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たっくんとゆかいななかまたち

たっくんとゆかいななかまたちシリーズ<15>現金輸送車を助けるぞ

作者: 杉浦達哉

挿絵(By みてみん)

たっくんは着陸脚を使ってタキシングで仕事をするのはあまり好きではなくてだらだらと動きます。

「こらっ、ラプターもっときびきび動きなさい」

AWACSさんがたっくんに注意をするのはもともとたっくんのタキシングの移動速度は遅くないのにめんどくさいとだらけているからです。

「はぁ~めんどくさい。俺達は飛べるのになんで車みたいに走らなきゃいけねぇんだ」

「しかたないでしょ」

とA10ちゃんがなだめました。

「1kmごとに500円、そこからは200mで100円もらえるならなぁ」

「タクシーじゃないんですから」

とF35。

「しかし金にならないことは1mmだってやりたくねぇしな」

「僕達お給料もらってるでしょ」

とB2君が言うと

「うちは全部父ちゃんが…というかケビンがボッシュートして、郵貯で管理してるよ。名義は俺だけど通帳見たことすらねぇよ。あーあ、金欲しい。どっかにもうけ話はねぇかな」

たっくんは不満そうでした。



翌朝の休日、たっくんがSNSを見ているとニュースで現金輸送車が強盗にあい、車と警備員を人質にとって逃走中と知りました。

「これだ!」

たっくんは仲間を呼び寄せてニュースのことを話しました。

「そんなの警察の仕事じゃないの僕達は関係ないよね、怖いし」

とB2君が言いました。

「で、たっくんはその現金輸送車を助けてあげるの?」

とA10ちゃんが聞くと

「違うよ、先輩は輸送車のお金を狙ってるんだ」

とF35が言いました。

たっくんは

「強盗をつぶして警備員の命を助けてやるんだ。人間は命の方が金より大事だっていつも言ってるしこれくらいいいだろ。いいよ、俺1人で行く。10億円くらい入ってるかなぁ」

