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第二王女は世界に愛される

作者: ちっくさん

あ、ダメだこれ。


アサシンのリュディスが一撃で爆散した。

聖女のカエデもその余波で瀕死だ。

聖騎士のユウタも盾を構えていた左肩から先が消失している。

賢者のコーデリアは目の前の光景により恐慌の状態異常にかかってる。


そして、勇者のタイチは右腕を失いながらも残った左手で聖剣を構え、フラフラになりながらも魔王達と相対していた。



「少し、雑談をしないか?」

右手で頬杖をつき玉座に座りながら、羽虫を追い払うごとく軽く左手を払いのけたような体勢のまま魔王がぽつりと口を開いた。

真っ黒な禍々しいローブを羽織り、こめかみの辺りに生えた禍々しい角を除けば、見た目はタイチやカエデ、ユウタとあまり変わらない黒髪黒眼の少年に見える。

「聖女と聖騎士、そして勇者の3人がフォレスティー王国が喚び出した召喚者なのだろう?」


魔王は、隠れている「わたし」に向かって聞いてきた。

喉がヒュッとしてしまう。

身体の震えが止まらない。


--あぁ、わたしも恐慌状態になったのか。


刹那、わたしをつつむ柔らかく暖かな光。


『キュアオール』


玉座の斜め前に佇む黒いローブの小さな影から飛んできた魔法は、状態異常回復魔法だった。

「なぜ・・・魔族が光魔法を・・・?」


「私達2人は魔族じゃないわ、人間よ」

小さな影はローブを脱ぎながらこちらを見た。


「せ・・・セーラー服・・・?」

勇者タイチが呆然としながら彼女を見ていた。

黒っぽい、船乗りが着るような服ではあるが、短めのひらりとしたスカートに黒いソックスを履いている黒髪黒眼の少女がそこにいた。


魔王が口を開く。

「フォレスティー王国、その直系王族の女子は一生のうちに一度だけ女神の加護のもとに異なる世界から勇者を喚び出せるという伝承がある・・・

もう一度そなたに問うが、そちらの聖女と聖騎士と勇者がそうであろう?そして賢者はこの世界の人間か・・・

答えよ、当代の『護り喚びの巫女』よ」


「・・・えぇ、そうよ」

それこそが我が国の、わたしの存在意義。

そしてわたしはまだ召喚をしていない。

3人の召喚は、第一王女であるセレネディアお姉様が100人の宮廷魔導師とともに行った。

わたしはいわばこの戦いの保険だ。

歴代最高と謳われる『護り喚びの巫女』であるわたしならば、一人でも異世界からの召喚の儀を行使できる。


この3人の勇者が魔王に敵わなければ、その場で新たな勇者を召喚しなければならない。

歴代『護り喚びの巫女』の中でも飛び抜けた力を持ったわたしが召喚をすれば、過去最高の勇者を喚び出すことができるであろう。

・・・わたしの命と引き換えに。

それは、魔王を確実に滅ぼすため。

魔王の撃破はこの世界の悲願であるから・・・

この命は、国と、この世界と、女神様に捧げている。



「自分達だけが召喚の儀を行使できると、いつから勘違いしていた?」


「まさかっ・・・!?」


「我ら2人も『召喚者』----邪神のな。」

「たぶんそっちの3人と同じで、ニホンから召喚されたコウコウセイ・・・あぁ、彼の角は飾りよ、引っ張ればとれるわ・・・よっと」

ぽきゅんっと音がして、右の角が取れた。

「ちょ、ちょっと!ロールプレイが崩れるじゃん、いきなり取らないでよ!」

「なんか、クフフとか笑うのキモいし、我が闇に堕ちろとかクネクネしたポーズで決め台詞言ったり、ただのダークボールの魔法に漆黒の翼とか言ってるのが寒いのよ!翼じゃなくて球体じゃない!丸よ?!丸いのよ?!なんなの?!こじらせ厨二!!育ってきた環境もいっしょの双子なのになんでアンタはそんな痛いのよ?!

しかも、さも昔から魔王でしたみたいな雰囲気醸し出してるけど、私達がここに来たのは昨日よ?!それまで魔界の冒険者としてせっせと依頼こなしながら送還のエネルギー貯めてたんじゃない!本来の魔王のオジ様は、邪神様からの福利厚生の一環でサキュバスの奥様とお子さん達と、魔王軍幹部の皆さんと一緒に長期休暇で温泉旅行に行ってるだけじゃない!私達は代理よ!アンタは魔王代理!私も魔将軍代理!」

「うっ・・・」

「もーいいわ、ほら、この勇者達との戦いで発生するエネルギーを使って、邪神様の転移なんちゃらかんちゃらってゆーのにいっぱいエネルギーが貯まったら、ようやく送還の魔法使えるって言ってたからサクッと倒しちゃってよ!

