4.晴れ時々SCP少女
放課後俺、小野寺雫、椎崎すもも(初対面)、クロノ・マテリアル(初対面)の四人は比較的安全に下校していた。
「なあ、菊地原さん。何でコイツらいんの?」
「雫で良いよ、私も新太君って呼んでるし。それとこの二人はすももちゃんとは昨日一緒に帰ったから今日も一緒に帰ろうかなって思ったから誘ったらクロノ君とも一緒に帰りたいって言ってたから誘っただけだよ?」
「いきなりコイツら呼ばわりとは、礼節がなってねーんじゃねーか?」
「そうだよ! ちょっぴり傷ついたんだから!」
なんでいるんだSCP少女! どうしよう。もう駄目だ、コイツらのストーリーに呑まれた。間違いない。
しかもSCP少女のストーリーはモブも殺すしなんだった主要キャラも問答無用で殺してくるたぐいのやつだよ。
どうしよう。こうゆう時の対処法は……
「すまんすまん。ああ、そういや自己紹介まだだったな。俺は千葉新太。椎崎さんに、クロノさん? いや外国の場合は名字が後だっけ?」
「クロノでいい」
「私もすももで良いよ!」
チョロいなコイツら……チョロすぎて違和感しか無いぞ。
こうゆうストーリーは主要キャラとモブのギリギリのラインに立つのが丁度いいはずはず。たぶん。わかんないけど。
うん、でもまあ、俺はもう異能探偵姫のいわばワトソン君みたいな存在だしね。ちょっとやそっとじゃあ死なんとは思う。
だからといって積極的に関わりたくは無いけどね。痛いのやだし。
「そいやさー、すももちゃんの髪って地毛なの?」
教室にいた頃から気なった事だ。おそらく人類が出せないであろうあり得ない色彩。
……いや、すももちゃんのストーリー見る限り地毛っぽいけどね? ただの確認ですよ。
本当に綺麗な桜色。しかもあどけなさの残る言動と天真爛漫なその瞳と相まって実年齢よりも幼い印象を覚える。
「その質問いろんな人に聞かれるよ。うん、私の髪は生まれつきこうなの。パパとママはちゃんと綺麗な黒髪だよ。私もそっちが良かったんだけどね」
たははと寂しげにすももちゃんが言う。
「……マテリアルさんは」
「クロノだ」
俺の台詞をキザな感じに遮ってくれたねェ、マテリアル(笑)君。にしてもマテリアルって凄い名字だな。
「タメに家名で呼ばれても気持ちワリーだけだ」
おっとここ今週のツンデレポイント。初対面だけど。
男でも美形だったらツンデレ嬉しいのはなんでなんでだろうね? ここから先は深淵だから触れないでいくよ。
「んじゃクロノって呼ばせてもらうわ。それで続きな。クロノとすももちゃんってどんな関係?」
クロノのストーリーを見たとき、すももちゃんのストーリーとクロス中ですと書かれてあったが具体的な内容は何一つわからん。
しかもすももちゃんの方に表示が無かったのも気になる。
「あーえー、コイツとはだな……」
「私がお金を貸してあげてるの! しかも無利子で!」
「え"ッ」
いきなり生々しいなオイ。金欠でどうたらこうたら書かれてた気もするが、だからって……
「ないわ、それはないわ、え? なに、気不味くないの? こうやって金借りてる人と肩並べて帰るのって。俺こんなヤツに礼節がなってないとか言われたの?」
「ダァーッ! うるせーわ! こっちだってな、めっちゃ苦汁を飲んだ上での決断だったんだよ!」
「にしてもお前らそんな仲良かったっけ?」
クロノ君を完璧スルーしてすももちゃんに質問を投げ掛ける。
俺の記憶が確かであれば、コイツらがつるんでる所を見たことがない。
「昨日知り合ったばっかりだよ?」
「あ、おい!」
「ヒェッ……!」
昨日知り合ったばっかりの人物に無利子で金を貸す。
字だけ見たら詐欺被害にでもあったのかな? って思うぞ。にしてもすももちゃんいい人すぎひん?