と、たっくんは1人で離陸してしまいました。

「あっ、待って!私達も行こう!」

とA10ちゃんは言いました。

「えっ、僕達も泥棒するの?」

B2君は震えました。

「違うわよ。私達が止めてもたっくんは行くだろうしたっくんのせいで怪我人が出たら大変よ」

F35は

「その通りです」

と言いました。

その後をおっかなびっくりでB2君が一緒に来たのは言うまでもありません。

「おお、手伝ってくれんのか」

とたっくんは喜びました。

F35がたっくんに追い付いて

「どうやって中の人を助けるんですか」

「そりゃぱーっと行って機銃で蜂の巣にすりゃいいんだよ」

「それだと人質を殺しちゃいますよ」

「んーそっかー」

相変わらずいきあたりばったりでしか考えないたっくんです。

「いや、ちょっと待て」

たっくんは空から高速道路を見て何かを見つけたようです。

「おい、あれはカメラか?」

「あれはオービスです。スピード違反を取り締まる防犯カメラのようなものです」

「よし、F35、あれをハッキングできるな?」

「えっ」

「盗まれた輸送車がここを通ったなら写っているはずだ。そこから車内の様子が分かるだろ」

お金が絡めばたっくんは多少知恵が働きます。

「分かりました」

F35はスマホを取り出して操作を始めました。

「先輩、出てきました」

F35はたっくんとA10ちゃんとB2君にオービスに写った輸送車の動画をデータリンクで見せました。

助手席に目出し帽を被った犯人らしき人物が運転席の人質に銃を向けているのがはっきり分かります。

「9mm弾か。こんなおもちゃみたいなもん、かゆいだけだな」

「でも、人間に当たったら死んじゃいますよ」

「えっ、こないだやったゲームはザコ敵でもマグナム4発くらいかかったけどな」

たっくんはその辺の違いはいまいち理解していないようです。

「じゃあ何か、1発でも当たったら死ぬような人質を死なせないようにして強盗を殺すのか。ゲームでよくあるミッションだな」

「殺しちゃダメだよう」

とB2君

「えっ、そうなのか。そんなゲーム聞いたことねぇぞ」

今一現実とゲームの違いがさっぱり分からないたっくん。

A10ちゃんは

「ねぇ待って。輸送車には警備員が必ず 2人いるはずだし、犯人も2人って聞いてるわ」

全員は画像のコンテナの方を見ました。

「もしかしてすでに殺されてたりして…」

とB2君が怯えました。

「それは行ってみないと分からないですよ」

とF35。

「…」

さっきからたっくんはずっとだまりこくっていました。

「10億円…10億円」

なんとか10億円をぶんどるために知恵を絞っているのです。

「…!そうだ!

たっくんは何か思いついたようです。急いでデータリンクで手書きの図面を送りました。

「ええっ、それでうまくいくの?」

A10ちゃん。

「僕怖いよう」

とB2君。

「でも他に方法がありません。ただ、トレーラーに入るのはA10さんにお願いします。先輩は運転席の方を」

とF35。

「なんでだよ」

たっくんはけちをつけられて不満そうです。

「トレーラー開けたら人間無視でお金を運び出すでしょうから」

「チッそんなことしねーよ」

「そうね、たっくんはお金を見ると正常じゃなくなるから」

とA10ちゃんも納得しました。

「分かったよ。じゃ、これでいいな。んじゃ、行くぞ!」

とたっくんが指示を出すと4機は上空で散開しました。


その頃、数10km先の高速道路を現金輸送車が走っていました。

犯人を刺激できず覆面パトカーが何台も追走しています。

突然上空に現れた4機の軍用機に驚きましたが、指揮車に乗っていた年を取った警部が

「空軍のAI戦闘機だ。軍に要請したのか?」

と本部に連絡しましたが、そんな要請はしていないとのことです。

そして輸送車の真上でF35は背中のリフトファンのカバーを開き、着陸脚を出してゆっくりと降下してきました。F35はVTOLといって、背中にリフトファンがあり、空母にも乗れるようヘリコプターのように垂直離着陸ができるのです。

だから輸送車の中の人間に知られることなく真上から覆い被さるように輸送車の屋根に前着陸脚をのせました。後側着陸脚は道路に下ろし、トラックに引きずられる姿勢になりました。