てゆーか、勇者達は殺しちゃダメだよって言われたから死なないくらいにしなさいよ!私は回復と補助しか魔法使えないんだからアンタがやんないと帰れないのよ?!長引くとめんどくさいからソッコーで両手両足を消し飛ばしちゃって!そしたら取り敢えず回復魔法で死なないように傷口塞ぐから!

しかも邪神様もなんなのよ?人間達が女神の加護でいつもやってるから、試しにやったら召喚できちゃった、てへ。って・・・送還する分の魔力足りないから集めてきてーって、巻き込まれて呼び出されたこっちの身にもなってよって話よ!マジ!」

「わかったよー・・・

クフフフフ・・・我が深淵に跪き漆黒の闇の糧となれ・・・」

「はぁ、アンタまだそれやんの・・・?」




恐ろしいまでの魔力が魔王の右手に集中していく・・・

飾り角は左側にしか付いてない。

なんかバランス悪くてちょっと笑える見た目になってるのに、一切笑う事が出来ない。

そして、邪神からは勇者達を殺すなと言われていたらしい。


・・・リュディスは勇者じゃないからいいんですかね?

初っ端に木っ端微塵でしたけど。

もしや視界に入ってなかった?!

元々存在感薄かったし、更に隠密のスキルMAXに振ってたからなぁ・・・

認識されてない可能性が・・・



というか、次元が違う・・・

恐慌から立ち直った賢者が極大魔法を行使しても、セーラー服の彼女が一言何かを呟くだけで消え去る。

聖騎士が、勇者が、聖女の魔法で欠損を回復し補助魔法の重ねがけで強化されても、セーラー服の彼女が創り出したと思われる見えない壁から先に攻撃が届かない・・・

私達がいくら束になっても敵わない・・・



お父様、お母様、お姉様、5歳になったばかりの弟エディ・・・

そして、隣国のマルス王子様・・・

最期に、一目でいいから会いたかった・・・



--わたしは、わたしの命を、解放する。



光の渦がわたしを中心にして広がってゆく。

魔力のラインが足元に広がり、巨大な魔方陣が構築されてゆく。

荒れ狂う膨大な魔力に慌てた魔王がわたしに向けて極大の爆裂魔法を放つが、魔方陣に掻き消されてわたしまで届かない。


召喚の儀は発動した。

もう誰にも邪魔はできない。


足元の魔方陣からは、光とともに小さな魔方陣が天へと立ち昇ってゆく。

キラキラと、宝石が舞うかのように、精霊達が踊るかのように、うねりながらやがて一つに纏まってゆき、頂点で球体を形づくる。

その中に何かが現れ、太陽の如き球体はゆっくりと回転しながら、わたしの前に降りてくる。

わたしの命が、その器から急速に零れ落ちてゆくのがわかる。

そして零れ落ちるわたしの命と比例するように球体は圧縮されてゆき、目の前の光が暖かく、密度を高め力強く明滅してゆく。

そしてそれは少しずつ、人の形を象ってゆく。


・・・あぁ、大丈夫。

この者なら、この存在なら、魔王を、邪神、を、滅す、る、こ、とが、でき、る・・・


わたしの命が消える直前に、首元で何かが弾ける音がした。

マルス様に頂いた首飾りが粉々になりながら足元へ落ちてゆく。


あぁ、涙が出てきた。

マルス様に会いたいなぁ。

あの湖に、また2人で行きたかったなぁ。

乗馬のできないわたしは、マルス様に後ろから優しく抱かれる様にして馬に乗り森を駆ける。

まるで風になったかのように、木々の間をすり抜けてゆく。

そして突然開けた視界の正面には、物語の1ページのような美しい湖が広がっていた。

湖のほとりの東屋で交わした約束。

守れなくてごめんなさい。

マルス様は、わたしを忘れてどうか幸せに。

わたしの分まで幸せになって下さい。


わたしがいなくなれば、きっとマーガレット様と結婚をするのでしょうね。

公爵家のマーガレット様は小さな頃からマルス様の事が好きで、わたしとの婚約が発表されても諦めずにアタックしてきてたし、わたしなんかよりも何倍も綺麗で、可愛くて、公爵家の一人娘なのにお料理も上手で、性格もよくて、しかもスタイルも抜群だし。

あのくびれにあのバストはズルい。

なんなん、あれ?

