたら話は早い、僕も君たちの仲間に入れて欲しいのさ」


なんだ新太とつるんでるから、どれ程我が強いかと心配したのだが、結構いい子じゃないか。


だけどどうせこの子も何かしら腹に抱えてるんだよねきっと。別に面白そうだからいいけど。


「入部するのはいいいけど、部長は新太君だからね。しかも部員足りてないし。それと家棟さんは授業どうするの?」


「詩音でいいよ。すまないが行けそうにない。さっき見せた異能は反動で僕の足というか下半身を一定時間動けなくするのさ」


「異能のこと簡単に言っていいの?」


「別に隠している訳じゃないし、どうせ新太から聞いて知ってるんだろう?」


どうせ、新太が僕のあることないこと悪逆非道の数々の所業を面白おかしく喋っているんだろう。


「それと君は僕と違って授業があるんだろ? 行った行った」


僕は手でシッシとやると、観念したのか雫は去っていった。


さて、邪魔者は居なくなった。僕は匍匐前進の要領で新太の元にやって行くと、新太の頭を自分の膝の上に置いて彼の髪を優しくすいた。


「やっと一つ返せたよ」


僕は彼に数えられない程の罪がある。それは僕と一緒に新太が事件に巻き込まれることだ。


新太が怖い思いをしたことだって沢山ある。誘拐されたことだって一度や二度じゃない。


それなのに彼は『気にしなくてもいい』と言い。


それが僕は一番辛かった。こころが砕け散るほど痛かった。


全部私のせいなんだ! 私がいるから新太はこんな目にあうんだ!


そう言ってやって、君が僕の事を嫌いになれば良かったのに。僕のたった一つの感情がそれを邪魔する。


理性はこれ以上関わるといけないと主張している。だけど、心が痛いくらいに叫んでるんだ。『離れたくない』って。


だから新太が僕のせいで、こういう目に会ったら罪を心に刻む。


その罪が()()()()()()()()()()()()()()物でもだ。


嗚呼、ここでこの王子様モドキにキスの一つでもやったら、お伽噺よろしく目覚めてくれるだろうか?


イタズラ心と本の少しの本心に押され新太の顔にほぼゼロ距離まで近づくと。


「テメェらそういう……」


「勝手に納得しないでもらえるかな、不良少年」


「ずいぶんと人聞きが悪ィな。クソガキ」


僕らは少しの間睨み会うとなんだか馬鹿らしくなってきたので辞めた。


「目的は時間稼ぎか?」


「言っただろう、僕は二人を助ける為に君をぶっ飛ばしに来たって。それに時間稼ぎをするんだったら、君のことを縛って徹底的に動けないようにする」


「じゃあ、全部アイツの言った通りってかよ……」


あいつとは雫のことだろうか。僕が来る前から一悶着あったらしい。


「だとしても解せねェ。何であんな才能が有ったのにワザワザ結界をブッ壊して来たのかがよォ」


「僕はあの子じゃないし、答え合わせ何てできないけど。僕だって探偵の端くれだ。簡単な推理位だったらすることができる」


「で結局の所どォなんだァ?」


僕は最初に感じた彼女の印象を不良少年に伝えた。


「彼女が天才過ぎるんだよ」


「……アア、成る程、合点がいった」


彼は一人でウンウンと唸るとおもむろに立ち上がった。恐らくこの部屋から出ていくのだろう。早く出ていけ。シッシ。


「君はどうするんだい? 見た目に反してダメージが少なかったみたいだけれども」


「帰ェるわ、俺はこの場の敗者だかンな。敗北者は敗北者らしくするとしようじゃェか。誰かサンの邪魔しちゃァ悪ィしな」


「ふん、そういう事だ。早くどっかに行けよ」


全く、君は近所の色恋に目敏いオバチャンか。


これでやっと本格的に二人きりになれるとワクワクしていると、あるイタズラを思いついた。


確か、部活動の開設に必要な人数は僕を入れてもあと一人。ちょうどいいか。


「まちたまえ、不良少年」


「まだなンか用があンのか?」


彼が起きて、この事実を知ったらどんな顔をするだろうか。今からでも凄く楽しみだ。


「いやなに、ちょっとした部活動のお誘いなんだけどね?」





もうすぐあの陰陽師の淳平君が出てくるらしく。


私は気配を『隠行』スキルで消しつつ、素早く階段に向かった。


今この部屋で起きた詩音さんの感情は『読心』スキルを使うことによって壁越しでも私は手を取るように分かる。


私の『読心』スキルは別に相手を見ていないと発動できないと言う縛りはない。


何時でも、何処でも、誰とでも人の心を読むことができる。対象は一人という条件つきだが。


スキルレベルSとはそういう物なのだ。


彼女は、家棟詩音は千葉新太に恋を抱いている。


だけどね、そんなの絶対認めない。家棟ちゃんが新太君のヒロイン(大切な人)だっては絶対に認めない。


彼しか居ないのだ、私と対等になれるのは。


いやもしかしたら、もうすでに彼は私の上を行っているかもしれない。


彼しか持っていいない、レベルEXの『人を見る目』スキル。


だからね、家棟ちゃん


「全力で勝たせて貰うよ」


私は静かにそう決意すると既に遅刻済みの教室へ向かうのであった。

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