F35はレーダーをすぐにトレーラーに当てました。

熱探知によると中に2人います。

「もう一人の人質も生きているようです」

「ああ、よかった」

B2君は安心しました。

その頃運転席はF35が乗っているぶん急に速度が遅くなったので犯人が人質に

「何をしているもっとスピードを出せ」

と言いましたが人質の警備員が

「分かりません。急に車が重くなったみたいなんです」

と震え声で言います。

「パンクでもしたか。どうしたもんかな」

と一瞬人質から目をそらして窓を見たとき、

バリバリバリと窓を割ってたっくんの水平尾翼のとがった先端が突っ込んできて強盗犯の手から銃を飛ばし、反対側のドアをぶち破りました。

するとドアのそばにいたB2君が

「こっちだよ!」

と言い、警備員は死物狂いでB2君の全翼に向かって飛び降りました。

泣き虫のB2君は危ない状況の人がいれば怖いのを忘れて動けるのです。

「クソッ」

犯人は何が起こったのか理解できないまま人質を追いかけることと銃を拾うことを同時にやろうともたついているといつの間にか銃はたっくんが水平尾翼で拾い上げていました。

金目のものを見つけて拾うたっくんのスピードを侮ってはいけません。

「これもーらいー!ハードオフに持ってけばいくらで売れるかな」

そして、

「よくやった」

とたっくんはB2に主翼を上げました。

「へ、へへ…」

その頃A10ちゃんはのろのろ動いたままの車のコンテナのドアを力任せにこじ開けました。

こんなアルミ板などA10ちゃんには障子を破るようなものです。

もちろんお金なんかほっといてA10ちゃんは機首を伸ばして人質の警備員の体を引っかけて引っ張り上げ、B2君に向かってそっと放り投げました。

「お願い!」

「はい!」

「うわあっ」

体が浮いたので一瞬警備員は血のけがひきましたがB2君が全翼でキャッチしました。

びっくりしたもう一人の強盗はA10ちゃんに拳銃を向けましたが9mmの口径の安物の拳銃で30mm口径のアヴェンジャーをそなえたA10ちゃんとどう勝負をしようというのでしょう。

B2君が警備員を保護したこと、 A10ちゃんが犯人を確保したことを確認してF35は運転席に主翼を突っ込んで操作して車を停止させました。

B2君が2人の警備員の手当てをしていると覆面パトカーや普通のパトカーがたくさん集まってきました。

「驚いたな。君たちは普段からそんな訓練をしているのかい」

パトカーから降りてきた警部さんが質問すると

F35は

「とくには…先輩が行こうって言ったので」

と困った顔で言いました。

「そう、たっくんがやろうって」

と犯人2人をロープで縛りながらA10ちゃんが言いました。

「僕が怖いって言ったのにたっくんが…」

警備員を手当てしながらB2君が言いました。

「ああ、さっきのピンクの帽子のF22か。その君たちのリーダーは何をしてるんだ?」

もちろんF35も A10ちゃんもB2君もトラックのコンテナの方を向きました。

たっくんはこそこそ現金を運び出す途中でした。

「先輩!だめですよ!」

F35が引っ張りました

「嫌だこれは俺のだー」

たっくんは万札の入ったケースを離しません。

「ちょっといい加減にしなさいよ」

怒ったA10ちゃんが加勢しましたが空軍で最も怪力のA10ちゃんですらお金に執着したたっくんから箱を引き離せません。力任せに無理に引っ張ればたっくんの主翼を怪我させます。

すると警部さんが

「なぁ、坊や、」

「俺はたっくんだよ」

「そうか、たっくん、そのお金は銀行のお金じゃなくて銀行を利用する人みんなの給料や年金だ」

と説明しました。

「俺給料なんかしらねーもん」

「でもたっくん、いつも中佐に給料でおもちゃたくさん買ってもらってるでしょ」

とB2君は言いました。

「うん、こないだの休みに父ちゃんとケビンと一緒に遊園地行ってトイザらスでおもちゃ買ってもらってステーキガストで食べた」

すると警部は

「その君の遊園地やおもちゃやレストランのお金は君のお父さんの給料から出てるはずだよ。だから給料や年金がないと町のお父さんお母さんおじいちゃんおばあちゃんが食べ物も買えないし遊びにも行けないし子供におもちゃを買ってあげられなくなるよ。もし君がそうなったらどうする?」