チートですか?

召喚者が良く言うチートですか?

前にマルス様が合同演習としてウチの騎士団の面々と模擬戦を行ったときにも公爵様と一緒に観にいらして、その花の様な微笑み(とバスト)にウチの近衛騎士団の独身者はみんなメロメロになってるし!

わたしのことを好きって言ってくれるのは、城下の八百屋のシドお爺さん(67)とか、庭師のヒューズお爺さん(73)とかよ!

しかも、みんな孫を見るかのような目しかしてないし!

ちゃんと成人してます!

花も恥じらう17歳よ!

勇者も聖騎士も聖女もみんな口を揃えて「伝説の合法だ、ショウガクセイにしか見えない」って言うし!

ショウガクセイがなにかはわからないけど、わたしはちょっとだけ背が低くて、ちょっとだけお胸が小さいだけ!

城下の宿屋の看板娘のシャーロットちゃん(9)と並んでも「可愛い姉妹みたいね」と言われるわたしだけど(わたしが妹らしい。解せぬ。)、ちゃんとフォレスティー王国を代表する淑女よ!

他国の王子様達や貴族達からも求婚されるんだから!


いかん、嫉妬がムクムクと顔を出してきた。


あっ、女神様!違います!他者を憎んだりとかしてないです!信仰は捨ててません!ちょーっと羨ましいなーなんて思ったりしてるだけなんです!

それにマルス様はわたしのことを世界一愛してるって言ってくれたし。

あ、ヤバい、ニマニマが止まらない。

えへへ。




・・・あれ?

意識あるよねわたし。

まだ死んでない??


ゆっくりと目を開けてみます。




なんか、時が止まってる、みたい、です。


いや、止まってはいない。


キョロキョロしたり、みんな微妙に動いてる。


うん。


なんか白鳥がいる。


全身白い。


下半身から白鳥の首が出てる。


とてもつぶらな瞳の美しい白鳥だわ。


視線を上にあげると、本来の顔には、なんだ、黒縁の眼鏡?


でっかい付け鼻が付いた眼鏡してる。


頭は・・・ハゲ?


横に流すように地肌が見える。


待って!耳の周りから髪の毛出てる!


もしかして帽子なの?!あれ?!


首元には三角が2つくっついたキラキラしたでっかい赤い何かが付いてる。


うん、よくわからない生き物が目の前に立ってます。



「ぷっ・・・」

「仮装大賞・・・」


魔王とセーラー服の彼女の呟きとともに時が動き出す。


「ハゲヅラ付け鼻黒縁眼鏡に蝶ネクタイのホワイトスワンて・・・」

「なんかの罰ゲームかよあれ・・・」

「うわぁ・・・タイツからスネ毛が飛び出してる、すごく気持ち悪いです・・・」


勇者が、聖騎士が、聖女がディスる。



「てか、よくわからないけど勇者達を消すのに邪魔なんだよ!目障りだ!跡形も無く消し飛べ!出落ち野郎www」

魔王が爆笑しながらこの世の終わりかと思える程の威力の魔力球をぶつけるが彼の纏う神気のようなものに阻まれて彼には届かない。

「は?」

「うそ・・・」



そんな中、ホワイトスワンが口を開いた。


「お前ら・・・シュウジとマリか・・・?」


「「?!!!」」


魔王とセーラー服の彼女がビクリとし、直後に硬直する。


「その声・・・まさか・・・シュウイチ兄さん?!」

「え、イチお兄ちゃんなの?!なんでそんな変態さんみたいなカッコしてるの?!なんで?!」


「いや、会社の忘年会の途中なんだよ!俺、ジャンケンに負けて今年の新入社員代表でクソ上司指示のもとこのカッコで司会やらされてたんだよ!

そしたらなんか光に包まれ始めて、演出に金かけてんなーと思ってたんだけど気がついたら真っ白な部屋にいて、そこにいた女神様って人からこの世界を助けてくれって言われるし、じゃあ取り敢えず服装大人しいのに変えてって言っても、なんか神器?になってるからそれ着てて下さいとか言われるし・・・知り合いとか居ないから別に見られても平気ですよねーとか言われて、魔王サクっと倒して下さいってそのままここに喚び出されて・・・

てかシュウジもマリも、勇者消すとか何言ってんの?そこにいる3人の事だよね?消すとかいって殺人だよねそれ?3人とも日本人で、高校生くらいだよねたぶん。俺も消そうとしてたし、お前ら2人とも異世界来たからヒャッハーしてんの?なあ?どうなの?

