紫吹潤、涼川湊、早川由花
桜の花びらが絵画のように綺麗に舞う4月
桜並木がトンネルのように生えてる道に入学したばかりの高校一年生の紫吹 潤は眠い目を擦りながら歩いていた
「ふぁ〜〜……ねむ」
学校に入学してから1週間が経った
入学してから1.2日はワクワクしてテンション高めに登校していたが、1週間も経つとだんだんと落ち着いて来て眠い感覚も出て来ていた
すると眠そうにしてる紫吹の背中を誰が叩く
「いてぇ!!」
バン!といい音がなった
朝からいきなりくる衝撃に紫吹は悶絶した
「よ、潤!」
「よう…。朝からいてえよ…」
紫吹の背中を叩いてきたのは同じクラスで後ろの席になった涼川 湊だ
紫吹とはボールペンを貸した時に話し始めて仲良くなった
「お前眠そうにしてるなあ…。夜更かしでもしたか?」
「湊のせいだろ」
昨夜は紫吹は湊と遅くまで電話をしていた
もっとも電話をかけたのは紫吹からだったのだが、湊の彼女の惚気が止まらなくて遅くまで起きてしまっていた
「なんで夜遅くまで人の彼女の惚気を聞かないといけないんだよ」
「まあそう言うなって。お前も早く彼女作れ!」
入学したばかりでいきなり同じ学校の彼女を作る湊の方が異常だと紫吹は心の中で思う
「そういや…今日の放課後はヒマ?」
なにか思い出したように湊は紫吹に質問する
「ヒマだけど?」
紫吹の返答を聞いて湊は両手の手のひらを合わせてお願いをするように頭を下げた
「買い物付き合ってくんね?ヘッドホンが壊れちまって…。なんか奢るからさ!」
「ヒマだし…それくらいなら別にいいけど…。じゃあイーグル見たいから奢って」
イーグルとは今中高生の間で大人気のスパイ映画だ
当然、紫吹と湊も見たがっていた
紫吹の条件を聞いて湊が「え」という顔をする
「お前待て。高1の金欠男子に映画を奢れって…」
「ヘッドホン買えるお金あんだから金欠でもないだろ」
「ヘッドホンを買うお金をギリギリ用意したんだよ!ヘッドホンを買った後に2.3千円する映画館って鬼か!?」
高校生の料金でも2人分なら2千円はする
つい最近まで中学生だった2人にはまあまあ金銭的にキツイ額だ
「じゃあ1人で行ってこいよ」
紫吹は映画を見れなきゃ興味ないと湊を冷たくて引き離す
その様子を見た湊は慌てた
「わ、分かった!!そ、そのかわりポップコーンは…頼む!!」
湊の譲歩に紫吹はつい吹いた
頼むというのはポップコーンはお金出してくれという意味だ
「仕方ねえな。ポップコーンは出してやるよ」
紫吹の言葉を聞いた湊の表情が明るくなった
本当にお金がギリギリだったみたいだ
紫吹は軽い冗談で行かないと言ったので少し申し訳ない気持ちになったけど映画観れるのならいいやとその考えを終えた
午前の授業を終えてお昼休みに入った
「へー眠い眠い言ってた割にはちゃんと授業は起きてんのな?」
紫吹の授業態度に湊は感心していた
紫吹は休み時間に寝ては授業が始まると起きるということを繰り返していた
「そこは…ちゃんとスイッチを切り替えないとダメだろ。休み時間には眠そうにしてないのに授業中に寝るお前とは違うんだよ」
湊は紫吹と正反対で授業が始まると割とすぐ寝る
学校が始まったばかりですでに問題児認定されている
「ねえ潤。ノート見せてよ」
「お前も寝てたのかよ由花」
紫吹と湊が話してるところに割って入ってきたのは早川 由花
紫吹とは中学生の時からの仲だ
見た目は真面目なのに授業中はおもいっきり寝てる、なのに頭がいい
不公平だ
「だって〜昨日潤が電話してくれなかったから待ってたんだよ?」
「あ、悪い早川。お前の潤は昨日俺が取っちまってた」
「おい、俺は由花のじゃねえぞ」
紫吹と由花はカップルみたいな感じに見えるけどカップルではない
けどお互いを大切に思っていて紫吹は由花が由花は紫吹が傷つけられるのを極端に嫌う
その様子を見て湊がなんでこいつら付き合わないの?と不思議に思うくらいだ
「とにかく!今日は電話してよね!?寝不足でまた明日も授業中寝ちゃうから!」
「どんな理由だよ…」
由花の自由奔放さに紫吹は苦笑いを浮かべた
「あ、そうだ。今日放課後に映画見に行くんだけど早川もこない?」
「潤と涼川で行くの?そしたら私も行く」
潤と涼川と聞いたけど
実際には俺はオマケで潤と行くのが目的なんだろうなと湊は思っていた
「イーグルを見に行くんだけど由花はいいの……」
「うん、行くよ」
紫吹の言葉にかぶせるように食い気味に由花は返した
「それじゃあ3人で行くか」
そうして3人は授業が始まるまで寝た