説明しました。

たっくんは

「それはやだな」

とお金の箱から離れました。

「君は分かってくれると思ったよ」

と警部は笑いました。

たっくんは相手の立場に立って考えることは苦手ですが、自分がされて嫌だなと思うことはしてはいけないと言うことは常日頃中佐やケビンに教えられていたからです。

そうしていると空軍の業務車のプリウスのSUVが到着して助手席からジェイムスン中佐と運転席からケビンが降りました。

「また勝手に飛び出しやがって」

と中佐はのんびりとした口調です。

「ご迷惑お掛けしてすみません」

ケビンは警部に頭を下げました。

警部はジェイムスン中佐の空軍のグレーの迷彩服と中佐の紀章とF22の飛行隊のベルクロ、ケビンの青い整備服を見て

「あなたがF22の『父ちゃん』の中佐とケビンさんですか」

と聞くとジェイムスン中佐は

「へっ、えぇ、まぁ、恐縮です」

と言うと頭をかきました。

「たっくんは?お金をネコババしてない?」

とケビンはたっくんを追いかけました。

「そうだ、あいつは金ほしさにどうせ飛んで来たんだろう」

と、中佐は身も蓋もないことを言いました。

「大丈夫ですよ。話せばわかってくれました。中佐は息子さんによい教育をされているようですな」

と中佐に警部は言いました。

それでもケビンは信用なくてたっくんの方へ行きます。

案の定、たっくんはせめて金目のものをと運転席のカーナビを取り外そうとがんばっていました。

「ちょっと一つ前の型式だがハードオフで売れるだろ」

それを見て中佐と警部は思わず見合って苦笑しましたケビンがたっくんを引っ張り出して一度コックピットとお腹と左右のウエポンベイを開けました。案の定、コックピットから拳銃2つ予備の弾がいくつかと左のウエポンベイからトラックのヘッドライト、右のウエポンベイから犯人の最新のiPhoneが2台、犯人の財布が出てきました。財布の中身は1000円札と小銭ばかりですがそれぞれルブタンとルイヴィトンだったのでこれもハードオフで売るつもりでした。


一瞬目を離したすきにたっくんは金目のものだけを選別してぶんどることくらいやってのけるとケビンはしっていました。

ただ、カーナビだけは工具がなければ綺麗に外せないので手間取っていたのでした。

「へぇ、これが中佐の英才教育ね」

とケビンは皮肉を言いました。

「まぁ、あんまり叱らないでやってくださいな、彼が仲間をつれて救出にこなければ最悪の事態になっていたかもしれません」

と警部が言うと、

「はは、常日頃から俺たち軍人は国民を守ることに尽力するように教育しておりますので」

と中佐はかっこつけたことを言いました。


そのあいだに警官が犯人を連行し、少し遅れて救急車が到着し、被害者の警備員を連れていきました。



数日後、強盗からお金と警備員を守ったたっくん達にお礼がしたいと言われたのでたっくん達いつもの 4機とねんのため、ジェイムスン中佐とケビンも銀行に行きました。

銀行の支店長は、

「この度は本当にありがとうございました。なんとお礼言っていいか」

と言うと、たっくんは

「そうだろな。でも口でお礼だけならなんとでも言えるぜ」

「こら、たっくん」

ケビンが注意しました。

「そこでつまらないものですがお礼の品を用意させていただきました」

と、支店長は行員に大きな箱を用意させました。

「分かってるじゃねーの」

たっくんは箱を腹部ウエポンベイに投げ入れました。

基地に戻ってきて早速もらった箱を開けると中から出てきたのはサランラップや箱ティッシュ、サラダ油、台所洗剤、トイレットペーパーといった銀行のロゴがついた粗品でした。

「これじゃあほんとに粗品文字通りつまらないものじゃねぇーか!」

たっくんは叫んでがっかりしました。金目のものでもなければたっくんに関係ないものだからです。

ところがこれらの品をとても喜んだのはケビンです。

「わー、どれもこれも助かるなぁ。いくらあっても足りないし困らないよ」

がっくり肩を落とすたっくんにケビンがサラダ油を手に取って

「そうだ、これで美味しいからあげを作ってあげるから。からあげパーティにしよう。みんなも食べてね」

と言いました。

「先輩、よかったですね、からあげパーティですよ」

とF35が声をかけるがたっくんはすっかりうなだれています。

「それじゃあ準備だ」

とキッチンに行くケビンのあとを

「僕手伝うよ」

「私も」

とB2君とA10ちゃんがついていきました。

「さーてと、からあげにはビールか、レモンチューハイだな」

と中佐がニコニコで冷蔵庫を開けます。

「先輩、僕らも行きましょう」

「今俺に話しかけるな」

みんなが楽しそうにしているのにたっくんだけが落ち込んでいるところをケビンが

「あれー?げんこつからあげいらないのー?」

と声をかけるとたっくんは

「いるよ、食うよ!クソッ」

とやけくそのように言いました。

<終わり>

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