2人が行方不明になってから、親父もお袋も魂が抜けたみたいになっちゃって、ずっと家に引きこもって泣き続けてるから俺が頑張って家計支えながら、休みの日は駅で情報提供を呼びかけるビラ配ったり頑張ってきたのに・・・

2人は楽しく異世界転移で、更に魔王様って?上り詰めちゃった系?

あー、お兄ちゃん悲しいなー、2人が悪い子になっちゃったみたいで悲しいなー・・・」



「あ、詰んだ・・・

シュウイチ兄さんがキレたらどうにもならない、勝てない。

鑑定でチラッと見たけどステータス差もヤバい・・・

死んだね俺ら・・・」

「どどど、ど、どうすんのよ?!もともと、怒ったイチお兄ちゃんになんてどんなチート能力貰っても勝てるはずないじゃん!

おお、お兄ちゃん、違うの、消さないの!

シュウジがイキオイで消し飛べとか言っちゃっただけなの!

い、いや、違わない、手足は消し飛ばすの!でも傷口は治して死なないようにするの!

邪神様からも殺しちゃダメって言われてるから8割なの!8割殺しなの!2割は生きてるの!だから大丈夫なの!セーフよ!ギリギリセーフよ!死なない限りはかすり傷なのよ!

それに、私達は魔王じゃなくて代理なの!普段は魔界のしがない冒険者なの!上り詰めてヒャッハーとかじゃなくて普段は薬草採取とか近所のウェアウルフのギュスタフおばあちゃんの肩揉み兼話し相手とかゴーストさん達のお家掃除で墓地の清掃とか真っ当な仕事してるの!

今回はたまたま邪神様からの依頼で魔王軍の慰安旅行のお留守番兼勇者対応のクエストであって普段はとっても平和な生活をしてるの!帰るためにコツコツと頑張ってるの!

いゃぁ、お、お兄ちゃん、コブシ鳴らしながら無言で近付いてこないで・・・

・・・て、てて、転移よ!シュウジ逃げるわよ!私に掴まって!邪神様のとこ行って、ほとぼり冷めるまで匿ってもら・・・んきゃん!」

「んがっ!」



あー、ホワイトスワンさんがいつのまにか魔王とセーラー服ちゃんの後ろにいて、ゲンコツ落としてます。

2人とも涙目で土下座始めました。


え?

なにそれ?

2人とも平謝りで戦おうとすらしてない。

これ、人族と魔族の最終決戦じゃないの?

ていうか、敵も味方もここにいる関係者みんな人族なんだけど・・・

なにこれ?

ホワイトスワンに説教されてる魔王達。

スゴいシュールな絵面。

白黒の対比が眩しい。

勇者達もぽかーんとしてるし。

わたしも死んでないし。

賢者に至っては完全に空気になって壁際で膝抱えてるし。





その後、スワンさんは半泣き通り越して全泣きしてる魔王とセーラー服ちゃんの首根っこ掴んで引きずりながら邪神の元へ。

わたし達も一緒に行きました。



邪神さん、困り顔のイケメンさんでした。

話を聞いたら、女神様と夫婦なんですと。

邪神じゃなくて創世神なんだって!!

数千年前に女神様とちょっと喧嘩して、そしたら不貞腐れた女神様が家出して・・・

まぁ、何百年(神様の中では数日程度の感覚)かしたら帰って来るだろうなと思ってたみたいですが気づいたら人族が魔族と敵対するようになってて、召喚された勇者とかがちょくちょく魔族領に攻め込んでくるわ邪神とかって呼ばれてるわで困ってたみたいです。



人魔大戦って、ただの夫婦喧嘩ですか?

ちょっと、女神様、出てきて下さい!

あ、いた、柱の影でモジモジしてる。


え?

構って欲しかったの?

うん?創世神様が世界の維持のためにいつも忙しくてあまり構ってもらえなくて寂しかったの?

なにそれ、乙女モード全開ですか?

へぇ、リアルに『仕事と私、どっちが大事なのよ?』

と言っちゃったと。

そこからの『実家に帰らせて頂きます』コンボ発動ねぇ。


女神様のウルウル上目遣い入りましたー。

創世神様の胸元に駆け込んでいきましたー。

グーを作って胸元ポカポカ始まりましたー。

創世神様、ちょっと困り顔でヨシヨシ入りましたー。

おでこに軽くチュッてしてます。

あ、女神様真っ赤で蕩けてます。

ラブラブかよ!

バカップルじゃねーか!

砂糖吐くわ!

・・・ちっ!



はぁ、もうなんか疲れました。


あ、はい、召喚された勇者とか魔王とかは責任持って送り返しますと。

えぇ、お願いします。



は?

