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次の日から、文化祭の実行委員会は当然行われなくなり、僕は滝川先輩と会う機会をほとんど無くしてしまった。ただ、移動教室などで休み時間中に校内を歩いている時、偶然滝川先輩とすれ違って、挨拶だけ交わす、といった関係が続いた。僕は確かに、文化祭の後のあの帰り道の途中、滝川先輩の心に近づいたような気がしたのだが、それはただその時限りで、それ以上の関係になることは無かった。やがて三月が来て滝川先輩は卒業し、僕は彼女に会う手段を完全に失った。こうして僕の初恋は何も起こることなく終わった。
そして、それから十数年後――五年前の秋のことだ。君も知っているように、僕はその前の年に転職して都内のIT企業に勤めていた。それで、上司の命令でフェイスブックを始めた(IT企業らしく、その会社では社員全員フェイスブックを利用するよう命じられていたのだ)。そうしてその秋ごろ、フェイスブックをやり始めた人なら誰でも一度はしたことがあるであろう、「昔の恋人・あるいは昔好きだった人検索」をし、「滝川美琴」を探してみた。それで、彼女をフェイスブック上で見つけたのだ。
僕はすぐ友達申請をした。申請は許可された。それから僕は、だめでもともとという気持ちで彼女にメッセージを送り、挨拶をした後、一度会えないかと言ってみた。すると、彼女はこころよく了承してくれたのである。
フェイスブックで知るかぎり、彼女はどうやら栃木県の小山市でキャバクラ嬢をしているらしかった。キャバ嬢。僕は微妙にがっかりした。初恋から十数年の時を経て散々美化された思い出の中の彼女が、少し汚されたような気分になった。しかしとにかく、あの滝川先輩に会えるのだ。僕はそれを喜ばなければならない。そもそも職業に貴賎などないではないか。がっかりする方が、間違っているのだ。
そんなことを様々思いながら、僕は滝川先輩が休みだという祝日に会う日を設定した。そしてその祝日の昼下がり、当時住んでいた赤羽から、湘南新宿ラインに揺られて小山へ向かった。




