6.不良陰陽師
雫さんと帰った日から1日経った昼休み。
俺と雫さんは先生方から旧文芸部の部室の鍵を借りて部室の元を訪れようとしたのだが……
「……ここに部室が有るんだよな」
「先生が書道部の隣あるって言ってたからね。ただ……」
「扉が無い」
俺らが訪れたのは四階にある書道部の隣にある部屋、に来た筈だったのだが。
書道部の隣には部屋も扉らしき物もなく、のっぺりとした壁があるだけである。
確かに、不自然なまでにスペースはあるが……先生が間違えたのだろうか?
「おい、先生に本当の場所を聞きに行くぞって、なにしてんの?」
先程から雫さんは腕を組みながらうんうんと難しい顔をしながら唸っている。
「どうしたの?」
二度目の質問を続けるが、返事は帰って来ることは無かった。
「俺、先に職員室に行ってるからな」
「待って、終わった」
雫さんに断りを入れて先に職員室に向かおうとした矢先、先程まで唸っていた雫さんが何時もの調子で俺を止めた。
何が終わったのとも、何をするつもりなのとも聞けずただ動揺し、素直に雫さんのしたようにさせた。
「嘘だろ……」
彼女が何もない壁に手を向け一言『破』と言うと眩い閃光とと共に教室が出てきた。
こいつバグってやがるよ……なんだよ『破』って、お前お寺の娘か何かだっけ。
「だから私はなんでもできるって言ったじゃん」
「人の心を勝手に読むな、しかしどうやってこの部屋見つけ出したんだ?」
「別にただ『気配察知』スキルで違和感を感じ取って『解析』スキルでなんで見えないのか理解して『陰陽』スキルで結界を解除しただけだよ?」
だけ、とは一体……想像の万倍ヤバいよこいつ。ラノベのバランスブレイカーでももうちょっと自重するぞ……
「中に入ろう新太君。人を待たせてるみたいだし」
「おう……」
全然ついて行けてないよ全くもう。しかも人居るのかよ。
絶対この『結界』とやらを張った人じゃん。それを壊したのに良く平然と会いに行けるよな。
「別にそこまで恐い人じゃないと思うから」
おい、心を読むなと何回いったら分かるんだ。
「テメェらか? 俺の『結界』破って来たのは。ア"ア!?」
中にいたのは。金髪に髪を染めた百九十はある大柄なヤンキーだった。
顔もゴツくて凶悪な目をしている。
やっちまったよ、全然大丈夫じゃなかったよ! なにがそこまで恐い人じゃないだよ、こいつ絶対人キルキルしてるよ!
追い討ちとばかりに千葉新太に電流走る。
NAME 千両寺 淳平
HERO POWER 80000 HERO
JOB 主人公
STORY 物理でも殴れる陰陽さん
学校一の不良であり陰陽師の大家である安倍家の分家の一つである『千両寺』家の一人息子として生を受けた千両寺淳平は両親から不当に陰陽師の修行を強いられた淳平は、ある日を境に両親と決別した。そしてグレた。けれども淳平の中にはまだ正義の心があるようで。昼は不良学生、夜は日本一の陰陽師として闇に潜む魑魅魍魎たちを倒していく。
第2話 俺ンとこにワザワザ依頼を持ちかけて来たアホがいる。どこで俺ンこと知ったか知らねェがよ、俺ァ興味ねェことには首突っ込まねェンだ。ア? 友人が行方不明? ンだよ全然おもろしろくなって来やがったぜ! その依頼承った。
想像どうり主人公でしたーッ! しかもお寺生まれ、お寺育ちの『破ァ!』できるタイプのお坊さんでした!
しかしこの学校どうなってんだよ……人が行方不明なのに噂一つ立ってないぞ。
「へェ、良く見たら結構良いモンもってンじゃん。二人とも協会の差し金って訳じゃ無さそうだ。あいつらにこんな綺麗な気はだせねェ」
なんだか語ってるけど、そっちのストーリー全然理解できてないから専門用語使わないで貰えるかな。
なーんて言える訳もなく、ただガクブルしてるだけでした。
ストーリー見る限りいい人っぽいけどもぉ、見た目がなんかぁ。
「まあ敵じゃねーっつーことは理解した」
お、なんだか好感触! このまま俺らを部室から追い出すか、素直に部室を明け渡してくれ……!
「でも人様の結界壊すのは頂けねェな」
空気が変わった。先程までと比べると重いズッシリとした感触だ。
その上相手から発せられる殺気の様な物にビビり一歩、
下がれなかった。
「ウォ! 動かねぇ、どうなってんだ!」
「丸腰の上に抵抗する気もなしか、なんだケンカ売りに来たンじゃなかったのか?」
「私たちはこの部室を見に来ただけだよ」
「みえすいた嘘を付くンじゃェよ。そっちの兄ちゃんは従者かなんかだろうが、テメーは結界を解く位はできたはずだぞ。そんな奴がワザワザ結界を壊してこの部屋見に来る価値があるってか?」
「結界を壊したことは謝るから、この拘束を解いて欲しいな」
「良いぜ、本当の目的を吐いたらの話だけどな」
これじゃあ堂々巡りじゃないか。この拘束を解くには相手が納得する理由を言わなきゃいけない奴!?
しかも、昼休み時間ももう少しで終わりじゃないか! こう言うプロ意識が高い人って絶対授業時間とか無視するぞ! ただでさえ勉強追い付けてるか微妙なのに!
ああ、マジで誰でも良いから助けてこのさいSCP少女もといすももちゃんでも良いから!
「やあやあお困りの様だね。新太が女子と歩いてるのを見かけたからついてきたら、中々に面白いことがおきているじゃないか」
「ア"?」
ガラリと扉を開けて入って来たのは、『異能探偵姫』の主人公家棟詩音だった。