わたしが神結びの巫女になると?

人族と魔族の橋渡しをしろと?

嫌です。

もう仕事したくありません。

帰って、マルス様と結婚して、ゆったり暮らすんです。

よくわからないけど、召喚の儀をしたのに死ななかったから、マルス様の元で可愛い奥さんするんです。

そんなめんどくさいことしたくないです。

マーガレット様に負けないように、マルス様と愛を育むんです!

負けられない戦いがそこにあるんです!


ん?

マルス様にもらった首飾りが、身代わりの首飾りだったんですか?

一回死んでも生き返る?

なにそれどんな神話級魔道具ですか?

あ、創世神様がマルス様に渡したと。

まんま神具じゃないですかそれ。

心より愛する者に渡せと。

・・・いゃん。

照れるじゃないですかー。

あー、早くマルス様に会いたいです。


えぇ、ゴテゴテせず、華奢なわたしに合うように落ち着きつつもキラリと胸元で存在感を醸し出すような素晴らしいデザインになるようにこだわったと。

あ?華奢とかオブラートに包んでんじゃねーよ!胸元に存在感がない?!ちっぱいなめんな?!ディスってんのか?

あぁん?!


・・・あ、他意はないと。

むしろ好きだと。

えっ??

なんですかそれ?

女神様にものすごく睨まれてるんですけど、わたしなんかのご機嫌取りとかはいいですから奥さんを大切にして下さいよ。

世界平和の為ですから。

すみません、ちょっと調子乗りました。


うん、神具に見えないように、かつ、一国の王子から婚約者への贈答品として相応しく見えるような品格のデザインに苦労したと。

それはそれはありがとうございます。

夜会や舞踏会でここぞとばかりに見せびらかしてたので、贈り物には今後このデザインが流行ると思いますよ?きっと。

さっすが創世神様!デザインも一流って、やるぅ〜!

てか、壊れちゃったんで直して返してくれませんか?

ダメ?バランスブレーカーの神具はそんなポンポン渡せない?

けちー!

せっかく褒めたのに!!


あと、神結びの巫女にはなりません。

それとこれとは別です。

わたしには負けられない戦いが待ってるんです。

そんなヒマはありません。

え?マーガレット様は大丈夫だから焦らなくていいって?

なんで?

マルス様の守備範囲外??

うん?

彼は紳士だからって?

ボンキュッボンには興味がない?

わたしだけに夢中だから他にはいかないし、神結びの巫女やってても大丈夫?

・・・んんん?!


それに人族も魔族も上層部はほとんどが紳士だから、わたしが適任と?

みんなわたしにメロメロになると?

この世界の宝だと?

モブキャラは違うけどメインどころはみんな紳士?

えっ・・・

そういえば女神様もちみっこいですけど・・・

アンタもか?!アンタも紳士か?!

じゃあ頼んだよーって、神官とかみんなに神託しとくねーって、軽っ!


ちょっと!わたし達の強制転移始めないで下さい!

あ、スワンさん、ありがとうございました。

なんかこちらの世界のくだらない争いに巻き込んですみません。

どうかそちらの世界で穏やかにお過ごしください。

あ、魔王城にコーデリア忘れてきた。

1人王都まで帰ってこれるかなぁ?

どうにか頑張れコーデリア!


てか、創世神様!まだ話は終わってません!

いや、そんないい笑顔でこっち見んな!

女神様をお姫様抱っこしてウィンクすんな!

女神様も蕩けた顔しながらこっち見んな!

首筋にチュッチュしてんじゃねぇ!

オイィ!そこの眷属その1、いい笑顔で寝室の扉開けんな!

そんで、こっち見てハァハァすんな!

オメーも紳士か!


あーくそ、転移始まった。

光が纏わり付いてくる。

てか眷属その2、ここ来てからずっと紙と筆取り出してスケッチしてんな!

自由か!

そんでお前もハァハァすんな!


え?

これを元に地上の絵師達に神託おろして各地の神殿に奉納させる?

神結びの巫女誕生の瞬間?

はぁぁぁあ?!




「じゃあね、『神結びの巫女』ロリータリア・フォレスティー。

天寿を全うしたら君もこの世界の一柱となり、僕の妻の1人となる事が決まってるからね。」



視界の端で寝室の扉が閉まる。


眷属その1とその2、熱っぽい目でこっち見んな!

ハァハァすんな!

その3とその4も端っこのほうから覗いてんじゃねぇ!

お前らもハァハァすんな!





ロ リ コ ン ば か り か よ こ の 世 界

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