「ちげーよ! 無利子の代わりに交換条件有るから! つーか人の事情に首突っ込むな!」
交換条件込みでも無利子で金借りてるのには代わりないからね?
しかも慌て具合から察するに、かなり借りてるなぁ……
「んじゃ交換条件ってなんだよ? やましいことじゃなかったら言えるよなぁ?」
「それは……クッ!」
俺は知っている。
恐らくこの交換条件が魔法関連だと言うことを! しかもクロノはそれらを俺らに教えたくないことも!
俺『ま、どうでもいいんだけどな』クロノ『良かった、バレてない。流石に一般人を巻き込みたくはない』
という展開に持って行けばいい案配のモブ役になれんじゃね?
ということで、有言実行(言ってない)!
そうして俺は『ま、どうでもいいんだけどな。俺とクロノはズッ友だかんな!』と好感度を稼ぎつつストーリーからフェードアウトしようと口を開いた瞬間。
「私、クロノ君から魔法を習う約束してるんだ」
ポツリとすももちゃんは呟いた。
先ほどまでのすももちゃんと違い元気が無く、本当に独り言として出たようだった。
しかし先ほどの俺とクロノの言い合いの間を縫うような奇跡的なタイミングで放たれた一言。
くどく、変な言い回しになってしまったが。言いたいのはあれだ。
めっちゃ響いた。
少ない声なのにも関わらず、めっちゃ響いた。聞き違いが起きないくらいには。
しかし、スルースキルを発動! どんなにハッキリくっきり聞こえても聞こえない!
「あ、魔法って言うのはマジックとかじゃなくて本当に炎を出したりするやつだよ!」
「あ、おいバカ! もう黙れ! 俺ら帰り道こっちだから! また明日!」
「あ、ちょっと私の家そっちじゃない……」
「いいから来い!」
すももちゃんには隠すつもりが全く無いのか……これじゃ聞こえないフリできないな。
そして分かったこと。
すももちゃんが言ってた、昨日出会ったと言うワード。
そしてさっきすももちゃんのストーリーがクロス中と更新されているのが確認できた。
この結果から推測するに昨日すももちゃんにクロス中と表示が無かったのは単純にクロノと関わっていなかったということになる。
「あの二人行っちゃったね」
「うん、なんか騒がしい奴だったな」
騒がしい二人組が抜け今や先ほどの騒がしさはどこへやら、凪のような時間が続いていた。
「一応言っとくけど、すももちゃんは嘘言ってないよ?」
「魔法のことか? それなら知ってる。俺はそれよりもどうしてそれを知れたかが知りたい」
確か雫さが見れるのは主にステータスとスキルだけだったはず。
ステータス欄に魔力の欄でも有るのかしら。
「ああそれね、クロノ君のスキル欄に『魔力』とか『魔法技能』とかそっち系のスキルが有ったからかな」
「へー魔力ってスキル扱いなんだな」
「うん、スキルは個人の才能や出来ること。ステータスは誰もが持っているものって感じかな」
「本っとに便利だなお前のやつ……確認するけど俺の方がスキルレベル上なんだよね?」
雫さんは少しだけ口元を緩め、少しだけ明るいトーンで切り出した。
「そうだよ。新太君の方が私よりも上だよ。これって凄いことなんだよ?」
実感が湧かないが美少女に裏表なく誉められると凄い嬉しい。真っ直ぐな瞳をキラキラさせながら誉めてくる。止めて! これ以上誉めたら私死んじゃうぅぅぅぅ!
それとその目に星みたいなの入れるのってどの様にされたのでしょうか? 人間って不思議だね!
「全然実感ねーけどな。お前のほうが使いやすそうだし」
「そんなことないよ」
彼女は俺の言った言葉を即座に否定した。
恋愛ジャンルなのにほとんど恋愛出来てない……
もうちょっとで……ヒロイン(サブ)がデレるから
詐欺じゃなはず……