シードフォルダー
男がゆっくり振り返るのを見ながら
紫吹の警戒レベルは最高レベルに上がっていた
男は紫吹を見ると口を開く
「小僧…なぜ俺が見える?」
恐怖心で一瞬体が硬直した
だが自分自身も答えなければ殺されると感じていた
「俺の左目にはアンタの姿が見えた」
紫吹の左目を見た男は見る
「………オッドアイか」
オッドアイ
一瞬なにを言っているのか分からなかった
オッドアイは左右の目の色が違うことの意味というのは分かっていたが
自分がオッドアイではないことは鏡を見て知っている
すぐさまスマホのインカメを起動する
すると、カメラに映っていた自分の左目は薄い青色になっていた
「その様子だと自分がオッドアイだと今気づいたようだな」
紫吹はすぐさま男の方を見る
紫吹が困惑してるのを無視して男は話し続ける
「ふーん…。俺の姿が見える、そしてオッドアイ、そのことに今気づいた、……なるほどな」
なるほどなと納得はしているが
当の紫吹は全然理解が追いついていない
「小僧…。貴様、最近力が目覚めたばかりのシードフォルダーか」
「シードフォルダー?」
意味が分からないうちにどんどん話が進んでいく
「俺の姿が見えたということは…なにか幻覚を見破る類の能力か?」
「あ、アンタさっきから一体なにを?」
少しの間沈黙が続く
男はポケットのナイフを取り出した
ナイフを見た瞬間に紫吹は自分の体が恐怖で動けなくなるのを感じた
「ふっ………。怖いか?ナイフを突きつけたわけでもないのに。シードフォルダーとは言ってもガキだな」
紫吹の反応を見て男は見下したような表情を見せる
「ガキとか関係なく普通にナイフを持ってるヤツがいてそいつがついさっき人を刺したって分かってるのなら誰だって怖えだろ!」
紫吹が男の言い分に少しイラッとしてる間に
男はナイフを構える
(あ、やべえ。俺死ぬのか?)
「貴様のシードを確かめさせてもらう」
そういうと男は高速移動したかのように消えた
だが、消えたのは右目からで左目にはしっかりと男が見えていた
(ほう。俺の消え方はまるで高速移動したかのように消える。初見のヤツは大体どこに行ったのか探る行動を見せるが、こいつは一瞬目が動きかけたがまっすぐ俺の方を見ている。右目では見えてなくてもオッドアイの左目には見えてるのか。………ならば)
男はナイフを構えて紫吹に今度は高速移動で近づく
紫吹は急な速度変化についていけなかった
(はっや!ダメだ!死ぬ…!)
その刹那
男のナイフは紫吹の両足を凄まじいスピードで斬りつけた
「ゔあぁぁぁぁぁ!!!」
痛みとショックで紫吹の苦痛の混ざった声が裏路地に響く
そのまま紫吹は崩れ落ちる
痛みと恐怖から立ち上がれない
(立て!立て!殺されるぞ!!)
紫吹の様子を見て男はナイフを振りおろそうとする
「ん?」
近付いてくる人の気配を察知してナイフを止める
「じ、潤!!」
近付いてきたのは湊だった
湊は紫吹の様子と男の様子を見てから紫吹に駆け寄る
「潤!!大丈夫か!?」
「湊…!逃げろ!その男はさっき教祖を刺した男だ!危ねえ!」
「こいつが!?」
湊は男を見上げる
そして男の目を見て恐怖する
(な、なんだ…。こいつ。すげえ怖え…)
湊は男の持ってるナイフに気づいて
男と紫吹の間に立ち紫吹を庇う
「俺の友達には指一本触れさせねえぞ!!」
怖い、足が震える
だが、紫吹を守らないとという気持ちで自分を奮い立たせていた
男はその様子を見て軽く笑う
「お前みたいなガキが俺からそいつを守れるとでも?」
事実、男と湊の力の差を比べるとこのやり取りの間に少なくとも10回は湊を殺せる自信が男にはあった
だが、男はナイフをポケットにしまう
それを見て湊は驚いた様子を見せた
「俺もプロだ。依頼された内容や自分に危害があるもの意外はむやみやたらに殺さない。……だが、お前らは俺のことを知ってしまった。悪いがアジトへ連れて行く」
その瞬間に今度は高速移動で湊の目の前から姿を消し
一瞬にして紫吹と湊を気絶させた